タイガーが”聖地”に帰ってきた!
昨年の2月の交通事故で右足を負傷したというニュースを聞いたときは、正直「もうダメなのかな」とも思いました。それがマスターズで奇跡の復活! まさかタイガーの姿を4日間見られると思っていなかったので、素直に嬉しかったですね。あれだけのケガを負ったわけですから、今でももちろん足への負担はあると思います。ただ、セントアンドリュースは相性もいいですし「もっとも好きなコース」と公言していますから、必ず出場してくれると信じていました。全英オープンの練習日では18ホールプレーしたという情報も入ってきていますので、日に日に回復しているということでしょう。とは言いつつも、スウィングを見ると、少し気がかりな部分があります……。
やはり、ケガの影響は大きいんですね。痛々しいとまでは言いませんが、右足をだいぶかばっているのがわかりますね。ケガをする前と比べると、アドレス時の体重は少し左になっていますし、スウィング中も左足体重で、“ずっと左にいる”感じで振っています。
それは、ダウンスウィングからフォローにかけての動きを見てもわかります。「静かに振っている」という表現が正しいかはわかりませんが、右足で地面を蹴る動作や、それにともなって粘っていく動きが減っています。このふたつの動きは連動していて、右足で地面を強く踏むことで蹴る力に変えます。そして、蹴る力が強ければその分だけ”粘り”も生まれてきます。
右足の粘りがあると、前傾角をキープできる時間が長くなるのですが、今のタイガーは上半身を起こすタイミングが早くなっています。ただこれは、決して悪いことではありません。上体を起こすことで体の回転を促してくれるので、窮屈にならずスムーズに回ることができるようになるメリットもあるからです。
タイガー自身が意識しているかはさだかではありませんが、右足への負担を最大限減らしながらスウィングしていると言えるでしょう。
右手”ちょいフック”で右へのミスを防ぐ
体重配分の変化によって、グリップにも少し変化が出たように思います。タイガーのような超一流選手に当てはまるかはわかりませんが、一般的には、自然なローテーションを使いながら打つタイプの選手が、左足体重にしてスウィングをすると、インパクトでフェースが戻り切らずに右へのミスが出ることがあります。
それを防ぐために、グリップをフックに握る方法がありますが、タイガーも若干ですが以前よりも右手がフックに握っているように見えます。フックに握ることで、フェースの開閉の動きを抑えることができ、右へのミスを防いでいるのかもしれませんね。
だからと言って、気がかりなところばかりではありません。僕は、タイガーの腕使いは“神”だと思っているのですが、そこにかんしては相変わらず素晴らしいです。上げたところと同じところに手元が戻ってきて、それはまるでマシーンのようです。その中で、自然なローテーションが入りボールをさばく。この動きこそタイガーであり、ボールをさばく技術はいまだ衰えを感じることはありません。タイガーが仮に腕をケガしてしまっていたら、僕はここまで復活できていなかったと思います。タイガーのスウィングはこの腕使いの秀逸さにあり、タイガーがタイガーたるゆえんだと感じますね。
いずれにしても、あんな大けがを負いながら、ここまで復活してくるのは超人としか言いようがありません。我々が信じられないようなことを何度もやってのけたタイガー。今回の全英オープンも、期待しちゃいますよね!
写真/姉崎正