時松 初めて一緒にラウンドしたのは、カッちゃんがアマチュアで出場した2018年の日本オープンの予選だよね。
桂川 僕が大学2年生のときでした。その年はブリヂストンオープンも出場させていただいたんですが、その3日目も時松さんと一緒で。そのときから、まだアマチュアの僕を「カッちゃん」と呼んで親しくしてくださって、嬉しかったです。日本対タイのフレンドシップカップでも同じチームでしたし、たくさんご縁をいただいて(笑)。
時松 今年のダイヤモンドカップ(大洗GC)でも最終日に同組だったね。最後のパット、惜しかった!
桂川 せっかく時松さんが「お先に」と打ってくれて、僕が入れれば今平周吾さんとプレーオフというパットだったのに、外してしまいました(笑)。がっくりしていたら、時松さんが肩を抱いて慰めてくださって。
時松 そのシーンがテレビに映っていたらしく、カッちゃんのおかげで僕、めちゃくちゃ好感度アップしたみたい(笑)。
桂川 悔し涙が出そうでこらえていたんですけど、最後は泣いちゃいましたね。それは悔しかったというよりも、ファンの励ましの声がたくさん聞こえてきたからなんです。「次こそ頑張れよ!」という声が多かったですし、先に涙してくださっているファンもいて。ああ、プロの世界のファンの方々って、ただ観戦しているんじゃなくて、選手と一緒に戦ってくださっているんだなと、感動して涙が出てきてしまいした。
時松 僕はそんなカッちゃんの涙を見て感動していた。だって、プロゴルフでもプロ野球でも、負けて涙するっていう選手、あまりいないでしょ。だけど高校野球は泣くよね。その必死さ、真剣さが俺は好きで、高校野球のファンなんだ。だからカッちゃんの涙には、グッときた。
桂川 時松さんに慰めていただいて切り替えられました。時松さんも最終日最終組で優勝のチャンスがあって、悔しかったかもしれないなかで、後輩の僕に優しい声をかけてくださって。ほんと人間的に素晴らしいと思えましたし、泣いちゃダメだと。
時松 そんなふうに言われると、また好感度アップしちゃうじゃん(笑)。
桂川 同組で時松さんのゴルフを拝見していると、すごく勉強になるんですよ。自分も同じフェーダーですが、球筋の安定感がハンパないんです。プロってこういうレベルなのかと、自分もどんな状況でも同じ球筋で打てるようになろうと思ってやってきました。
時松 いえいえ、今年は賞金ランキングでかなり上にいかれているし(桂川4位、時松17位/11月23日現在)、見習わなければならないのはこっち。ISPS HANDAでの初優勝もおめでとう! あのときは恒例のペットボトルでの祝福がなかったんだよね。
桂川 そうなんです。試合後のイベントがあるので先輩方に気を遣っていただいて。でも、大雨が降り出したので、どうせ濡れちゃいましたけど(笑)。
「カッちゃんのフェードはスーッと上品に伸びていくイメージ」(時松)
時松 星野陸也プロとの争いになったけど、3日目の9バーディという爆発力がカッちゃんの魅力だよね。
桂川 そう言っていただけると嬉しくはあるんですが、その3日目、9バーディを取った代わりに、9番で左にひっかけてOB寸前で。他にも、11番と17番も危なくて、3つもボギーを叩いちゃいました。安定感は、自分の課題ではあります。
時松 そうは言っても、いつも調子を保てるゴルファーなんて、プロとはいえ、そういない。カッちゃんはこのままバーディを狙っていく積極的なゴルフでいいんじゃないかな。それに、カッちゃんのフェードは、僕が見ていて「上品だな~」と感心してる(笑)。
桂川 フェードに上品とか下品とかあるんですか(笑)。
時松 あるよ。今も憶えているけど、瀬戸内海GCの10番、左からのすごい強風で、僕は低い球でなるべく曲がり幅を減らして早く地面に落としたかった。それなのにカッちゃんは、左のカート道方向に高い球を打って、風に乗せたよね。そしてフェアウェイへ。あれを見て、上品だな~って(笑)。
桂川 ミズノオープンの予選ですね。風を計算して、こんな感じかな、と打っただけなので、もちろん自分では上品だとは思ってないです(笑)。
時松 いや、計算ができて、その通りに打ててフェアウェイに置けるところが上品です。あのショット、今年見たフェードのなかで、僕は一番好きだな。
桂川 フェーダーの時松さんからそんなふうに言っていただけるなんて、すごく嬉しいですし、自信になります!
※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月6日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より