100切りを目指すゴルファーのために石川遼が本気で考えたアプローチ上達法、そのヒントは「5ヤード」。前編では「5ヤード」練習のポイントを解説。後編では、アドレスから距離の打ち分けなど、さらに深く解説する。

「プロのやり方を『正しい型』として盲目的に受け取ってほしくない」と石川は言う。どんな打ち方も、合う人と合わない人がいるからだ。ただ、誰もが共有すべき「スタートライン」はある。

距離感に目覚めるヒント③フックグリップとハンドファーストにしないこと

画像: ボールをスタンスの中央に置き、シャフトを真っすぐ(垂直)にして構えると、手の位置もほぼ体の真ん中にくる。フェースは目標に対して真っすぐ向ける。スタンスはストレート。左足つま先を開いたり、左足を引いてオープンにするのは、様々な状況に対応するための「応用編」。両足つま先のラインが「真っすぐ」がニュートラルだ

ボールをスタンスの中央に置き、シャフトを真っすぐ(垂直)にして構えると、手の位置もほぼ体の真ん中にくる。フェースは目標に対して真っすぐ向ける。スタンスはストレート。左足つま先を開いたり、左足を引いてオープンにするのは、様々な状況に対応するための「応用編」。両足つま先のラインが「真っすぐ」がニュートラルだ

「スタンス、ボール位置、手の位置が『ニュートラル』なところから始めることは大事です。

たとえば、左手がストロンググリップで、ハンドファースト、ボール位置が右足寄りだと、きれいに当たっても低い球しか出ないから、キャリー5ヤードで15ヤードも転がったりして難しい。

フェースがスクエア、左手グリップもスクエアで、ボール位置は両足の真ん中、手の位置もほぼ真ん中というのがニュートラルです。

まずはこの構えから、ノーコックで打つ。ダウンスウィングでもタメを作らないように、ゆるやかな入射角をイメージして打ってみてください」(石川)

画像: 左手は、グリップの真上に親指を置くことを基本に、スクエア~ややウィークに握る。右手は「ゴミ箱にゴミを投げる」感覚を殺さないように握ること。ストロンググリップはフェースが閉じる握り方で、左手をスクエアにしておかないと、フェースを自然に開閉させられない

左手は、グリップの真上に親指を置くことを基本に、スクエア~ややウィークに握る。右手は「ゴミ箱にゴミを投げる」感覚を殺さないように握ること。ストロンググリップはフェースが閉じる握り方で、左手をスクエアにしておかないと、フェースを自然に開閉させられない

画像: テークバック(左)でコックを入れながら上げると、ダウンスウィング(右)でタメが生まれやすい。インパクトがハンドファーストになりすぎて、ボールが想定より強く出やすくなる。ノーコックが上げて下げ、再現性を高くしたい、と石川遼。コックを抑えて振ることで入射角がゆるやかになり、ボールの手前からソールを滑らせるような打ち方になりやすい。ソールが滑っているゾーンで打つ限り、大きなミスは出にくくなる

テークバック(左)でコックを入れながら上げると、ダウンスウィング(右)でタメが生まれやすい。インパクトがハンドファーストになりすぎて、ボールが想定より強く出やすくなる。ノーコックが上げて下げ、再現性を高くしたい、と石川遼。コックを抑えて振ることで入射角がゆるやかになり、ボールの手前からソールを滑らせるような打ち方になりやすい。ソールが滑っているゾーンで打つ限り、大きなミスは出にくくなる

距離感に目覚めるヒント④距離の打ち分けは5Yを基準に力感の足し引き

画像: 距離感に目覚めるヒント④距離の打ち分けは5Yを基準に力感の足し引き

「300球練習」で、何も考えずに5ヤードが打てる状態になるとどうなるか。

「ウェッジで5ヤードキャリーさせると、そこから5.~10ヤードくらいのランで収まるので、ピンまで10ヤードのアプローチはいつでも寄せられます。

そして、5ヤードの力感がわかっていると、あと少し強く、6~7ヤードキャリーさせる力感もわかってくる。6~7ヤード打てば、大体同じくらいのランが出て、トータル15ヤードも寄せられるようになるわけです。

これができるようになってから、実際のラウンドで10ヤードとか15ヤードが残ったときはもう、『自分の距離だ』って、"よだれもの"ですよ(笑)」

さらに、番手を替えることでランを伸ばすことができ、30ヤード以下なら大体、対応が可能になる。 

石川遼の距離の打ち分けはこうだ。

56度でピンまで10Y→5Yキャリー、5Yラン:ウェッジで5ヤードキャリーさせると、グリーンが平らなら、ランも5ヤードくらいで収まるケースがほとんど。

9番アイアンでピンまで15Y→5Yキャリー、10Yラン:同じ5ヤードのキャリーでも、番手を上げることでランの距離が伸び、より遠い距離まで届かせられる。

56度力感強めでピンまで15Y→9Yキャリー、6Yラン:ウェッジでキャリーを伸ばすと、スピンがかかってランは短くなり、複雑なグリーンの傾斜をスキップできる。

56度力感弱めでピンまで7Y→4Yキャリー、3Yラン:5ヤードが無意識で打てると、それより少し弱めに打つこともできるようになり、短い距離でも寄せられる。

距離感に目覚めるヒント⑤"悪ライ"対策は番手をチェンジすること

画像: たとえば、ボールがグリーンのカラーとラフの境目にあるような"悪ライ"では、ウェッジだとつい上からクリーンに入れたくなり、ザックリになりやすい。ユーティリティなら、最初から転がすイメージになり、フェースを真横から当てられるので簡単。また、ユーティリティでのアプローチは、ぶっつけ本番だと距離感がまったく合わない。練習場のマットからでいいので、どのくらいの力感でどのくらい転がるかを試しておくこと

たとえば、ボールがグリーンのカラーとラフの境目にあるような"悪ライ"では、ウェッジだとつい上からクリーンに入れたくなり、ザックリになりやすい。ユーティリティなら、最初から転がすイメージになり、フェースを真横から当てられるので簡単。また、ユーティリティでのアプローチは、ぶっつけ本番だと距離感がまったく合わない。練習場のマットからでいいので、どのくらいの力感でどのくらい転がるかを試しておくこと

難しいライからどう打つか、石川がたどり着いた結論は、「できるだけ『楽』な方法を選ぶ」だという。

「ライが薄かったりして、『チャックリしそう』と感じたら、それが起こらない選択肢を探すことが大事です。ライが悪くても寄せたい場合、ひとつのクラブでやろうとすると難しくなる。

パターが使えるならパターで、ユーティリティなんかも積極的に使うべきだと思います。

練習場で、マットのすり減ったところからユーティリティで転がす練習をしておくと、実戦でかなり役立つと思いますよ」

また、悪ライからは、「5メートル以内に寄ればOK」など、目標のハードルを下げてプレッシャーを軽減することも大事だ。

画像: ウェッジよりショートアイアンのほうが「刺さり」にくく、ユーティリティやウッドはさらに刺さらない。とくにユーティリティでは、ニュートラルなアドレス、ノーコックで打つこと。グリップは短く持って、ボールに近づき、パターのようなアップライトなストロークで打つと簡単に転がせる

ウェッジよりショートアイアンのほうが「刺さり」にくく、ユーティリティやウッドはさらに刺さらない。とくにユーティリティでは、ニュートラルなアドレス、ノーコックで打つこと。グリップは短く持って、ボールに近づき、パターのようなアップライトなストロークで打つと簡単に転がせる

撮影/姉崎正

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月7日号「石川遼の距離感に目覚めるアプローチ」より抜粋

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