4勝を挙げ賞金王を獲得した成績が評価され、マスターズの招待状が届いた2022年国内男子ツアー賞金王の比嘉一貴。みんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が比嘉のゴルフを振り返る。

2021年8月の「セガサミーカップ」を現地で取材した際に、優勝した比嘉選手は「僕が賞金王になったら夢ないですか?」と語り、158センチの小兵がとても大きく見えたことがよみがえります。22年の年間女王に輝いた山下美夢有選手も150センチと小柄ですが、二人に共通するのは抜群の安定感でした。

沖縄育ちの比嘉選手のプレーは、弾道の高低を操って簡単にはボギーを打たない、パーキープ率(パーかそれより良いスコアを獲得する率)1位という安定感抜群のスタイルです。それでは27歳にして開花したスウィングを見てみましょう。

一番の特徴は右手を下から握り、左手の甲が正面から見えるストロンググリップです。フェースを開かないようにテークバックし、フェースを閉じながら打たないインパクトで方向性を確保しています。シンプルではありますが、飛距離を出すには体力が必要になるので、どれだけトレーニングを積み重ねてきたのかが見えてきます。

画像: 画像A 右手は下から握り、左手の甲が正面から見えるストロンググリップ。フェースの開閉を少なくし方向性を確保する(写真は2022年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ)

画像A 右手は下から握り、左手の甲が正面から見えるストロンググリップ。フェースの開閉を少なくし方向性を確保する(写真は2022年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ)

ドッグレッグして落下地点が見えずらい狭いホールや強風時には、超低空飛行のドライバーショットでフェアウェイをとらえます。堀川未来夢選手もティーショットで3Wのスティンガーを多用しますが、絶対の得意技を持っていることがコースマネジメントや優勝争いの中での強さに結びついています。

弾道の高低を打ち分けるプロの技は、インパクト時のロフト角のコントロールや打点の位置によるコントロールがあります。マイナス入射角のダウンブローで打てばロフトは立って当たるため低い弾道になります。但し、スピン量が増え過ぎるリスクもあるので、短く持ったり、ボール位置や重心位置などを工夫して適度な入射角に調整しています。

画像: 画像B 短く持って距離と弾道を操りながらピンを攻める比嘉一貴(写真は2022年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ)

画像B 短く持って距離と弾道を操りながらピンを攻める比嘉一貴(写真は2022年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ)

ドライバーでは、フェースの下目でヒットすると、フェース面に付けられたロールの効果もあり弾道が低くなります。入射角や打点のコントロールといった高度な技術を駆使して、硬く速いグリーンのシビアなピン位置を攻めているのです。

昨年はマスターズの現地取材に恵まれ、コースを隅々まで見て来ましたが、左足下がりから打ち上げてグリーンを狙ったり、カップのある段を外すとピンから離れていってしまうピン位置など、難しいと感じる要素が全ホールに散りばめられていると感じました。初出場のオーガスタで比嘉選手がどんなプレーを見せてくれるのか、今からとても楽しみです。

「僕が賞金王になったら夢ないですか?」まさにその通りの姿を見せ、多くの人に夢と勇気を与えてくれたことでしょう。23年の活躍も期待したいです。

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