今季、開幕からの4試合すべてをベスト10フィニッシュ。うち3試合がベスト5入りと、最高のスタートを切ったパトリック・カントレー。そんな彼の最大の魅力は、アドレスからフォローまで、前傾姿勢が変わらないところにあります。
後方からの写真を見てください。背景の山と、頭の位置を比較すると、アドレスからフォローまで、頭の高さがまったく変わっていないことがわかります。インパクトゾーンでは胸が地面に向き、フォローまで前傾姿勢が保たれている。この軸の安定感はPGAでもトップクラスと言えるでしょう。
カントレーのスウィングは、決して腰の回転量(ヒップターン)も多くないし、上下の捻転差も大きくありません。それでも大きな飛距離を出せるのは、前傾姿勢のキープによって、インパクトの再現性が高まり、高いミート率が実現された結果と言えます。
捻転差を最大に使うと飛距離が出る代わりに再現性が多少犠牲になります。それを回避し、再現性を高めることで、高いレベルで飛距離と方向性のバランスを実現しているのです。
とはいえ、前傾姿勢というは、保とうとすれば保てるというものではありません。前傾姿勢は、スウィングプレーン、体の回転方向、体重移動などが適切であった結果として保たれるもの。それらが不安定な状態では、いくら意識しても前傾姿勢は保てないのです。
よく、簡単に「前傾姿勢を保ちなさい」と言う人がいるのですが、スウィングプレーンや体の使い方が悪い人が無理に前傾姿勢を保とうとすれば、上手く振れなくなってしまうので注意してください。
近年、ツアープロの間では、フットワークや重心の上下動をアグレッシブに使って打つ選手(いわゆる地面反力を使う選手)が増えました。しかし、筋力、柔軟性、バランスが足りないアマチュアゴルファーがこれをマネると、ショットの正確性が大きく失われる危険があります。
そういう意味で言うと、体の捻転差もそれほど多くなく、体をアグレッシブに使いすぎないカントレーのスウィングは、一般の成人男性でも参考にしやすいものだと言えるでしょう。
両わきが締まったまま、両腕が体の正面にある状態を保ち、バックスウィングでは右胸が右を向きながら右ひじがたたまれていく。ダウンからフォローにかけては、左胸が左を向きながら左ひじがたたまれていく。その結果、バックスウィングではクラブが右肩に上がり、フォローでは左肩に抜けていく。
そういうカントレーのシンプルな動きは、多くの人にマネてもらいたいと思うのです。
写真/姉崎正