3日目まで首位を走っていた原英莉花が失速するなか、優勝を争ったのは最終組の稲見と山下、そして1つ前の組で回った藤田さいき、吉田優利の4人。キーホールとなったのは最終日の平均スコアが4.459と最難関の16番パー4だった。先を行く藤田、吉田はここでともにダブルボギーを叩いて脱落。さらにティーショットを左ラフに入れた山下も3打目のアプローチを寄せ切れずにボギーとスコアを落とした。そんななか稲見もパーオンは逃したものの、左サイドからのアプローチをピタリと寄せてパーセーブ。難所をしのいで単独首位に立つと、17、18番もパーをセーブし、1打のリードを守り抜いた。
今大会で稲見は畑岡奈紗らを指導する黒宮幹仁コーチをキャディに起用。これまで指導を受けてきた奥嶋誠昭コーチとの関係については、大会前に「今は連絡を取っていません。微妙なところですね」と明かした。今後に関しては「何も決まっていません」と多くを語らなかったが、コーチを変えるのか、変えないのか、心落ち着かない状況でも、集中を乱さないメンタルの強さを見せた。
いっぽう、2週連続の2位となった山下は今大会予選落ちに終わった西郷真央をかわし、賞金ランキングに続いて、メルセデス・ランキングでも首位に浮上。稲見はランキング3位で変わらなかったが、1試合で首位に立つ可能性があるところまで差を詰めた。今季は西郷が開幕から出場10試合で5勝、2位2回と圧倒的な力を発揮。5勝目を挙げた時点では2位の山下のほぼ倍のポイントを獲得して独走状態だったが、ここにきてランキング4位の西村優菜を含めた上位陣は混戦模様となっている。
今季、海外メジャー4試合に挑戦した西郷は日本でのプレーが少なく今大会が13試合目。これに対し、山下はメジャー1試合、国内20試合、稲見は国内のみの25試合、西村はメジャー3試合、国内18試合となっている。メルセデス・ランキングは海外メジャーの成績も加味され、西郷は4試合で国内ツアー1勝分以上のポイントを稼いだが、国内で上位争いを繰り返すライバルたちを相手にリードを守るにはそれでも不十分だった。
ツアーはまだ13試合を残しており、そのうちポイントの配分が大きい公式戦が3試合。西郷が序盤戦の勢いを取り戻すのか、昨季の女王・稲見が貫録を見せるのか、8試合連続トップ5を継続中の山下か、平均パット数1位の西村か、さらにほかの選手が割り込んでくるのか。賞金ランキングよりも、メルセデス・ランキングのほうがプライオリティが高いということが明確に示された初年度の女王争いは例年以上の盛り上がりを見せそうだ。