「23年に期待される選手のひとり」と佐藤信人プロが語る、アイルランドのシーマス・パワー。その経歴、ゴルフについて佐藤プロが教えてくれた。

35歳にしてキャリアのピークを迎えようとしているのが、アイルランド出身のシーマス・パワーです。22年の10月最終週のバミューダ選手権で、21年のバルバソル選手権以来のPGA2勝目を挙げました。続くワールドワイドテクノロジーで3位、RSMクラシックで5位。年末年始の中断を挟み、23年に期待される選手のひとりです。

ボクがパワーの存在を初めて知ったのは、16年のリオ五輪。同五輪は112年ぶりにゴルフ競技が復活したことで注目を集める一方、その前年に中南米で流行したジカ熱や治安への懸念もあって、世界ランキング上位選手の出場辞退が続出した大会としても話題を集めました。アイルランドも例外ではなく、ローリー・マキロイやシェーン・ローリー、グレーム・マクダウェルらが出場を辞退しています。そこで白羽の矢が立ったのが当時29歳のこの男。下部の(当時)ウェブドットコムツアーで初優勝を果たしたパワーまで出場枠が下がってきました。ボクも解説のために下調べするまでまったく知らない選手でした。 ただ、練習ラウンドを終えた大会前のコメントは記憶に刻まれました。その内容は、「五輪とか国の代表としての緊張の前に、ハリントンとの練習ラウンドのほうが緊張した」。07、08年に全英オープンを連覇し、08年の全米プロも制したパドレイグ・ハリントン。アイルランドの英雄であると同時に、メジャー3勝のレジェンドです。気持ちはわかりますね。

リオ五輪の翌17年にPGAツアーに昇格。しかし125位の壁を突破できず、ケガもあってなかなかPGAに定着とはなりません。そして21年、シード権争いのなかで、メジャーの裏の試合であるバルバソルで初優勝を飾りました。そして22年には初めてメジャーに出場。マスターズ27位、全米プロ9位、全米オープン12位と、全英を除く3試合で予選通過。21-22シーズンはフェデックスランクも43位とベストシーズンとなり、22-23シーズンには前述の通りツアー2勝目を飾りました。

出身はイーストテネシー大で、手嶋(多一)さんやレックス(倉本)の後輩です。ジュニア時代の成績からは、アメリカのスカラシップを受けられなかったのですが、もともと進学予定だったマキロイがプロ転向したことで、その代わりに、当時のコーチがイタリアでのジュニアの試合を見たときの印象でパワーを選んだのだそう。

さて、そのプロフィールでユニークなのが、ジュニア時代はラケットボールで世界のトップ選手だったこと。スカッシュのようなインドアスポーツで、スカッシュよりも短いラケットを使うそうです。またアイルランドではハーリングというホッケーのようなスポーツもやっており、左右両方で振ることもあって、ゴルフでも左打ちで300ヤード飛ばします。それでもゴルフの道に進まなかったら、会計士になる予定だったそう。異色プロの活躍に期待したいですね。

画像: 「パワーを形容する言葉は『ハンドアイコーディネーション』。視覚で得た情報に体が即座に反応する、いわゆる優れた運動神経の持ち主です」by佐藤信人(Photo/Getty Images)

「パワーを形容する言葉は『ハンドアイコーディネーション』。視覚で得た情報に体が即座に反応する、いわゆる優れた運動神経の持ち主です」by佐藤信人(Photo/Getty Images)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月24日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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