日本ではプロアマ戦などに用いられる複数ホールから選手をスタートさせるショットガン方式が採用された大会初日。リーダーボードの最上段に名を連ねたのは南アのマスターズチャンピオン、シャール・シュワーツェル(5アンダー)だった。
2打差の3位タイに先のミズノオープンに優勝したあとアジアンツアーのインターナショナルシリーズ イングランドで2週連続Vを達成したスコット・ビンセントがつけ、ミケルソンとDJは1アンダー7位タイ。日本勢は谷原秀人がイーブンパーで11位タイ、香妻陣一朗と木下稜介はケビン・ナらと並び3オーバー、24位タイからのスタートとなった。
今年のはじめPGAツアー批判をおこなったミケルソンはほぼすべてのスポンサーから契約解除を言い渡され今大会が2月初旬以来の公の場となった。いつも通り黒のウェアを着用していたが胸や袖のロゴはなくまるで無地。D・ジョンソンもメインスポンサーであるRCB(ロイヤルカナダ銀行)が契約を破棄したためウェアにロゴはない。
予てから他リーグに出場した選手はPGAツアーの出場停止、あるいはメンバー資格剥奪をコミッショナーのジェイ・モナハン氏が明言していたが、「LIVゴルフ」のアメリカシリーズにはブライソン・デシャンボーやパトリック・リードの出場が濃厚といわれている。ではなぜ選手たちは新リーグ出場の道を選ぶのか?
それはやはり高額賞金の魅力に他ならない。「お金を稼ぐためにプロになったのだからそれを恥ずかしいと思う必要はない」とトム・ワトソンが言ったことがある。経費をかけて試合に出て予選落ちなら賞金はゼロというのがこれまでの常識だったが「LIVゴルフ」は出場すれば最低でも数千万円が保証される。それはミケルソンやDJのような永久シード選手でも、すでに富と名声を手にしたリー・ウェストウッドらベテランにとっても魅力的な話なのだ。
5年間で50億円を超えるお金をギャンブルで失ったとされるミケルソンは今週「ギャンブルは人生の一部だった」と認め依存症からの脱却を試みていると話したが、彼にとっては家族の生活を守るためにも「LIVゴルフ」は頼みの綱だ。
名誉やレガシーよりお金を取るのは決して悪いことではない。しかし今回問題になっているのはお金の出どころ。莫大な資金はサウジアラビアの公的なオイルマネーから捻出されている。そしてそのサウジは反政府的なジャーナリスト、カショギ氏を暗殺したとされ、ほかにも女性や同性愛者に対する蔑視、虐待、一般市民への拷問などが横行する人権問題を抱える国。そういった非難から目を逸らさせるためスポーツ団体やスポーツイベントに投資する『スポーツウォッシング』がおこなわれているといわれている。
スポーツに投資し実態をカモフラージュするのが目的なので利益は必要ない。放映権料を持つPGAツアーにも潤沢な資金はあるが会社でいうところの採算は考慮しなければならない。そこが「LIVゴルフ」との違いだ。
「LIVゴルフ」を率いるグレッグ・ノーマンは「フリーエージェントの時代に選手の選択の自由を奪うのは違法」と訴える。プレミアゴルフリーグ構想(LIVではない新リーグ)も根強く存在する今、ゴルフ界が分断されないことを祈るばかり。しかし時代は確実に変化している。