「まだ少し痛みはある」と大会前の会見で語ったシャウフェレ。「自分は練習をしすぎてしまう傾向があるので今回はできるだけゆっくり無理をしないように心がけている。逸る気持ちを抑えて我慢強く、やりすぎないことで、2度とケガをしないようにしたいと思っている」。
予選落ちなし。最下位でも日本ツアーの優勝賞金並みの約2600万円が支給されるビッグイベント(セントリー)で完走できなかったのだから余程のことがあったはず。しかし1週間治療に専念し挑んだザ・アメリカンエクスプレスでシャウフェレはいい意味で我々の予想を裏切るプレーを見せた。
圧巻だったのは最終日。首位を走るラームとトンプソンの8打ビハインドからスタートしたシャウフェレは553ヤードの5番パー5で残り225ヤードのセカンドショットを直接カップインさせたのだ。
アルバトロス!
ホール・イン・ワンより難しいといわれるダブルイーグル(アルバトロス)は、昨夏ステファン・イエーガーがジョン・ディア・クラシックの最終日に達成して以来の快挙で今シーズン第1号。
しかしシャウフェレの快進撃はこれだけではなかった。8番から5連続バーディを奪ったあと14番、16番もバーディでノーボギーの10アンダー62をマーク。8打あった差をみるみる縮めて優勝したラームに2打差の3位タイに食い込んだ。
手負いのトラは侮れないというがまさにシャウフェレに当てはまる。背中痛を抱えながら好プレーを見せた彼は耐えながら攻める極意を習得したのだろうか。東京五輪金メダリストのこれからが楽しみだ。
いっぽう優勝争いでは1打リードで迎えた最終ホールでラームはあわやチップインバーディかと思わせる相手のアプローチに一瞬ヒヤリとさせられたがきっちりパーで締めて優勝。「手強かった」と23歳のルーキーを称賛した。
昨年DPワールドツアーの最終戦(ツアー選手権)を制し、年をまたいで23年開幕戦のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズで年をまたいで2連勝。そして今回出場試合連続優勝を達成したラームは目下飛ぶ鳥を落とす勢いである。「勝ち続ければついてくる」という世界ランク1位の座も目前だ。
ラームにシャウフェレ、そして今大会ではジェイソン・デイやリッキー・ファウラーが復調の兆しを見せており、主役と脇役がしっかりとその役割を果たし大会は大いに盛り上がった。
冬来りなば春遠からじ。いまからメジャーが楽しみだ。