小祝さくらの“ゴルフ辞書”に「アメリカ挑戦」は今のところ、ない。2022年11月初めに行われたTOTOジャパンクラシックで優勝争いに食い込み、インタビューで「米ツアーなので気合が入りますね」と話をしたあと、「勝ったらアメリカツアーに挑戦しますか?」と聞かれ、「行きません」と即答して周りを爆笑させた。「英語と食事が……留学はしたいんですよね。語学留学とかホームステイとか。そういうのに憧れますけど、ゴルフではないです」
海外メジャーには挑戦したいと思っているし、全英女子オープンに参戦した。2022年の1勝目となったリゾートトラストレディス優勝後すぐ渡米し、全米女子オープンではしっかり予選を通過、すぐに帰国するという強行スケジュールだったが、「行ってすごくよかったなと。前の週に優勝できると思ってなかったので、その流れで本当にいいタイミングで行くことができました。けっこうハードスケージュールのなか行ったので、疲労や時差ボケはあったんですけど、意外とそこもクリアできたのでよかったのと、海外のコースや、試合の雰囲気も、向こうでしか味わえないような経験ができました。あとはもっとこうしていかないといけないという課題も見つかったりしました」どういう課題が見つかった?
すごく頭を使った一週間のアメリカ参戦
「たくさんあるんですけど、やっぱりマネジメントですね。海外のグリーンはアンジュレーションが
すごくて、でも砲台で、スピードはそんなに速くはないですが、難しいところにつけたら大叩きにつながる。考えて打たないといけない。決勝ラウンドは特に風などの対応の仕方にも苦労しました。とにかく何でもポンポンとショットを打つわけにはいかない。次を考えて打たないといけないので、そこまでに残す距離など、頭をすごく使った一週間でした。昔はピンの近くまで行けるだけ行こうという感じだったけど、全米ではそれをやるとすぐダボやトリになる。ちゃんと自分で考えて、いいほうにしっかりと選択しなくちゃいけない」
堅実なさくらは、メジャーの舞台を、自分を成長させるための場所として考えて行動しているのだ。
それに、そもそもさくらは、アメリカを特別なものだとは思っていないのかもしれない。TOTOのとき、苦手だという英語に“かぶれ”てみた。最終日に荷物を詰めながら、同期の渋野日向子と「See you!」と言い合っては楽しんでいた。こういう雰囲気ならばきっと、アメリカでも平常心でプレーできるに違いない。スポット参戦でも大きなことをしでかしそうな小祝さくらなのである。
こいわい・さくら。1998年北海道生まれ。ニトリ所属。8歳でゴルフを始め、17年のプロテストで合格。19年初優勝、昨季は5勝、2022年は2勝。つねに「黄金世代」を引っ張る存在。「私が連載なんて、自信はないですが、普段通りで行きます」
2022年週刊ゴルフダイジェスト12月13日号より(写真/大澤進二、イラスト/オギリマサオ)