昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す!

O編 こう言ったら失礼なんだけど、昨年、馬場咲希さんが全米女子アマに勝ったときは、「この子、誰?」って思った人も多かっただろうね。6月の全米女子オープンで決勝に進出して注目されたものの、それまではそれほど有名じゃなかったし。

坂詰 それほどっていうか、ほぼ無名ですよね。全米女子オープンに出るまでは、ナショナルチームのメンバーでもなかったんですから。

O編 わきゅうとしては、馬場さんが全米女子アマでどのくらい活躍できると思ってたの?

坂詰 予選は通ると思ってました。馬場ちゃんは球が高いから、米国向きですし。ただ、4日間は持たないんじゃないかと。要はスタミナ不足ですよね。全米女子オープンは、キャディとして帯同していたんですが、最終日は視線も定まらないくらいに疲れてたし、全米ジュニアも4日目がよくなかったですから。

O編 それが勝っちゃった。

坂詰 決勝がマッチプレーだったのがよかったと思います。今回の全米女子アマの決勝は、予選の上位選手が早々に負けて、予選をギリギリで通過した選手が勝ち上がってたんです。決勝で当たったモネ・チュン選手も、予選は53位タイでしたからね(馬場さんは予選34位タイ)。ある意味チャンスしかない。そういう試合のシステムとか運にも助けられたんだと思います。

O編 試合中は、馬場さんと連絡取ってたの?

坂詰 3日目が終わったあと「パターが入らないんですけど、どうしたらいいですか?」って電話がありました。でも、土壇場でなにかを変えても入らないから、今までやってきたことをやれ、って言ったんです。

O編 入らなくなると、何かを変えたくなるものだよね。

坂詰 そうなんです。よくないときって、ストロークのことを考えちゃうんだけど、そんなの考えれば考えるほど入らなくなっちゃう。だから、「マッチプレーだと、相手はピンだけ狙ってバーディを取りに来るから、入れにいくことだけ考えなさい」って言いました。そうすれば、ストロークに意識がいかなくなりますからね。

O編 で、それがハマったわけだね。

坂詰 決勝戦はかなり入ってましたね。でも、優勝インタビューで「パター大好き」なんて言ってるから、テレビの前で「おいっ、昨日は入らないって言ってたくせに!」って、ツッコんじゃいましたよ(笑)。

O編 馬場さんは、やはりスタミナが課題かな?

坂詰 ええ。前回も言いましたが、もっと食べて、太って体力つけないと、スタミナが足りないし、やりたい動きもできない。とにかく、馬場ちゃんは、食べないんですよ。

O編 高校3年生の女の子でしょ。太りたくないのでは? 

坂詰 いやぁ、そうじゃなくて、本当に食が細くて食べられないんです。ラーメン1杯食べるのに2時間かかっちゃうくらいですから。

O編 えっ、それじゃ麺が伸びちゃうじゃない!

坂詰 もやしとか1本ずつ食べるから、スープが全部なくなって、麺は伸び切っちゃいますね。

O編 お、美味しくなさそうだね。

坂詰 そのくらい食べられないんです。でもね、プロを目指す者としては、吐いてでも食べる姿勢を見せるべきだと思うんです。いまどきこんなことを言ったら炎上しちゃうかもしれませんけど。

O編 相撲の力士のように?

坂詰 ええ。彼ら、必死じゃないですか。そうしないと戦えないから。でも、それがプロだと思うんですよ。だから馬場ちゃんにも、できなくても努力する姿勢を見せてほしいんです。誰のためでもない。自分のためなんですから。

O編 プロになりたいなら、プロ意識を持って行動に移せってことだね。

坂詰 知ってますか? 引退したフォン・シャンシャンの現在の姿。もう、ほっそりしてて、現役のときの面影もないんです。衝撃ですよ!

O編 ダイエットしたってこと?

坂詰 というか、それが彼女の本来の姿なんだそうです。現役のときは、飛距離を伸ばすためと、両わきを締めた状態でパッティングするために、わざとあそこまで体重を増やしていたらしいんです。本物のプロですよ。

O編 すごいプロ意識だ。ただ、馬場さんの場合は、スレンダーな馬場さんが好きなファンも多そうだよね。

坂詰 もちろん、あそこまでやれとは言いませんよ。でも、その姿勢は見習ってほしいんですよ。

画像: 現役時代のフォン・シャンシャン(写真右)と、現在の彼女(写真左)。現役時代はパフォーマンスを上げるために体重を増やしていたが、引退してからは、健康のために体重を落としたのだという(写真提供/RedEagle㈱)

現役時代のフォン・シャンシャン(写真右)と、現在の彼女(写真左)。現役時代はパフォーマンスを上げるために体重を増やしていたが、引退してからは、健康のために体重を落としたのだという(写真提供/RedEagle㈱)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月7日号「ひょっこり わきゅう。第2回」より

This article is a sponsored article by
''.