9月最終週のサンダーソンファームズで、PGAツアー2勝目を挙げたマッケンジー・ヒューズ。端正な顔立ちとカナダ人特有の物静かな雰囲気がありますが、見ていても面白い荒々しいゴルフをしてくれる選手です。
スタッツ的には「キャメロン・スミスっぽい」。SGオフ・ザ・ティーが悪く、昨季のドライビングディスタンスは298Y(111位)で正確性も決して高くないのですが、グリーン周りとパッティングで凌ぐ「泥臭いゴルフ」が持ち味です。
サンダーソンファームズは、プレジデンツカップの翌週の試合。実はヒューズにとって、今年の大きな目標のひとつがプレジデンツカップの代表に選ばれることでした。会場のクエイルホローは、ヒューズの住むノースカロライナ州のシャーロットにあります。それだけに初選出に期待していたのですが、キャプテンピックの候補でありながら選ばれずに悔しい思いをしました。シーズン後半に調子が上がらなかったこと、クエイルホローが飛ばし屋有利なこと、世界選抜は各大陸のバランスを考慮しての選出になることなどがあったのでしょう。実際、ヒューズよりもポイントの低い選手が選ばれており、その悔しさを晴らすかのように翌週に優勝を果たします。
同じパターンは昨年もありました。ライダーカップの候補でありながら選出されなかったサム・バーンズが、やはりサンダーソンファームズでツアー2勝目を挙げ、余勢を駆ってシーズン3勝、一躍スターダムへとのし上がりました。日本人には少し理解できない感覚かも知れません。しかしPGAの選手にとって、プレジデンツカップやライダーカップに選ばれることは大きな目標であり、また選ばれなかったことをバネにして飛躍する選手もいるのです。今年32歳になるヒューズも、ここからの活躍が期待できます。
次回、24年のプレジデンツカップは、ヒューズの故郷であるカナダのロイヤル・モントリオールで開催されます。同コースで開催されるのは、07年に続いて2回目。前回はヒューズが16歳のときで、その熱狂が多感な少年をゴルフに駆り立てたのは想像に難くありません。実際、ヒューズは翌年にナショナルチーム入りを果たし、11、12年にはカナダアマを連覇するなど、カナダのゴルフ界でメキメキと頭角を現しました。
今回のプレジデンツカップでは、カナダ勢は散々でした。出られなかったヒューズはもとより、コーリー・コナーズ、テイラー・ペンドリスはともに1ポイントも挙げられず。しかしすでにドラマの種は蒔かれました。今回の屈辱は、次回の大会でホスト国であるカナダ人選手の雪辱に……と、そんなことを想像するだけでも楽しいものです。
ちなみにこの3人のカナダ人選手は、同年代でいずれもケント州立大出身。選ばれなかったヒューズが、SNSを通じて2人を応援する姿もプレジデンツカップならでは。こういうところを発見するのもPGAの楽しみ方ですよね。
※週刊GD22年11月22日号「うの目 たかの目 さとうの目」より