すべてのゴルファーあこがれの場所「オーガスタ ナショナル ゴルフクラブ」。「マスターズ」が開催されるこの美しいコースの魅力を写真家・宮本卓が語る
記憶に残る名シーン
Sergio Garcia セルヒオ・ガルシア
マスターズのコミッショナーはいつも「サンデー・レイト・アフタヌーンで会いましょう」と言って選手を迎える。そう、まさしく日曜日のバックナインに入ってからがメーン・イベント。
2017年、私は最終組について10番、11番と進んでいった。ガルシアは連続ボギーとし、ローズと2打差。
その時クーチャーが16番でホールインワンをし、シュワーツェルもピーターズも伸ばしてきた。一瞬体が固まった。どういう動きをしようか。
13番に行くか迷ったが、15番グリーン右側のスタンドに登った。14番でガルシアがバーディで1打差とした。ここで何かが起こりそうな予感がした。
池越えのパー5。ビッシリと埋まった観客席全員が固唾を飲んでふたりのセカンドショットを待った。先にローズが左端ギリギリに2オン。そしてガルシアの番。
何度もメジャーに手が届きそうになりながら、これまで勝ったことがなかった。緊張の一瞬、勝負をかけた一打が放たれた。いつもより長いフィニッシュ。ボールはピンへと向かっていき、オーガスタの杜には、どよめきが響き渡った。
さあショータイムだ。一度は離れかけた女神を、もう一度手繰り寄せる最後のチャンス。静寂のなか、乾いたパットの音が聞こえた。最後のひと転がり、ガルシアの体が動いた。
イーグルだ。
スペインの英雄セベ・バレステロスの誕生日に決めたガルシア。長い道のり、やっと花が咲いた。