「セントアンドリュースを楽しみしています」というセリフを何度耳にしたことただろう。「そこで全英オープンに2度勝っているし私の心に寄り添い大切に感じられる場所だから」
タイガーの心を揺さぶる特別な場所。それは「Home of golf (ゴルフの故郷)であり自分が世界で一番好きなコース」。「セントアンドリュースでおこなわれる以上必ずその舞台に立ちます」
タイガーとセントアンドリュースとの蜜月は2000年に始まった。ミレニアムに人々が新しい希望を抱いたその年、タイガーは同地で全英オープン初優勝を果たした。しかも2位のアーニー・エルスとトーマス・ビヨーンに8打差をつける圧勝。8打差は未だ破られていない大会最多ストローク差優勝記録である。
世界ランク1位の座に683週君臨したタイガーだが2000年は彼史上最強だった。全米オープン(ペブルビーチ)ではエルスに15打差をつけ栄冠に輝いた。迎えた全英では予選ラウンド36ホールノーボギー。初日タイガーを1打リードしてトップに立ったエルスは「今回また僕が15打差で負けたりしたら(反則を疑って)審議を要請するよ」と自虐的に笑った。
結果15打とまではいかなかったが8打差の勝利。大差で敗れたビヨーンは「ひとりだけ我々とは違う星でプレーしたようだ」と悔しさを通り越して手のつけられないタイガーに諦めの表情を見せた。
セントアンドリュースには112個のバンカーがありその1つ1つに名称が付けられている。そり立つような壁を持つポットバンカーは選手たちを大いに苦しめたが4日間を通してタイガーはただの一度もバンカーにつかまることはなかった。
「いいショットを打ってはいたけれど運にも助けられた。ティーショットだけでも3回か5回(バンカーに)つかまりそうになったけれどその都度ハザードを避けるように打球が左か右にキックしてくれた。ラッキーだった」と運を味方につけた。これもまたゴルフの神様の采配か。
この優勝でタイガーは史上5人目のキャリアグランドスラムも達成した。97年に歴史的なマスターズ初優勝を挙げ、99年にはセルヒオ・ガルシアと競り合う(実際には危なげない勝利だったが)記憶に残る形で全米プロ制覇を成し遂げ、00年は全米オープンで戴冠。すでに3つのメジャーを獲得していた彼は24歳という若さでジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラスと肩を並べた。
タイガーにとってセントアンドリュースは「ホーム・オブ・ゴルフ」であるとともに運を運んでくれる「ホーム・スイート・ホーム」なのだ。