アディダスは、2年後の2024年には「すべての製品にリサイクル素材を100%使用へ」と「END PLASTIC WASTE」に向けすべての製品においてバージンポリエステルの使用を廃止し、リサイクルポリエステルを使用するという目標を掲げている。
そのアディダスとゴルフのスキルを高めるだけではなく、環境やほかのプレーヤーへの配慮、そして茅ヶ崎のローカル文化をリスペクトできるプレースタイルを推奨するGDO茅ケ崎ゴルフリンクスがコラボ、サステナブルでスマートなゴルフを楽しむためのキャンペーンを実施するという。
イベントでは海の環境活動をおこなう「NPO法人湘南ビジョン研究所」の片山清宏氏と築地の魚屋さんで料理研究家の栗原友氏が登壇。海洋プラスチックの元になるゴミは大雨などの影響で川から流れて海に堆積するため、海洋プラスチックを増やさないためにもゴミをちゃんと始末することが大切だとの説明があった。
しかし、いくら海岸線のゴミを処分しても、じつは海岸の砂の中には細かく砕かれたマイクロプラスチックと呼ばれる100年以上も分解されないプラスチックが無数に堆積している。湘南ビジョン研究所では砂浜からマイクロプラスチックを回収する活動を続け、海を汚染することで魚に影響を与え、魚を食べる人間にも影響を及ぼすと警笛を鳴らす。
パフォーマンスとサステナビリティの両立
イベントに先立ってアメリカ・カールスバッドのヘッドオフィスにて現地で活躍する二人の日本人にアディダスのサステナブルな活動について話を聞いた。
アディダスゴルフでアパレル部門のチーフデザイナー・西田幸基氏とゴルフシューズ部門のマーケティングマネージャー・小林義徳氏。二人の仕事はただ見映えがよくて機能性の高い商品を作ることだけではない。
GD:ウェアもシューズも新しい機能性素材がどんどん出てきています。
小林:昔のゴルフウェアはチノパンにぶかぶかの綿のポロシャツが定番でしたが、いまは身体にフィットした伸縮性の高い素材が使われていて動きやすくなりましたね。
西田:シューズもアウトソールがしなやかになりフットワークを使えるようになりました。
GD:新しい素材をどうやって見つけてくるのですか。
西田さん:アディダスにはマテリアル(素材)専門のチームがいますし、サプライヤーさんとのコネクションも大事です。ただ、新しいもの、より優れたものはそう簡単には作れなくなっています。
GD:どういうことでしょう?
西田:いまの商品開発にはパフォーマンスに加えてサステナビリティ、ジェンダーレス、ダイバーシティなど多方面への配慮が求められています。とくにアディダスでは他社に先駆けてリサイクルマテリアルへの転換をすすめてきました。たとえば、デザインのグローバル化によって使用するマテリアルやスタイル、カラーを集約してロスを減らすことができます。そのいっぽうで消費者にとっては選択肢が減ることで商品の魅力がなくなる可能性もあります。
小林:いまは環境問題に敏感な人も増えているし、昔のように多品種大量生産しておいてあとのことは知りませんでは通用しません。リサイクルマテリアルを使って吸汗速乾性、ストレッチ、色落ちしにくさなどパフォーマンスをどう維持していくかがテーマになっていて、マテリアルの知識や技術がないとデザインも生産もできません。ちなみに現在、アディダスのアパレルの8割はリサイクルマテリアルで作られています。マイクロプラスチックをこれ以上増やせないし、アディダスのような大きな規模の会社が取り組むことでそれなりの効果があると思います。
GD:そんなにリサイクル比率が高いとは気がつきませんでした。
西田さん: ゴルフ部門はとくに進んでいてリサイクルマテリアルの比率は90%以上です。そして2024年までに100%を達成することが会社としての目標です。
GD:あと2年しかありません。可能ですか。
西田さん:従来と変わらない品質を保つには技術開発が必要で、それなりにコストもかかります。以前はバイヤーさんから「リサイクルなのになんでこんなに高いんだ」、という言われようで温度差もありましたが、最近は変わってきました。コンシューマーは意識が高くてむしろリサイクルだから支持するという方が多いですね。
アディダスという世界的なスポーツブランドの事業規模でバージンポリエステルの使用を廃止しリサイクルポリエステルを使用することで地球環境保護に貢献する。そのコストはメーカーと消費者で負担するというモデルは今後スタンダードになっていくだろう。