PGAツアーのスターダムにのし上がるための第1ステップは下部ツアーであるコーンフェリーツアーのQスクールから始まります。11月にジョージア州サバンナで行われた同ツアーのQTファイナルステージで、トップ40に入った者のみに来シーズンの出場権が与えられ、華やかな舞台への第一歩を踏み出すことが許されます。PGAツアーで活躍する選手のうちおよそ8割がコーンフェリーツアーの出身。若手の登竜門といわれるゆえんです。現状(来年度からシステム変更)ここをクリアしなければ次のステップに進めません。母国を離れて米ツアーを目指すインターナショナルプレーヤーにとっては、家族から離れて旅をする精神的&経済的負担が頭痛の種。コース以外の心配事でプレーに集中できない場合も多いのです。
アルゼンチンのA・トスティはプロ転向後、挫折の連続
アルゼンチン出身のアレハンドロ・トスティにとって下部ツアーの切符を手にするまでの道のりは挫折の連続でした。アメリカの大学を卒業して18年にプロ入りしたものの、コロナ禍で転戦もままならず、ラテンアメリカツアー(3部ツアー)でコツコツと実績を重ね、今年ようやくコーンフェリーQスクールのファイナルに進む権利を獲得しました。家が貧しかったため遠征費の工面も大変で、家族を試合に帯同する余裕もない。彼にとって夢の実現には大きな苦労が伴いました。「自力で経済的な問題を解決するのは本当に難しかった」と話します。
自家用ジェットで旅をし、スウィングコーチ、メンタルコーチ、トレーナーを雇い、大企業とスポンサー契約をして華々しくPGAツアーで戦う選手はほんの一握り。多くはトスティのように遠征費をやりくりし、次はどの試合に出られるか? と職場の確保に奔走しているのです。「壁を乗り越えてコーンフェリーの切符を手にできたので、これからもやるべきことに集中してPGAツアーを目指します」とトスティ。しかし、QTを突破しても出場できるのは序盤の8試合のみ。そこで結果を出しリランキングで上位に入り、出場権を自力で確保しなければなりません。
厳しい道のりに挑んだ選手のなかには日本人もいます。国内ツアーで優勝経験のある大西魁斗選手。次回は彼の物語をフィーチャーします。
2022年週刊ゴルフダイジェスト12月27日号より(Arrange/Mika Kawano)