時松 カッチャン、今年の全英オープン、出場できたことはやっぱり嬉しかったでしょ?
桂川 プロに転向してまだ1年と少しでしたし、しかも今季のツアー開幕戦シンガポールオープンで日本勢最上位の2位に入れただけでも嬉しかったんです。最終日は4位から出て3バーディ、ボギーなしで3つ伸ばせたことで、よくやれたなと。そうしたら、上位4人に与えられる全英オープン出場権まで獲得したらしいと。こんなに早くメジャーに出場できると思っていなかったので、幸せだなって。
時松 僕もシンガポールオープン、ぜひ出場したかったんだけど、コロナ禍の関係で入国許可が下りなかった。残念!
桂川 時松さんや多くの日本人選手が出られませんでしたから、みなさんが出場されていたら結果は変わっていたと思っています(苦笑)。
スタート前は、夢の舞台で「予選通過して少しでも上位に行きたい……」と
時松 また好感度上がる発言だなあ(笑)。そう、出場できていたら僕が2位だった、って自分で好感度下げちゃったよ(笑)。それは冗談で、カッチャンはよく頑張った。しかも今年の全英は150回目の記念大会で「聖地」セントアンドリュース・オールドコースで行われた。すごいご褒美だよ。
桂川 そんな情報、僕は事前にまったく知らなくて(笑)。もちろん、セントアンドリュースは初めてでしたから、行ってみると、まず雰囲気が独特の厳かな感じで、コースもリンクスで、日本では味わえないなあと。ゴルファーなら一度は行きたい場所ですし、きっと自分のゴルフ人生のなかでもいい思い出になると。入ったその日から、夢のなかにいるようでした。
時松 僕が初出場した2018年の全英はセントアンドリュースではなかったけど(カーヌスティ)、やっぱりあの全英独特の雰囲気は行った選手だけが味わえるものだよね。
桂川 そんな夢のなかへせっかく来させてもらえたので、予選通過して少しでも上位に行きたいと思っていました。初日は、ようやくこの日が来たかって感じで、ワクワクもありながら不安もあり、不思議な感じで。
時松 真夜中から早朝まで、僕はテレビ解説をさせてもらってカッチャンのプレーを見ていたよ。
桂川 練習ラウンドした感触では、「これはまずい、とんでもない難しいところへ来た。どれだけ大叩きするんだろう」と不安しかなかった。ヤバいぞ、せめてビリにはならないようにと、そればかり思ってしまって(笑)。だから初日は開き直って、もう目の前の球を打つことしかできないんだから、必死に行くぞって自分を鼓舞して。
時松 ところが出だしからいきなりよくて、これはカッチャン行けるなと、眠気を吹き飛ばしてくれたよ。
桂川 5mくらいの風のなか、1番パー4で5mのパットを沈めてバーディ発進できました。結局、1アンダー、71で松山さんと並ぶ日本勢最高位の35位でスタートできました。
時松 2日目はさらによくて、5バーディ、1ボギーの68と4つ伸ばして。ホールアウト時点で首位に4打差の12位タイに浮上して、決勝ラウンド進出が確実になった。世界のトップ選手たちとプレーしてみて自信になった?
世界との差は「パターとアプローチ」。経験と課題を手土産に帰国した
桂川 メキシコのエイブラハム・アンサー選手と同組だったんですけど、パターの上手さにびっくり。周囲にはテレビで見ていた世界のトップ選手もたくさんいて、だけどそれにビビってしまうのではなく、実際に場の空気感を肌で感じて、いつかは自分もここにいるのが当たり前というような、この一員になれるようになりたいと思いました。だから今年は結果を出すというより、しっかり経験と課題を得て帰りたいなと。
時松 でも結果もしっかり出して。初出場でいきなり決勝に進出して47位タイは立派。課題は得られた?
桂川 アプローチで世界との差を実感させられました。彼らはいろんな寄せ方を身につけていて、しかもときには狙ったチップインも見せる。僕にはまだまだ。2打目のフェアウェイの傾斜も微妙で、そう簡単に寄せられない。それをトップ選手は簡単に打っているように見える。
時松 テレビじゃ見えない傾斜がたくさんあるよね。僕もやっぱり全英でアプローチの重要性を再確認した。パターで乗せている選手の選択を見て不思議に感じるけど、その場にいると、ウェッジじゃ無理だというところが多々あるもんね。
桂川 そうなんです! だから帰国してから、アプローチ、セントアンドリュースを想定して必死に練習しています。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月3日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より