今年のカシオワールドで、ぶっちぎり優勝を遂げたチャン・キム。ツアー事情に詳しい佐藤信人プロが、チャン・キムのゴルフの魅力を語る。

終盤戦のカシオワールドで優勝したチャン・キム。昨年は師匠のデビッド・イシイ以来、アメリカ人として34年ぶりに日本ツアーの賞金王に輝きました。デビッドさんの縁で15年から日本ツアーに本格参戦、以来国内メジャー2勝を含む通算8勝。日本で育ち、強くなった選手のひとりと言っていいでしょう。

賞金王をみやげに、今年はPGAのカードを取りに行った年でした。年始にはスポンサー推薦でソニー、アメックス、ペブルビーチ、プエルトリコに参戦しましたが、予選通過したのは半分。出場できたマスターズ以外のメジャー3試合も予選落ちで、層の厚さに跳ね返された形となりました。ZOZOチャンピオンシップでの15位などもあり、入れ替え戦には進めましたが、3試合中2試合で予選通過するも、いずれも50位台でツアーカードを手にすることはできませんでした。

1年を通じてのチャン・キムの落胆ぶりは、想像に難くありません。ここ数年はPGAを見据え、日本ツアーで世界ランクを上げ、賞金王も獲得し、満を持しての挑戦でしたから、相当なダメージを受けたはずです。しかし9月の入れ替え戦から少しの休養を取り、日本ツアーに復帰したのがバンテリン東海から。以降、8試合すべてで予選通過、32アンダーでぶっちぎり優勝を遂げたカシオワールドを含む、ベスト10フィニッシュ6試合という安定ぶりです。その間、11月にはコーンフェリーツアーのQスクールのために渡米。2位に入り、開幕戦から12試合の出場権を獲得しました。ちなみに1位はフルシード権が与えられますが、1打及ばずの2位。しかし落ち込む暇もなく来日し、水曜日にはVISA太平洋マスターズに参戦。すぐに切り替え自分のゴルフを立て直す能力こそ、彼の魅力かもしれません。常に母国PGAツアーに行くという、高くてブレない目標があるからでしょう。

チャン・キムが日本ツアーでデビューした15年は、ボクが解説者になりたての頃でした。韓国系の強い選手が、毎年のように来ていた当時、彼もそうかと思っていたのですが、調べてみるとアメリカ国籍で、名門のアリゾナ州立大の出身。ハワイやアリゾナ州アマも獲った実績があり、アリゾナ州立大1年時にはポール・ケーシーを抜き、同大史上5番目の平均ストロークでした。それだけの選手であれば、PGAツアーで活躍することは当然の目標であるはずです。

当初はその飛距離に驚かされましたが、ある意味〝飛ぶだけの選手〟。その後、ショートゲームにも磨きがかかり、今シーズンは日本ツアーにおいて平均パット1位で表彰もされました。紛れもなく日本で育ち、日本で強くなった選手。カシオワールドでは、チャン・キムとの記念写真を願う何人もの若手の姿が見られ、その人柄で人望も厚いです。

「来シーズンも日本ツアーに戻ってくる」と言っていますが、展開によっては、アメリカで根を下ろす可能性も。ぜひPGAのシード選手として〝凱旋帰国〟してもらいたいものです。

画像: 「スウィング改造などを経て、ドライビングディスタンスもフェアウェイキープ率も両方を上げることに成功した希有な選手だと思います」by佐藤信人(撮影/姉﨑正)

「スウィング改造などを経て、ドライビングディスタンスもフェアウェイキープ率も両方を上げることに成功した希有な選手だと思います」by佐藤信人(撮影/姉﨑正)

※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月27日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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