ラウンド中、距離が短いパー4にやって来た。これはチャンスホールだと思い、いざティーイングエリアに立つと、両サイドの林がせり出す狭いホール。がっかりしながらドライバーを諦めて、安全にいこうとFWやUTを握ったのだが、なぜかミスに……こんな経験はゴルファーなら誰しもあるだろう。
なぜ安全策のはずのFWやUTのティーショットは失敗するのだろうか。「それはFWやUTがドライバーよりも安全だとは限らないからです」というのは、横須賀をベースにレッスンを展開している小林大介プロだ。
でも、狭いホールでFWやUTを持つのは、安全策としてのセオリーのはず。実際、テレビでトーナメント中継を見ていても多くのプロが選択する方法だ。
「それはプロだからです。プロのセオリーが必ずしもアマチュアの方に当てはまるとは限りません。確かにFWやUTはドライバーよりも短くロフトもあるので、つかまりがよく、スピン軸がブレにくいので曲がりを抑えられます。これが、プロが選択する理由。
でも一方で弱点もある。ドライバーよりもフェースが薄いので縦方向の打点のブレに弱い。プロはミート率が高いので問題になりませんが、アマチュアの場合はこの点が影響します。そもそもアマチュアの方はFWやUTの使用頻度が低い。コースではもちろん、練習場でもドライバーほどの球数を打っていない。ティーショットであればなおさらです。
慣れないクラブで打てばミスが出るのは当たり前。練習場では上手く打てるという人もいると思いますが、コースに行けばティーイングエリアはフラットに見えても多少の傾斜はある。縦方向の打点のミスが起こりやすい状況で、縦方向のミスに弱い慣れないクラブで打てば、それが安全策にはならないことはわかりますよね。FWやUTのティーアップの高さで迷う人は、慣れていない証拠ですから、失敗する確率が高いので注意が必要です」
成功させる方法は4つの事前準備だ!
FWやUTのティーショットが安全とは限らないという小林プロ。では、使わないほうがいいのか。「そんなことはありません。しっかりと“準備”さえすれば、FWやUTのミスは防げますから」その準備とはどんなことなのか、小林プロに詳しく聞いてみよう。
「まずは状況判断。たとえば打ち下ろしのホールでは、打ち出しが高いと滞空時間が長くなり、曲がり幅が大きくなる。そんなときはFWやUTよりもドライバーを短く持って弾道を低く抑えたほうが安全です。また左サイドに池があるときも、つかまりがいいFWやUTよりもドライバーのほうが安全な場合があります」。自分のミスの傾向やクラブの特性を考えながら状況判断することが大切なのだ。
「2つめの準備はメンタル。ドライバーを諦めてFWやUTを選択するということは、飛距離よりも方向性を優先させるということです。でもいざ打つときになって、距離が残ったら2打目でグリーンに届かなくなるという不安で、諦めたはずの飛距離を欲張って振り回してしまう。実はこれもFWやUTで失敗する大きな原因です」
パー3のときはそれほど曲がらないのに、パー4やパー5になるとミスをするという人は無意識に振り回していることが多いのだ。
「さらにパー3の場合はグリーンというはっきりした目標がありますが、パー4やパー5の場合は漠然と打ってしまう人が多いです。これも曲がる原因になります。逆に『正面のあの高い木』というようにターゲットをピンポイントに絞り過ぎるのもシビアになり過ぎるのでよくありません。『あの木とバンカーの間』くらいの一定の幅を持って目標を設定したほうがいい。そこでおすすめするのが、フェアウェイに仮想グリーンをイメージして、パー3のティーショットのつもりでボールを“運ぶ”ことです。飛ばそうという意識も自然になくすことができます。あとはレディスティーのティーマークなどをスパットとして利用するのもいい。ボーリングと同じように、ピンを狙うのではなくスパットを通すことに集中すれば、出球を管理する意識が身につきます」
安全策のはずのFWやUTのティーショットが失敗するのは、こうした準備ができていないから。打つ前にミスの原因はあるのだ。
「最後にお伝えしたいのが練習方法です。普段から練習していなければ、安全策は安全とは言えません。練習場の柱などを利用して仮想の狭いホールを思い浮かべ、想定した幅の中に打つ練習をしましょう。ナイスショットにこだわる必要はありません。幅の中に打てれば成功、それが実践練習です」
ドライバーと比べるとフェースが薄く、縦方向の打点のブレに弱いFWやUT。最後に確実にミートするための方法を小林プロに聞いてみた。
「振り回そうとすると頭が飛球線方向に突っ込み打点がブレます。頭の位置をキープし、ソールを滑らせる意識で振りましょう」
※週刊ゴルフダイジェスト2022年11月15日号「FWやUTのティーショットはなぜ失敗するのか?」より