シニア入りの数年前に発症したという腰痛も相まって、かねてから飛距離低下を感じていた塚田に衝撃を与えたのは海外シニア選手の飛距離。
「ハリントンなんてすごかったですよ。310Yくらいコンスタントに飛ばしてくるんだから……」
もともと腰痛に悩まされていた塚田は去年1月、腰の治療にと同い年の篠崎紀夫が通っていた整形外科へ通い、そこで治療やトレーニングを行っていた。
「昨年はせいぜい270Y」という平均飛距離が10Y近く復活したが、今はさらなる飛距離アップを目指しているという。一体なにを変えたのだろう。
「自分の体を見直したことで結果的に効率の良い動きになりつつあります。以前は左右にスライドしながら打っていましたが、今は足を使って踏んで蹴って、スライドすることなく回転できるようになってきました」
以前は全く"足"を使えていなかったという塚田。上半身の力に横方向の動きを織り交ぜることで出していた以前の300Yは、効率的ではなかったというわけだ。今は下半身がエンジンとなり、回転スピードを上げている。
回転運動の原動力である"力の出し方"が根本的に変わったという出来事には、塚田の大きな気づきがあった。
まず指摘されたのが"姿勢と歩き方"の悪さ。これがスウィングの回旋不足と足を使えない原因だったという。
「初めて見たとき、塚田プロは猫背で、さらに歩くときに足裏を外側から接地していました。腰の治療と並行して、これら"体のゆがみ"をリセットする必要がありました」 と松田祐弥先生(季美の森整形外科・理学療法士)。
「猫背が回旋を妨げ、足裏が外から着く癖がスライドの元凶になっていると言われました。確かにシニア入りした頃、よく同僚から『塚田、全然回ってないぞ!』なんてからかわれていました。足裏をきちんと地面に着けていなかったことが左右にスライドする原因だと言われたことにもハッとさせられましたね」
以前はそれでも飛ばすことができていたが、加齢とともに柔軟性が落ち、次第に腰へ負担がかかり、それがシニア入り直前に爆発したというわけだ。昨年2月からやり始めたトレーニングにより、今はほぼ改善されているという。
歩き方は個人差があるが、姿勢に関しては塚田に限った話ではない。日常には姿勢が悪くなる要素がたくさんある。回旋量が落ちたと感じる人は多いだろうが、それは加齢だけが原因ではないのだ。
これまで「全然足を使えていなかった」という塚田の回転エンジンが下半身主体となった変化は大きい。プロ生活23年目にして大きなチェンジに踏み切った理由は、やはり海外の試合で結果を出したいから。そのためには回転速度アップは必須だった。
「当初は力の出し方が全然違うことに戸惑いましたが、だんだんそれが自分の中で理解できるようになってきて、今年あたりから効果が表れ始めました。さっきも言ったように、それまではテークバックで右へ、切り返しで左へスライドするのが癖。回旋量不足をこの動きで補うスウィングをしていました」
以前、計測器で踏み込む力を測ったところ、数値が0に近かった塚田だが、今はしっかり踏んで蹴ることができるようになったという。
「テークバックは左足で蹴って、右太ももの内側でこれを受け止めることでスライドせず、切り返しは右足で蹴り、左太もも内側で受け止める。どちらも大切で、特にテークバック側で受け止められないと、切り返しでスライドしやすくなってしまうんです」
ポイントとなるのは母趾球で地面をとらえること。「"足裏の内側"で踏めないとそもそも蹴ることができません。以前は外側で踏もうとしていたから地面に圧を与えられていなかったんですね」
足が使えるようになったことで、スウィング中の"力の出し方"に、徐々に変化が表れ始めた。(後編に続く)
※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月20日号巻頭レッスン「歳に負けない"アンチエイジング"の飛ばし方 塚田好宣」より一部抜粋