昨年の全米女子アマを制した17歳の馬場咲希さん。そんな彼女を、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す!

O編 さて、これから連載を始めるわけだけど、まずは、昨年の全米女子アマを制した、教え子の馬場咲希さんについて聞いてみようかな。日本人としては服部道子さん以来、37年ぶりの快挙だもんね。コーチのわきゅうも忙しかったんじゃない?

坂詰 そうですねぇ。優勝した直後は、インタビューの依頼とかかなりありましたね。でも、知り合いの記者さん以外は、ほとんど断っちゃったんです。えへへ。

O編 え? えへへ、じゃないよ。なんでそういうことするかなぁ。

坂詰 え~。Oさんの取材は受けたじゃないですかぁ。

O編 いやいや、そういうことじゃなくてさ。他のメディアにも答えてあげなさいよ。ゴルフファンは気になるものだよ。ああいう大きな試合に勝った選手が、どんなコーチに、どんなこと教わってるか、とか。それに、わきゅうだって宣伝になるじゃない。

坂詰 んー。そうかもしれないんですけど……。もうこれ以上、教える人数増やせないし。とにかく、目立つこととか、知らない人と話すのとか苦手なんですよ~。ボク、テレビや雑誌によく出るレストランのシェフじゃなくて、山の中のポツンと一軒家でやってる、知る人ぞ知る旨い店の親父、みたいなのがいいんです。えへへ。

O編 なんのこっちゃ。教え子が大きな試合に勝ったんだから、ちょっとくらい表に出たっていいじゃない。おめでたいことなんだから。

和久 まぁ、そうですよねぇ……。でも、本音を言うと、あまりめでたくはないんですよ。

O編 ん? なんで?

坂詰 ああいう歴史のある試合に勝ったのは素晴らしいことなんですが、そのせいで、いろいろと計画していたことが狂っちゃって。

O編 計画?

坂詰 馬場ちゃんの場合、今年のプロテストに合格することが最大の課題なんです。日本は、プロテストに通らないと、なんのフィールドもありませんからね。だから去年は、しっかり体を作って、何試合かツアーに出て経験を積む、というのが当初の計画だったんです。

O編 確かに、彼女、ちょっと細いもんね。

坂詰 ちょっとじゃないですよ。アスリートとしては細すぎです。だから、馬場ちゃんのお父さんとも相談して、一昨年の4月から1年かけて体重を14キロ増やしたんです。

ところが、全米女子オープンの予選を通ってから本戦出場、すぐに日本女子アマ、全米ジュニア、関東ジュニア、全米女子アマ出場って、日本と米国を行ったり来たりしながら連戦してたら8キロもやせちゃって……。飛距離も落ちちゃったし、それで飛ばそうとするから、打ち急ぐようになっちゃったし。またイチから出直しって感じなんです。

O編 なるほど。体ができていないと、やりたい動きもできないし、ケガも怖いよね。

坂詰 そうなんですよ。去年、馬場ちゃんの成績がよくなったのは、間違いなく太ったからなんです。だから、今は何より体重を増やしてもらわないといけないんですよ。

O編 でも、それとインタビュー受けないのは、別の問題でしょ?

坂詰 えーと、なんていうか、浮ついているようで嫌だったんです。ああいうことがあると、選手はどうしても浮かれやすいじゃないですか。だから、周りは地に足をつけていなくちゃいけないなって思うんです。とにかく、大事なのはプロテストに通ることなんです。これを通らないと、もうどうにもならない。

O編 確かに。いくら快挙でも、浮かれている場合じゃないか。

坂詰 馬場ちゃん、試合会場で、岡本綾子さんにも同じこと言われたんだそうです。大事なのはプロテストだからねって。馬場ちゃん、のほほんとしているので、どれだけ自覚しているかわかりませんが、気を引き締めていかないと。正直、全米女子アマに勝ったからって、試合に出ているプロたちはなんとも思ってないですよ。みんな、それがどうしたの?って感じです。

O編 意識されるようになるには、ちゃんとプロテストに通って、プロの試合で結果を出していかないとね。

坂詰 そういうことです。

O編 でもさ、教え子が勝ったときくらい、インタビューに答えてもいいじゃない? 浮かれてないコメントを出せばいいんだから。

坂詰 うっ。え~。あ~、それは……。やっぱり苦手だなぁ~。

画像: プロスポーツ選手は体が資本。今は体重を増やし、体を作って、プロテストに備えてもらいたいと、わきゅうは言う(Photo/Yasuhiro JJ Tanabe)

プロスポーツ選手は体が資本。今は体重を増やし、体を作って、プロテストに備えてもらいたいと、わきゅうは言う(Photo/Yasuhiro JJ Tanabe)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月31日号「ひょっこり わきゅう。第1回」より

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