ツアー選手権最終ラウンド、スミスと同組でプレーしたのはフロリダで近所に住む親友ビリー・ホーシェルだった。
「これが彼と一緒にツアーでプレーする最後のラウンドになると思ったら感傷的になってしまった。キャム(スミス)とはずっと昔からの付き合い。彼は男の中の男。これまでのようにツアーで頻繁に会えなくなってしまうのは寂しい」とホーシェル。
PGAツアーの本拠地TPCソーグラス(プレーヤーズ選手権の舞台)のあるポンテベドラビーチに住む2人は仲が良い。スミスが今年セントアンドリュースで全英オープンを制覇しスコットランドからフロリダに戻った翌朝、2人は近所の海で釣りを楽しんだ。そしてクラレットジャグ(全英オープンのトロフィー)にビールを注いで飲み干した。2人にとって生涯忘れられない至福のときだった。
貴重な時間を共有した友がツアーを離れることが悲しい。「彼の決断に意見するつもりもないし(ツアーにとどまるよう)説得もしない。どこでプレーしても僕はいつでも彼を応援しているし何かあれば盾になりたい。家に帰れば会うだろうし、もちろん一緒に釣りもする」と14年のフェデックスカップ年間王者ホーシェル。
スミス本人は移籍の理由について「(推定100億円を超える契約金が)魅力的だったし、お金が理由だったことは否定しない。ビジネス上の判断で無視できないオファーだった」と語っている。
しかしそれだけではないという発言も。PGAツアーにフル参戦する身では故郷オーストラリアに戻れるのはオフの数週間。しかも全豪オープンなどの試合に出るのが主な目的でプライベートで地元の仲間と会ったり、大好きなラグビーを観戦する時間はない。しかしLIVなら少なくとも3カ月はまとめて帰郷することができる。
「友達の結婚式や誕生日パーティにも出られず不義理を続けてきたけれど(LIVでプレーすれば)失った私生活の時間を取り戻せる気がする。故郷で過ごす時間を増やせるのが最大の魅力」(スミス)
スミスのほかホアキン・ニーマン、マーク・リーシュマン、ハロルド・バーナーⅢ、キャメロン・トリンゲール、アニルバン・ラヒリが今回LIVに移籍。これまではピークを過ぎた30代、40代の選手の移籍が目立ったがスミスは29歳、ニーマンは23歳の伸び盛り。
「20代でこれだけの実績を持つスミスの移籍はツアーにとってこれまでにないほどの打撃になる」とホーシェルはいう。スミスは今年、昨季の優勝者のみに出場が許されるセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンの優勝を皮切りに第5のメジャー、プレーヤーズ選手権を制し、全英オープンでメジャー初優勝を果たした。
「トップ中のトップが競う大会で勝っただけでなく、マスターズや他のメジャーでも優勝争いをしている。できれば彼にメジャーで戦うチャンスをあげて欲しい。もちろん僕に何の決定権もないけれど」。友を思うホーシェルの気持ちは温かい。