PGAツアーの主軸の一人であり、ザ・メモリアルトーナメントの覇者が、2年に1度のチーム対抗戦に照準を合わせる
ビリー・ホーシェルは今年の6月にPGAツアーで優勝し、2週間も早く父の日を迎えることになった。彼がザ・メモリアルトーナメントを制した瞬間を見届けたのは、18番グリーンの真横に座っていた帝王ジャック・ニクラスだけではない。他にも4人のVIPが間近で固唾を飲んでその様子を見守り、興奮に震えた。
ホーシェルがファイナルパットを沈めて4打差で圧勝すると、娘のスカイラーとコルビー、そして息子のアクセルは幼いながら全速力でグリーンに向かって駆け出した。
「パパは勝った?勝ったの?」子供たちは母親のブリタニーを見上げながら声を張り上げ、勝利を確認してからホーシェルを取り囲んで抱きついたりハイタッチを繰り返した。子供たちは父親がPGA ツアーの試合で優勝する場面に居合わせたことがなく、それはブリタニーも同じだった。
「妻と子供たちは私の優勝を見届けたことがなく、それは家族の間で笑い話になっています」とホーシェルは語っていた。
「私が優勝する見込みのあった週も、妻は土曜日の夜に飛行機に乗って会場に駆けつけることを嫌がりました。万が一悪運を運んでしまうことを恐れて、ひたすらそれを拒んできたのです」
「しかし、家族が駆け寄ってきてグリーン上で勝利を祝ってもらう瞬間を、僕はずっと待ち望んでいました。何年経っても振り返ることができますし、子供たちにとっては一生の思い出になりますからね。だから、そのときの映像と写真は僕たちの格別の思い出としてずっと残るでしょう」
家族の熱烈な祝福の後、辛抱強く待っていたトーナメントホストのジャック・ニクラスと交わした力強い握手は、ホーシェルにとって同じくらい貴重な体験となった。実際に、ニクラスが祝いの言葉を述べる前からチャンピオンは有頂天だった。
「最終ラウンドは、あなたやタイガーと同じようにプレーしようと努めました」とホーシェルは満面の笑みを浮かべながら言った。「とにかく自分のゲームプランに徹して、球をグリーンの中央に運び、2パットで入れる。特別なことは何もしないと決めていました」
とはいえ、日曜日の彼のプレーぶりは異彩を放っていた。5打差の首位で迎えた最終ラウンド、後続に少し追い上げられたときも、ホーシェルは決定的な場面で会心のショットやパットを決め、若手有望株のアーロン・ワイズやプレジデンツカップの有力候補であるホアキン・ニーマン、そしてメモリアルで2勝を挙げたパトリック・キャントレーを寄せつけなかった。
それはゴルフでも私生活でも根気強さを身上とする、ホーシェルならではのパフォーマンスだった。彼は結束の強いチームに支えられており、その布陣には2008年からのスウィングコーチで超一流のゴルフインストラクターであるトッド・アンダーソンや、ホーシェルに雇われる以前、「手首が硬すぎる」と大胆に指摘したデータ分析の専門家マーク・ホートン、TPCパフォーマンスセンターのトレーナーを務めるアレックス・ベネット、そして1年ほど前にチームに加入したベテランキャディ、マーク・フルチャー(通称フーチ)が含まれている。
「何年も前から言い続けてきたとおり、大事なのはハードワークです。正しいことをしていても、すぐには結果が出ないときもあります」とホーシェルは言う。
「少し時間がかかるものなのに、なかには結果が伴わないとすぐにコーチを変えたりスウィングを変えたりして、それまでの取り組みを断念してしまう選手もいます。でも、私は違います。チームで作り上げたプロセスを大切にしているし、私たちは毎週、誰よりも入念に準備をしているという自負もあります。トレーナーもフィジオ(理学療法士)も含め、私たちはつねに全力で取り組んでいますからね。私がチームに厳しく接しているせいか、みんな少し疲れてしまうときもあります。自分自身が努力家で、つねに向上心を忘れないからでしょう」
「でも、それがチームのレベルアップにつながり、優勝するための最善策であることをみんな理解しています。過去15ヶ月の間に3勝できたことには、とても満足しています」
じつはホーシェル、プロに転向してからアメリカを代表して国別や大陸別対抗戦に出場したことがない、21-22シーズンは15試合に出場し、2位フィニッシュを2回、トップ10入りを5回果たしている。
「ライダーカップやプレジデンツカップのポイントランクには、それほど重点を置いていません」と彼は言う。「自分のやるべきことをきちんとこなせば、自力でメンバー入りを果たすか、キャプテン指名で参戦するチャンスが巡ってくるでしょう。ここ10年近く、ライダーカップやプレジデンツカップ参戦まであと一歩という状況が続いてきましたが、問題はチームメンバーが選出される直前の数か月近く、あまり調子が上がらなかったことです」
「まだ先が長いことは分かっています。大事なのは諦めずに日頃から良いプレーを心がけることです。そうすれば、すべてが良い方向に進むはずです。僕はつねにそういう考え方を重んじてきました」
そして、とうとう彼は初めてアメリカ代表としてプレジデンツカップの舞台に立つ。対戦相手が誰であろうと、もうチームとともに対策は済んでいるはずだ。