20‐21シーズンをポイントランク、賞金ランクともに22位で終えた吉田優利選手でしたが、22年はランク6位と大躍進を果たしました。パーオン率は57位から14位、リカバリー率は10位から1位、平均バーディ数は18位から3位へと、ショットとショートゲームの両方が大幅に向上したことがスタッツからも見て取れます。それともう一つ、バウンスバック率も13位から1位となり気持ちの強さも身につけました。
トップ10回数19回(2位)と年間を通して安定感が高かったのは「試合で壊れかけても翌日の月、火曜で課題を修正し、試合に臨む流れができていた」と吉田選手を指導する辻村明志コーチは言います。1週1週の試合で課題を持ち帰り修正して実行する「PDCA」を上手く回せたことも大きな要因だったようです。
オフの取り組みを聞くと「オフは1年間の基本を作る時間として、徹底した基礎練習を積み重ねている」と辻村コーチ。
「このオフにやったことがシーズン中の引き出しになります。その引き出しをどれだけ作れるか。インパクトの打点と圧の再現性を高めるためにハーフスウィングやバンカーからクリーンに打つ基礎練習を重ねています」(辻村コーチ、以下同)
「インパクトの打点と圧」をテーマに再現性を高める練習をメインにオフを過ごす吉田選手ですが、砂の上から打つ練習では、同じ辻村コーチに師事する上田桃子選手のほうが上手く、打点も安定していると辻村コーチは言います。吉田選手にとってベテランで技術力の高い上田選手の存在は大きくプラスに作用しているようです。
バランスの取れた立ち方、スウィングのテンポ、力感、タイミングなど勝負をかけた一打でベストショットを打つための、”最後の一球”を意識して突き詰めた練習を重ねているとも言います。それは、優勝争いの中で勝つための一打を打てるようになること。大躍進した昨シーズンでしたが“優勝”の二文字が遠かった吉田選手。今シーズン最も勝つことを渇望している選手の一人です。
計測していないので、正確な数値はわかりませんが、連続写真を見る限り水平方向の力、回転力、縦の力という3つのエネルギーの内、左右の移動幅は少なく、回転力と縦の力の割合を多く使っています。
それぞれの力のピークも、左への水平方向の力はトップ付近、回転力は左腕が地面と平行になる位置、縦の力はシャフトが地面で迎えるというトッププレーヤーに共通する、出力のタイミングが整っていることで効率の良い安定したスウィングを作り上げています。
年末、毎年シーズンの目標とその目標に対して、課題を紙に書いて、辻村コーチのもとに持ってくるそうで「それだけなら誰でもできますが、だからどうするということまで最後まで書いてくる選手はなかなかいません。そこまでつなげられるのが吉田優利です」と辻村コーチ。それでもふたを開けてみないと、どんなシーズンになるかはわからないと辻村コーチは続けます。
「吉田はピンを攻めていく選手なので、センター狙いならパーオン率は上がるでしょう。しかしピンを狙いながらパーオン率を10位以内に上げられれば面白いことになるでしょう。これまでコーチを続けてきて、オフの最後はラウンドを増やしますが、それまでは基礎練習を重ねるほうが上手くいってきましたから」
国内メジャーや複数回優勝という今年の目標を達成するために、1週間、1カ月、1シーズンと計画、実行、チェック、修正というPDCAを回し着実に進化を遂げる吉田優利選手。昨年の西郷真央のように序盤からスタートダッシュを決める姿が見られるのではないでしょうか。