―—中継を見ていてもなかなか大変そうなコースでしたが
「今回のラフの芝、あのラフの密度がすごくて。テレビなんかで見ているとそれほど深く見えないんですけど。短い距離を軽く打つとチョロになるから、結局強くヘッドを入れないとダメなんですけど、強く打つと飛んでしまいそうだし……。かなり難しかったと思います。それとコースが日本には存在しないレイアウトでしたよね。ひと息つけるホールがないんですよね。ミスをした場合に戦略を立て直すチャンスをくれない。だからミスをした時に立て直せない。1回ボギーを打ち出すとリズムがつかめないうちにスコアを崩していってしまう感じでした。今回のザ・カントリークラブが特別難しいからそう感じたのかもしれませんが」
—―予選ラウンドを一緒に回ったのはラント・グリフィンとジョエル・ダーメン。そのダーメンはトータル2アンダー、トップタイの成績で決勝へ駒を進めました。彼らとの差はありましたか?
「2日間ダ―メンと遜色ない飛距離とフェアウェイキープ率だったと思います。だからそこに差は感じませんでした。グリフィンもダーメンもツアーの中では平均より少し飛ぶくらいで、飛距離的には、あ、一緒なんだと。でもそこからの差が大きい。そこから2日間で20打くらい差がついているわけでしょう。そういう意味で言うとアイアンの差ということになるのでしょうか。でもそれは精度じゃないんです。グリーン周りのアプローチにしてもそう。彼らはすごくはうまかったですよ、うまいけど技術が特別すぐれているのではなく、芝を知っているからそれに対応したテクニックをもっているという感じでした」
「ローリー・マキロイなんかはドライバーでそこから20~30ヤード前に行く。だから超一流なわけですよ。パー4が平均500ヤードくらいだとして、ドライバーで350ヤード打って、残り150ヤードでピンを狙っていく。そう考えれば松山英樹選手がこっちでずっとやってメジャーを獲ってていうのは余計に凄さを感じますよね。ダーメンなんかだと2打目で200ヤードくらい残っていて、そこを5、6番で乗せてきますが、その戦い方は日本人選手でもできます」
—―ではいちばん違いを、差を感じたのはどんなとこですか?
「たとえば普通に気持ちよく打っても芝も下の土も硬くてヘッドが弾かれる。あの人工芝みたいな芝って日本にないんですよ。普通にヘッドが入っていかないというか。だから対策を立てられない。それだから道具的にみても日本と同じソールじゃダメなんだなというの気づく。そう思っていろんな選手のアイアン見てみると、みんなヘッドが小さくてバウンスも少ない。松山選手なんかも香妻選手と同じアイアンだけどソールを削ってるというし。そういう理由で道具を選んでいるんだな、というのがわかる。いろんなコースに対応できるように、クラブの準備も必要ですし、日本と同じじゃダメ、星野選手はクラブを2セットもってきてたというし、ソールの改良とか2セット違うものを用意するとか道具も変えなきゃダメですね」
ーーこれからもっと海外に挑戦する日本人選手が増えると思います。コーチとして伝えたいことは見つかりましたか?
「全米オープンならアメリカで戦っていないと勝てないでしょう。スポットで行ったって絶対無理なんです。違う競技と言ったら大げさですけど、競技の質が違う。その質というのは技術ではなく、コースのレイアウトというかセッティングへの対応力。だからこの舞台で活躍したいのなら、これに慣れようよ、という話です。メジャーで上位に行きたいと思うなら絶対アメリカで戦ってないとだめでしょう。
昔から日本ツアーの人が米ツアーに行くと 技術が足りないのでまだやらなきゃだめとかいうけど、僕は今回普通に、客観的に見てそんな感じはしませんでした。もしプロでメジャーでの活躍したいのであれば、ここでやろううよ! って伝えたい。ミニツアーでも下部ツアーでも近いことを体験できるはずです」
写真提供/森守洋