年間女王・山下美夢有がコレで2勝
100分の1ミリ精度の削り出し
最初に追跡するのは、2022年の年間女王・山下美夢有が使った「スクワッド」プロタイプパター。元々の本業は、大阪でコンセプトカーやあらゆる製品のプロトモデルを製造する会社(リアライズ株式会社)。ただし、近年は海外を含めた価格競争が激化し、いいモノを作るだけでは仕事にならないという憤りを感じていた。ただし、「一点モノを設計から最後まで作る能力・技術力はどこにも負けない」という自負があり、自分たちのオリジナル製品を作ろうという夢に向かって独自にパター製作を始めた。
2021年秋、吉田さんが近くの寝屋川市にゴルフの練習へ行ったところ、同じ練習場で山下美夢有が練習していた。知り合いのコーチの紹介で、自分たちが製造したパターを手渡したところ、翌日、両親が会社を訪れた。様々なモデルを提供したところ、その週の試合でいきなり使い始め、直後の日本女子オープン、伊藤園レディスで使用し、7位タイと6位という好成績につながった。
2022年の開幕戦も使用したが、山下本人の「マレット型が使いたい」という要望から研究・開発を進めた。既存品にはない、独自の機能性と美しさを求めて試行錯誤し、9月頃にようやく原型が完成。急いで持参すると三菱電機レディスの練習ラウンドで使用、そのまま試合に投入した。
山下の活躍で問い合わせも多いが、いつオーダーが入るかわからない本業のこともあって数多くの注文は受けられない。それでも「パターで儲けるつもりはありません。使ってもらって、喜んでもらえる。ユーザーの声が聞けるので、本当に楽しいんです」(吉田さん)。
本業は試作品製作を手掛けるモノ作りメーカー
コンセプトカーやプロトタイプの部品など、試作品の設計・製作が本業。製品化されたもの以上に精度が必要とされ、100分の1ミリの誤差があるだけで納品することはできない。そこで培った技術が生かされ、寸分たがわぬ精度で削り出されるパターは性能を100%発揮
シャフトを曲げる機械も自社設計&製作
どうやったらダブルベントのシャフトにできるか考えていたとき、YouTubeでピンゴルフの曲げ方を見て、自分たちで機械を設計して製作。見た物を思い通りに作れるのも経験と技術の賜物
現在はブレード型のみ来年マレット型を発売
現在販売しているのは2021年の秋から2022年の春にかけて山下が使用したブレードタイプのみ。山下が2022年終盤に使用したマレットタイプは、山下が使用した原型をさらに改良して2023年2月頃に製品化する予定。ネックやフェースのミーリングなど試作を繰り返し、プロやアマチュアが試打。研究を重ねて、より良いものを取り入れる。大量生産はできないが、その分、思いが詰まっている。
金田久美子が使用して優勝争い
ゴルディロックス
ボールと同じ高さの円筒状のふくらみが特徴
「ずっとゴルフクラブを作りたいと思っていたのですが、技術者だけに個人でドライバーを作るのが難しいことはわかっていました。でもパターは『なんでこういうモノがないんだろう』と、かねてから感じていたんです。その頃から今のモデルに近いイメージを持っていたので、イチから作ってゴルファーに届けたいと始めました」と堀口さん。流行に乗るのではなく、魅力あるオリジナル製品を作り、使い手を楽しませるパター作りを心掛けている。
SNSの口コミで人気が広がると、金田久美子がキャディの薦めで使い始めた。彼女が使っていることは本人のインスタを見て初めて知ったという。現在、新しいモデルを製作中。
3D CADを使って詳細にデザイン
大学でゴルフを始めた堀口朋徳さん・佳徳さん兄弟が起業。自動車設計に15年ほど携わり、そこでデザイン設計を学び、その技術をゴルフに生かしたいとパターの設計を始めた。拠点(三重県・ナリーズ株式会社)では設計などが行われ、部品は海外発注、組み立ては関東の工場で行っている
3Dプリンターで試作品を製作
設計後、各部品を3Dプリンターで作り試作品を製作。実際に手にしてみることで見た目や機能面でさらに改良を重ねていく。コストを最小限にするため、ネット販売が中心
プロが選んだガレージブランド
北海道発ワールドクラフトデザイン
航空部品製造の技術をパター作りに生かす
社長(株式会社ワールド山内)のゴルフ好きが高じて自らパターブランドを立ち上げた。金属加工が主業で、その経験を生かし、独自の配合比率に調整したステンレスブロックから削り出し、形状から重心位置まで、とことんこだわって作られる。
小祝さくらが使用してリゾートトラスト優勝
地元が北海道北広島市という縁で昨年の夏から使い始め、2022年5月のリゾートトラストレディスでも使い、このパターで3勝目を挙げた。
メルセデスランク51位桑木志帆
地元・岡山のスポンサー企業が彼女のためにパターを製作開始
桑木のスポンサーはすべて地元岡山の企業。そんななか、金銭面以外でもサポートしたいと考え、国内ゴルフクラブメーカーのOEMも行う中原製作所がオリジナルパターの製作を開始。現在プロトモデルを製作中で2023年春に製品化予定。新ブランド「DELENA」はどんなパターになるか乞うご期待。
現状、桑木が使用するか未定。「パター売上げのインセンティブが、桑木プロに入るようにできれば、ツアー転戦のサポートにもなる」と中原会長は経営者らしい考えを持ってパター作りに勤しんでいる。
週刊ゴルフダイジェスト2023年1月3日号より(PHOTO/Akira Kato、Takanori Miki、Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroaki Arihara)