寄せのポイント① アプローチで使うクラブはドライバー以外のすべての番手!
「転がしたり上げたりするのはクラブがやってくれるもの。技を意識するからミスも出るし、距離感も合わないんです」
“技”について聞いたところ、いきなりのカウンターパンチ。
「アマチュアの方を見ていると、大抵が“当て方”に意識を向けすぎに感じます。あくまでも弾道を変えるのはクラブであって、自分ではありません」
そんな申ジエがアプローチで使うのはドライバー以外のすべての番手。少なくとも9番あたりから実際に練習してみて“弾道を覚える”ことは大切だという。
「私の場合、まず落とし場所を決めてそこへ落ちる弾道をイメージします。多くの番手でそのイメージを持つことができれば1つの打ち方でいろいろな状況に対応できるようになります」
女子プロ界の“技のデパート”の考えは意外とシンプルだったことに驚き。なにより大切にしているのは、毎回同じリズムや軌道で振ることだという。そして再現性を高めるために必須なポイントは、アドレスとグリップ、リズムの3つ。詳しく聞いてみよう。
寄せのポイント②アドレスは両足を閉じて、"飛ばない形"を作る
寄せのポイント③フォローまで頭を動かさないこと
どんな場面でも打ち方を変えず、一定リズムで打つことが大事だと言う申ジエ。そのために大切なことは何だろう。
「とてもシンプルですが非常に重要なのが“頭を動かさない”ことです。よくレッスンなどで『手だけではなく体も使う』ということを耳にします。それ自体は間違っていないのですが、体を使うことに意識が向きすぎて頭が動くのが一番ダメです。頭が動くとスピードも安定しないし、スウィングの再現性が下がってしまいます。頭を動かさずに打つことでリズムや軌道が安定し、結果、距離感も身についてくるはずですよ」
動いていないように見えて、上級者でも頭は意外と動きがちだと申。そのために必要になるのが、首の柔軟性だという。
「特に首の前側の筋肉(胸鎖乳突筋)の柔軟性が大事です。ここが硬ければ、テークバックでもフォローサイドでも体の回転に首が付いていってしまい、頭が左右へ動いてしまいます。普段から意識的に首の前をストレッチしておくことで、頭が動きにくくなりますよ」
これができればほとんどの場面に対応できると申ジエ。ほとんどということは、特殊な打ち方も……!? さらに聞いてみよう。
寄せのポイント④ロブショットの距離感は、
"スピード"を変えて打つ練習で出せるようになる
申ジエの真骨頂といえば、柔らかすぎるロブショット。これまでトーナメント中継で神技的なロブを見たことがある人も多いはずだ。あれ、真似したいです!
「難しいですよ~ (笑)。でも有効な練習法は一つあります。大きな振り幅で30秒以上かけ、ゆっくり振るドリルです。大事なのはスウィング中、腕と体、足を連動させること。手ばかり意識していると足が動きませんし、逆に足を意識すると手が置いてきぼりになるんです」
ではどこでリードする?
「体幹ですね。私は左わき腹で引っ張るイメージ。慣れてきたら実際に球を打ってください。たとえばサンドウェッジのフルショットが70ヤードなら、30ヤードくらいまで落とすことができれば、スピードコントロールができている証拠。ゆっくり飛ばせるようになるはずです」
寄せのポイント⑤スピンをかけたいときは、右手をかぶせる
最後にもう一つ、スピンのかけ方について聞いてみた。
「振り方はそのまま、右手だけ“かぶせる”ように握ります。これによって手の動きが変わり、右手をかぶせるとヘッドが大きく動くぶんヘッドが走り、スピン量も増えます。距離感は遊びながら覚えてほしいですが、本来アプローチの“技”は、遊びから覚えるものなんですよ」
1つの振り方で千変万化の弾道。できる気がしてきました!
(撮影/有原裕晶 撮影協力/太平洋C八千代C)
※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月24日号「申ジエさんに聞こう。魔法のアプローチ 実戦編」より