今年の7月の大会で150回目を迎えた全英オープン。1860年に開催された記念すべき第1回の開催地がプレストウィックGC。1851年に開場すると、1860年10月17日の第1回を皮切りに12回連続、全英オープンの舞台となる。1873年からはセントアンドリュースオールドコースとマッセルバラを加えた3コースでのローテーション開催となるが、1925年まで通算24回にわたりプレストウィックで開催された。このプレストウィック最後の全英オープンを観戦していた日本人がいた。伊藤長蔵である。
前年の24年に甲南GCの代表として日本ゴルフ協会(JGA)の創設に参画した伊藤は、この年の2月にコース視察とゴルフ行脚のため渡英。ロンドンでは英文のレッスン書を出版すると、6月24日夜にロンドンを発ち、翌朝プレストウィックに。コースに着いたときはすでに1日目が始まっていたが、15番ティーイングエリア脇でしばし観戦。昼食を食べにコースを離れ、街中に行った際には、近くで開かれていたゴルフフェアにも足を運び、クラブを数本買ったという。午後はブラインドホールの起源といわれ、グリーンの手前に小高い山がある有名な17番「アルプス」の山の上から定点観測。翌日は地元の人を真似て弁当を持ち込み試合を観戦。ジム・バーンズの優勝を見届けた。さらに、全英オープン2回、全英アマ4回、全米アマ1回優勝という記録を持つレジェンド、ハロルド・ヒルトンの紹介状を持っていたためクラブハウスに入り、クラレットジャグの授与式も見ることができたという。
伊藤はその年の秋に帰国すると、翌年、日本で初めて行われたオープン競技、関西オープンに出場し、6位に入賞している。
※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月20日号「ニッポンゴルフ初物語」より