2022年の松山英樹プロへの年末インタビューを担当してくれたのは、「義足のプロ」として障害者ゴルフ界を引っ張る吉田隼人プロ。PGAツアー8勝、世界のHIDEKIに質問は尽きないようで……時代が求める多様性ある”ダイバーシティゴルフ”を体現する対談になりました。

松山英樹(まつやまひでき)/1992年愛媛県出身。10年東北福祉大在学中にアジアアマで優勝し、11年のマスターズでローアマ獲得。13年にプロ転向し賞金王に。14年からPGAツアーに本格参戦、21年のマスターズではアジア人初のメジャー優勝を遂げる。米ツアー通算8勝
吉田隼人(よしだはやと)/1983年神奈川県出身。24歳のときバイクの大事故で右足を大腿部から切断。30歳でゴルフを始め、よみうりCCで働きながら、22年日本PGAティーチングプロB級取得。日本障害者オープン3連覇中

画像: 吉田隼人、松山英樹(PHOTO/Takanori Miki)

吉田隼人、松山英樹(PHOTO/Takanori Miki)

──2022年はどんな年でしたか?

吉田隼人 僕は30歳でゴルフを始めて今39歳。2022年はプロになった年でもあり、最初気合いが入っていたんですけど、ティーチングプロの大会に出て、自分の実力はまだまだだと痛感しました。だから悔しい1年でした。

松山英樹 僕はやっぱり、首のケガに悩まされ続けたので……3月くらいから今もですが。

吉田隼人 30代になって、体などの変化は感じますか?

松山英樹 30歳になったからというのではないですけど、変化は以前から感じていました。でも、ここまで長引くというのはなくて。原因が何かしらあると思うんですけど。でも最近、その原因がわかりそうな雰囲気が出てきたので、23年は上手くいくと信じています。

吉田隼人 今年、USGA主催の試合(全米アダプティッドオープン)に出場したんですけど、重い時差ボケになってしまって。本番でようやく体が全快して調子がよくなってきて、練習ラウンドよりドライバーが飛びすぎたり、逆に縦の距離感が合わなくなってしまったんです。

松山英樹 今の自分の飛距離なのか、時差ボケが取れて飛んでいるのかわからないと困りますよね。時差ボケの状態で距離感を作ったら重たい体のほうに合わせているので、軽くなったときにどれくらい飛ぶかという、そのときの距離感などを覚えておくこともすごく大事です。でも、試合でアドレナリンが出てきたらまた飛んじゃうから、それをどうコントロールするかということも大事。その調整の仕方は、自分で見つけてもらうしかないかもしれません。

吉田隼人 普段練習で意識していることと試合で意識していることの違いはありますか?

松山英樹 一緒です。今目指しているスウィングがあるんだったら、どうしたらそうなるかを考える。それにはここを意識すればいいんだとなったら、それを意識しながら試合にも臨みます。本当はよくない話なんですけどね、メンタルトレーナー的に言うと。でも僕はそうしてきたので、変えることはできない。自分が目指していることをどれだけ意識してやれるかどうかは、練習でも試合でも一緒です。

画像: 最初は左足1本で打つ練習をしたと吉田プロ。「でも体にかかる負担が大きいし筋肉バランスが悪くなる。長く競技を続けるため股関節やお尻などを鍛えました。義足を操作する部分をコントロールできるようになるとバランスもスウィング効率も良くなります」(PHOTO/Yasuo Masuda)

最初は左足1本で打つ練習をしたと吉田プロ。「でも体にかかる負担が大きいし筋肉バランスが悪くなる。長く競技を続けるため股関節やお尻などを鍛えました。義足を操作する部分をコントロールできるようになるとバランスもスウィング効率も良くなります」(PHOTO/Yasuo Masuda)

吉田隼人 後輩たちの活躍はどうですか?「松山チルドレン」なんて言われてます。

松山英樹 すごいことですよね。でも僕と比べたらかわいそう。彼らは彼らなりの思いを持ってやっている。彼らに目指されるような感じではなく、僕は僕で進んでいきたい。彼らは彼らで自分が思う方向に行ったほうがいいんだと思います。僕がアドバイスして変にとらえられても困りますしね。

吉田隼人 そうなんですね。僕は誰かの目標となるよりは、こういう道もあるということを示していきたい。障害者でもプロゴルファーになれて、世界でも戦えると。僕はパラリンピックの選手を観て、そんなに悲観することなく、勇気をもって足を切断できました。逆にゴルフという種目に関しては、僕が活躍することで今まで多くの方に勇気をもらったぶんを自分が返したいんです。

※この続きは12月27日(火)発売の週刊ゴルフダイジェスト1月10・17日超大号で、ぜひ読んでください。

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