古沢 コロナ禍でお仕事の仕方は変わりましたか?
古谷 まったく変わりましたね。以前は出演者全員が同じ日に集まり1つのスタジオで収録していましたけど、今は3人までしか入れない。時間をずらして次の3人が入ってくる感じです。僕たちは自分の出番が終われば帰れるので逆に仕事は早く終わる。
でもスタッフはそれらをミックスするので時間がかかります。それに先に収録する人は、他の人のセリフと演技をイメージしないといけないので大変かもしれません。
古沢 実は僕、声優の経験があるんです。自分の漫画がアニメ化したときに、ちょい役ですが、テレビのアナウンサー役をやらせてもらって。ほんの一言二言ですけど、本当に緊張しました。そのときは大勢でやっていたので、現在の収録の仕方は想像がつきません。
古谷 そんなご経験が! 今、声優の仕事を目指している方も多いですが、もちろん演技力が大事。でも一番必要なのは感受性でしょうか。喜怒哀楽を表現するので。自分がいろんな体験をしてきたものを役というフィルターを通して表現していく。
やはり、心が動かないものはどうにもならないので、そういう感覚は大切ですね。
古沢 体では表現できないですものね。
古谷 はい。動きも全部声で表現しないといけないから、そこは求められる。でも声優も最近はアイドル化してきているので、今はルックスも大事なのかな。
古沢 古谷さん、かっこいいですもんね。大スターです。
古谷 いやいや。僕なんか長いことやらせていただいているだけで。
古沢 声のケアはされますか?
古谷 僕は気を使わないほうですけど、一年中朝晩必ず薬を使ってうがいをすることを心がけていますし、午前中の仕事があるときは、前の晩の日本酒は一合までにしています(笑)。
古沢 僕が漫画を描くときに大切にしているのは、やはりキャラクターです。魅力がないと感情移入できません。ストーリーというよりはまずはキャラクターをいかに生き生きとさせるかというのをテーマに描いています。
古谷 僕たちの立場からすると、やはり原作ありき、ストーリーありき。キャラクターデザインは決まっています。
オーディションがあれば、イメージして声のトーンやしゃべり方を考えて演じますが、合格したらまた、その作品の世界観、キャラクターの環境などさまざまな設定のデータを自分なりにくみ取っていく。僕は台本にそういうデータをたくさん書き込むんです。年齢から人間関係など思いついたことを全部。
そしてキャラクターの動きや表情をイメージしながらセリフをしゃべってみて、声のトーンなどをだんだん決めていきますが、最終的にはスタジオで監督にもアドバイスをもらいながら修正していく。あとは共演者の声とのバランスもあります。似てしまうと面白くないですからね。
古沢 イメージが大切なんですね。古谷さんは声優をされていて、極端に声色が変わるわけではなくきちんと古谷さんの声はありつつ、『巨人の星』だとすごくアツいキャラクター、『カーグラフィックTV』のナレーションだと落ち着いた透明感がある感じで。まるで逆の使い分けがすごいなと。
古谷 ナレーションの仕事はまた全然違います。キャラクターは感情を表現して、いかに生き生きとさせるかがポイントですが、ナレーションは情報をいかに伝えるかなので、あまり自分の個性を盛り込んではいけないんです。聞いた人が心地良くなれるようにお話しする。
カーグラの場合は、たとえばラグジュアリーな車からスポーツカーまで、車の個性が伝わるように、テンポを変えたりソフトに話したりなど変化させています。
古沢 へえ! 奥が深いです。今後やってみたい役はありますか?
古谷 今後ですか……「イガイガ(『とんぼ』の五十嵐一賀、元プロゴルファー)」でしょう(笑)。
古沢 ははは。アニメ化したらぜひお願いします。とんぼ役はいかがですか?
古谷 それはさすがに(笑)。イガイガ、いいですよ。タイプとしても、年齢的にもあまりやったことのないキャラクターでチャレンジしてみたい。過去を引きずっているのも魅力です。一度挫折しているので、深みが出てきます。そういうところも面白いなと。
古沢 嬉しいですね。ほかにはありますか?
古谷 大恋愛作品もやってみたいですね。ラブストーリーとしては、『気まぐれオレンジロード』(春日恭介)や『美少女戦士セーラームーン』(タキシード仮面)がありますけど、もっと現代もので、ガッツリ大人のラブストーリーを。
古沢 聞いてみたいですねえ。ご自身の経験を入れますか?
古谷 ははは。でしょうねえ(笑)。
古沢 素敵です。夢があります。僕は『オーイ! とんぼ』で初めてゴルフ漫画を描いているので、こんなに楽しいのかと感じていて、もっと極めたいとは思います。あとはカーライフが好きなので、タイムスリップして昔の暴走族なんかを描きたいなと。
古谷 なるほど。昔の車がお好きなの、わかる気がするなあ。僕も車、大好きなんですよ。
古沢 でもイガイガの声、お願いしたいです。(1巻の、初めて島のコースを見たときのイガイガの一言をリクエスト)
古谷 「なんじゃあこりゃあ!?」
古沢 うわーすごい!
古谷 いきなりは大変ですね。でもイガイガはモノローグもたくさんありますね。こっちを話すほうがいいかな。(声に出す)
古沢 すごい!(拍手)キャラクターに血が通った。すぐにできるんですね、素晴らしいです。
古谷 僕、漫画を読みながら、声に出してセリフを言っちゃうことが結構あるんです。もし自分がやるとしたらどんなかなって。
そういえば昔のゲームって声がなくて吹き出しにセリフが書かれていたでしょう。あれも自分でしゃべっていましたから(笑)。『聖闘士星矢』で「ペガサス流星拳!」なんて言いながら。
古沢 それはいい企画ですよ。ユーチューブなんかでやると、バズります。今日はありがとうございました。今度ぜひゴルフでご一緒しましょう。
古谷 ぜひ教えてくださいね。
古沢 いえいえ、そんな。それより、声優のお仕事のお願いの時間になるかもしれませんよ(笑)。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月31日号「新春スペシャル対談 古谷徹×古沢優」より