藤田さいきと鈴木愛の一騎打ちとなったエリエールレディスは、藤田が競り勝ち、11年ぶりの優勝を果たした。手に汗握る展開で見ごたえのある試合だったのだが、エリエールレディスは毎年、優勝争いとは別に、賞金女王争いとランキング50位以内の選手に与えられるシード権争いに注目が集まる(今年はメルセデス・ランキングに一本化)。

2022年の初シードは11人

今年は、前週の伊藤園レディスで山下美夢有が早々と年間王者を決めたため、今大会の注目はシード権争いとなった。メルセデスランク50位前後にいる選手はもちろん、それより下の選手は一発逆転を、上にいる選手はシードを守ろうと必死に戦う(もちろん、普段の試合でも必死ではあるが)。昨年で言えば、エリエール開催前までシード圏外だった柏原明日架が同大会で2位に入り、逆転でシードを獲得した。一発逆転は夢物語ではなく、十分起こりうる。そんな選手の思いがひしひしと伝わってきて、そのせいか、会場には少し重たい空気が流れていた……。

結果的には、今年は大逆転でシードを獲得した選手はいなかった。しかし、初シードが11人、福田真未、川岸史果、永井花奈、金田久美子といった優勝経験のある選手(金田は今年復活優勝を果たした)が、復活シードを決めた。逆に、20年もの間シードを保持してきた韓国のイ・チヒや通算14勝の有村智恵などがシードを失うことになった。

来季の出場権を決めるQTへの戦い

そしてもうひとつ、あまり知られていないが『ランキング70位』という数字もまた、選手たちにとっては、非常に重要な役割を担ってくる。これは、来季の出場権をかけた戦い『クォリファイングトーナメント(QT)』にファーストステージから参加するか、ファイナルステージから参加するか、というボーダーライン。もしファーストから出場するとなると、11月22日から戦わなければいけないというハードスケジュールに加え、ファイナルへ進める人数もかなり限られているため、渦中の選手たちにとっては、なんとしても避けたいという思いが強くなる(ちなみに、22年シーズンにシードを保持し、今回シード落ちになった選手はファイナルから参加となる)。

エリエール開催前、70位に位置していたのは、昨年シード権を失った吉本ひかる。

画像: エリエールレディス30位タイでフィニッシュした吉本ひかる

エリエールレディス30位タイでフィニッシュした吉本ひかる

「今年は開幕から予選落ちが続き、なかなか思うようなゴルフができなかった。でも、中盤から徐々に感覚がよくなってきて、成績も出てきたので、不安はありません」と話していた吉本は、見事予選を通過し30位タイでフィニッシュ。ランキングは68位でファーストを回避し、ファイナルQTから参加することになった。試合後、改めて吉本に電話で話を聞いた。

「ファーストから参加するのは絶対に嫌でした。もちろん不安はありましたが、予選を通るように、自分のプレーに集中していました」(吉本)

画像: 吉本ひかるはQTファイナルから2023年シーズンの出場権を挑む

吉本ひかるはQTファイナルから2023年シーズンの出場権を挑む

当然、本来はもっと上でプレーしたいと思っているだろうが、吉本は現実もしっかり受け止めていた。

「昨年の終盤くらいから、結果が出なくなりました。オフの間、もちろん練習はしたし、ある程度自信を持って今シーズンに挑んだんです。でも、前半戦はまったく結果が出なくて……。でも、自分のやっていることを信じて、腐らずやり続けたら夏以降に少しずつ結果がでるようになってきて。気持ちの面でも、技術の面でも不安がなくなっていったんです。前半戦の状態から比べれば、よくこの位置(ランキング68位)にいられたと思いますし、よく持ち直したと思っています。成長を実感できているので、ファイナルも自信を持っていけます」(吉本)

ファイナルQTは11月29日から4日間、岡山県のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部で行われる。そこで35位以内に入ることができれば、来季のレギュラーツアーの出場はある程度確保できる。

優勝争い、女王争い、シード争い、そして“QT”争い。エリエールレディスは様々な立場の選手が、それぞれの思いのなか最後の場所でもあった。

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