すべてのゴルファーあこがれの場所「オーガスタ ナショナル ゴルフクラブ」。「マスターズ」が開催されるこの美しいコースの魅力を写真家・宮本卓が語る
ベン・ホーガンとマスターズ
The Hogan Bridge ホーガンブリッジ
オーガスタナショナルには、3つの有名な橋が架かっている。12番の「ホーガンブリッジ」、13番の「ネルソンブリッジ」、15番の「サラゼンブリッジ」。どれもが劇的な勝利を収めたプレーヤーを称えて造られたもの。
なかでも「ホーガンブリッジ」はひときわ有名で、マスターズの象徴的な橋として知られている。1953年大会で、ベン・ホーガンが当時の最少スコアで優勝したことを称え、58年に造られた。
世界中のゴルフ場で、これほどコピーされた橋はほかにはないのではないか。それほど印象深く記憶に刻まれている。
私が初めてこの橋を渡ることになったのは91年、中嶋常幸選手の練習ラウンドにお供したときだった。12番のティーショットを打ち終え、歩き始めた中嶋選手は何事もなく橋を渡って行ったのだが、私は手前でつい立ち止まってしまった。
試合中はカメラマンもギャラリーと一緒にロープの外から撮影するのがマスターズ。いつも遠くから選手がこの橋を渡るシーンを眺めていた。そのシーンはとても崇高で、特別なものと感じていた。
突然、訪れたホーガンブリッジを渡るというチャンス。勇気のいる一歩だった。
きっと幾多のプレーヤーもそうだったに違いない。いつかマスターズに出場したい。その夢が叶い、この橋を渡る瞬間、今までのゴルフ人生を振り返るのだろうか。そして最終日、優勝争いのなかで渡るときは……。
たかが橋、されど橋。なんと長く感じる瞬間なんだろう。