賞金が大幅増額。大会の格付けが上がった
今年の初戦セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズは、67ホールノーボギーでトップを走っていたコリン・モリカワをサンデーバック9でジョン・ラームが逆転というドラマチックな展開になりました。誰も予想しなかった結末に主役のラームでさえ「まさか優勝できるとは。クレージーな日だった」と驚きを隠せませんでした。
そう、スポーツは筋書きのないドラマです。最終日の12番から3連続バーディをマークしたあと、15番でとどめのイーグルを奪い、上り7ホールで6打差をひっくり返したラーム。ドラマが最高潮に達したとき、演じ手の情熱に支えられゴルフは純粋なエンターテイメントに昇華します。そして極上のエンターテイメントは紛れもない喜びの爆発を映すとともに、胸を締め付けるような敗者の苦悩をも映し出します。
なぜスポーツは、これほど人々の心を揺さぶるのでしょう? もちろんプロゴルファーにとって賞金は大きなモチベーションです。出場39名が賞金総額1500万ドル(約19億円)を分け合うセントリーでは、勝ったラームに破格の270万ドル(約3億5000万円)が支給されました。しかし、彼を駆り立てたのは賞金ではなくフィールドの厚さでした。
世界ランキング上位20名のうち1位のローリー・マキロイを除く、ほぼすべてのトッププロが出場した大会で勝ったからこそ価値がある。その価値を知っているからこそ、ラームは熱いガッツポーズを繰り出す最高のドラマを演じたのです。今年はセントリーを含む13の別格トーナメント(「エレベーテッドイベント」と呼びます)が開催されます。
初戦のセントリーで1試合、タイガー・ウッズがホストを務めるジェネシス招待をはじめとした招待試合やWGCなどの別格トーナメント11試合では賞金総額が2000万ドル(約26億円)に上ります。ザ・プレーヤーズ選手権は過去最高の2500万ドル(約32億円)に達してこれが1試合、これら合計13の別格トーナメントに、4大メジャーを加えた17試合中、トッププロには12~13試合の出場権が義務づけられます。つまりフィールドが分厚い試合が増えるということ。真のトップが勝敗を競うエキサイティングなエンターテインメントをPGAツアーは提供していきます。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月7日号より(Arrange/Mika Kawano、Photo/Blue Sky Photos)