「プロのやり方を『正しい型』として盲目的に受け取ってほしくない」と石川は言う。どんな打ち方も、合う人と合わない人がいるからだ。ただ、誰もが共有すべき「スタートライン」はある。
距離感に目覚めるヒント③フックグリップとハンドファーストにしないこと
「スタンス、ボール位置、手の位置が『ニュートラル』なところから始めることは大事です。
たとえば、左手がストロンググリップで、ハンドファースト、ボール位置が右足寄りだと、きれいに当たっても低い球しか出ないから、キャリー5ヤードで15ヤードも転がったりして難しい。
フェースがスクエア、左手グリップもスクエアで、ボール位置は両足の真ん中、手の位置もほぼ真ん中というのがニュートラルです。
まずはこの構えから、ノーコックで打つ。ダウンスウィングでもタメを作らないように、ゆるやかな入射角をイメージして打ってみてください」(石川)
距離感に目覚めるヒント④距離の打ち分けは5Yを基準に力感の足し引き
「300球練習」で、何も考えずに5ヤードが打てる状態になるとどうなるか。
「ウェッジで5ヤードキャリーさせると、そこから5.~10ヤードくらいのランで収まるので、ピンまで10ヤードのアプローチはいつでも寄せられます。
そして、5ヤードの力感がわかっていると、あと少し強く、6~7ヤードキャリーさせる力感もわかってくる。6~7ヤード打てば、大体同じくらいのランが出て、トータル15ヤードも寄せられるようになるわけです。
これができるようになってから、実際のラウンドで10ヤードとか15ヤードが残ったときはもう、『自分の距離だ』って、"よだれもの"ですよ(笑)」
さらに、番手を替えることでランを伸ばすことができ、30ヤード以下なら大体、対応が可能になる。
石川遼の距離の打ち分けはこうだ。
56度でピンまで10Y→5Yキャリー、5Yラン:ウェッジで5ヤードキャリーさせると、グリーンが平らなら、ランも5ヤードくらいで収まるケースがほとんど。
9番アイアンでピンまで15Y→5Yキャリー、10Yラン:同じ5ヤードのキャリーでも、番手を上げることでランの距離が伸び、より遠い距離まで届かせられる。
56度力感強めでピンまで15Y→9Yキャリー、6Yラン:ウェッジでキャリーを伸ばすと、スピンがかかってランは短くなり、複雑なグリーンの傾斜をスキップできる。
56度力感弱めでピンまで7Y→4Yキャリー、3Yラン:5ヤードが無意識で打てると、それより少し弱めに打つこともできるようになり、短い距離でも寄せられる。
距離感に目覚めるヒント⑤"悪ライ"対策は番手をチェンジすること
難しいライからどう打つか、石川がたどり着いた結論は、「できるだけ『楽』な方法を選ぶ」だという。
「ライが薄かったりして、『チャックリしそう』と感じたら、それが起こらない選択肢を探すことが大事です。ライが悪くても寄せたい場合、ひとつのクラブでやろうとすると難しくなる。
パターが使えるならパターで、ユーティリティなんかも積極的に使うべきだと思います。
練習場で、マットのすり減ったところからユーティリティで転がす練習をしておくと、実戦でかなり役立つと思いますよ」
また、悪ライからは、「5メートル以内に寄ればOK」など、目標のハードルを下げてプレッシャーを軽減することも大事だ。
撮影/姉崎正
※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月7日号「石川遼の距離感に目覚めるアプローチ」より抜粋