「鼓動が早くなった。緊張感のなかでのプレーは課題です」(河本)
時松:ほんと、ルーキーイヤーで2勝目はすごい。
河本:ありがとうございます。
時松:改めて、優勝した東海クラシックの15番パー5、(河本)リキのラフからの2打目は、僕なら奥のバンカーに入れて3打目で寄せワンというプランかなと思って見ていた。それを狙ってもできないスゴい場所にキャリーで落としてピン手前2メートルに付けてのイーグル。あのセカンドショットで流れはリキに向いたなと思った。あれは狙ったの?
河本:右から風がきていたので、右に打てば今日のスウィングの感じだったらドローして勝手に寄っていくと思って打ちました。"たまたま"が重なったミラクルショットですね。
時松:18番パー4の奥からのパットは、同じようなラインを最初に桂っちゃん(桂川有人・24)が外したので、リキは外れてもプレーオフ。あれを先に入れられていたら、また状況は違ったと思うけど、優勝の流れは完全にリキのほうに向いていた。
河本:はい。桂(川)さんのラインは参考になりました。
時松:優勝争いでのメンタル面はどうだった。
河本:15番のイーグルで、追う立場から追われる立場に変わった瞬間に「勝てるんじゃないか。さすがに勝ち切らないと」と思って。鼓動がすごかったです。(その後に16、17と連続ボギーで)緊張したらいいショットが打てないというのがわかって、まだまだだなと感じました。今後の課題ですね。
時松:でも若いうちは誰でも優勝争いのときは緊張するって。じつは今日は、なぜか稲森(佑貴・28)がいるので(笑)、日本オープン男(18年&20年優勝)の緊張ぶりを聞いてみよう。18年の日本オープン優勝時は18番パー3で球が曲がった。「曲がらない男が、エッ!」と思ったもん。プレッシャー?
稲森:チーピンです。1回目の優勝のときはマジでプレッシャーでした。17番ホールまでは覚えているんですけど、18番のティーショットは覚えてないです。
時松:2打目のバンカー越えのショットもヘロヘロだったね。
稲森:3打目がOKに寄って。次の2メートルのパットは人生イチ苦しいボギーパットでした。
時松:そりゃあ緊張するよね。
稲森:源さん(時松の愛称)の優勝はどういうパターンでした?
時松:福島オープンは最終日トップスタートの逃げ切り。関西オープンは最終日アマチュア(当時)の久保田皓也くんがトップで、彼は朝からティーに球が乗せられなくて、それを必死に隠していた。それを見て「これは、待っていれば崩れるだろうな」と。案の定、彼が落ちてきて、後は最終組で一緒に回っている(今平)周吾さんと僕との一騎打ちという展開。だから、優勝争いで緊張しないと言ったらウソになるけど、でも、それを出さないというのが強さの証明かなと思う。
河本:あ、でも僕は小・中学生の頃に時松さんの試合でのプレーを何回か見たことがあるんですけど、そのときの印象はすごいポーカーフェイスでした。
時松:それは自分ではわからないけど。
河本:時松さんが顔に出さないポーカーフェイスの勝負士だと思うのは誰ですか。
時松:それは(池田)勇太さんでしょ。雰囲気がずっと一緒なんで、よい意味で何考えているのかわからないというのが相手からしたら怖いと思う。
稲森:僕は今平(周吾)さんです。
時松:確かに、怖いね。
稲森:以前今平さんに、ミスショットの原因に関して聞いたとき、「失敗する気がしないから、何とも言えないなあ」って。もう全部上手くいくわけですよ。
河本:メチャメチャ上手いですもんね。
「デシャンボーには飛距離で勝てませんよ」(河本)
時松:でもリキは、飛距離という武器があるわけだから、イケイケのまま場数を踏んでいけば、そういう緊張するなかでも力が出せるようになると思う。
稲森:飛距離を分けてほしいくらい。ISPSのときに一緒に回ったけど、マジで100ヤードくらいおいてかれた(笑)。
時松:稲森はデシャンボーとも回っているよね。
稲森:たぶんリキくんといい勝負になると思うので、一度対決してもらいたいね。
河本:絶対に勝てないですよ。ボールスピードで221マイル(約353キロ)なんて出ないです。
稲森:デシャンボーはアイアンも飛ぶ。230ヤードのティーショットを6番アイアンで打った。
河本:すごいですね、それは。僕なら4番アイアンです。どんなに気合いが入っても6番で230ヤードはいかない。でも、近づきたいとは思いますね。
時松:それでトレーニングとかやってるからね。
稲森:きっといける。僕なんか、「ここはクリーク(5W)でいいよね」ってキャディに確認したから。感覚が完全にマヒ。
時松:それもゴルフ。4人で回ったら、面白そうだね。
~週刊ゴルフダイジェスト2022年11月8日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より