ジュニア時代にレッスンを通じて出会って以来、ずっとアドバイスを送り、選手の成長を間近で見守ってきたコーチがいる。プロコーチのようにメディアでの表立った活動は少ないが、選手からの信頼は絶大だ。
「プロになると、さらに高みを目指すうえでコーチを代えることもあります。新しい取り組みを始めることには確かにメリットもありますが、逆に調子を落とすこともあります。結果が出ない場合でも、新しいコーチが悪いのではなく、それは選手との相性が合わなかったから。例えば、福田真未選手はコーチを代えたことでシード落ちを経験しましたが、昨年からは幼少期から習っていた街の練習場のレッスンプロに再び指導を仰ぐようになり、わずか1年でシードに復帰しました。やはり小さいころから知っているので、選手のすべてを把握しているのだと思います」(タケ小山・以下同)
まだ体のできていないジュニア時代から、成長に合わせて指導することで、幼少期から同じコーチに指導を受けてきた選手は個性的なスウィングをすることが多いとも指摘する。
「子供を指導するのは本当に大変。まず優しい性格じゃないと務まらない。それに体が成長していくので、その時々に合わせた指導をする必要がある。だから、型にはめるのではなく、個性を伸ばす方向に行くんだと思います。長年指導しているので、もの凄い量のデータが蓄積されていきます。個々の成長に合わせて指導するには、やはり経験がものを言うんです」
永井哲二コーチは、岩井明愛・岩井千怜がゴルフを始めた時から指導
岩井明愛・千怜姉妹はゴルフを始めたころから、埼玉県のリンクスゴルフクラブの永井哲二コーチから指導を受けてきた。妹の千怜はルーキーイヤーにレギュラーツアー2連勝。姉の明愛も2021年にステップ・アップ・ツアーで優勝している。昨年のシーズン中も、永井哲二コーチのもとにラインで何度も連絡が来たという。
「永井哲二コーチはジュニアゴルファーの育成に尽力してきた北谷津ゴルフガーデンの故・千葉晃さんのお弟子さんです。千葉さんにジュニアコーチとしての基礎を叩き込まれました。技術的に教えたことは、基礎中の基礎のことばかりだとは思いますが、自宅近くの練習場のスクールなので、『見てもらいたいとき』『教えてもらいたいとき』に身近にいる存在ということも大きい。長年教えてきたことで、親代わりというか、心の拠りどころにもなっていると思います」
馬場咲希、全米女子アマ優勝の立役者・坂詰和久コーチ
また、プロではないが昨年の全米女子アマを日本人として37年ぶりに制した馬場咲希さんを中学1年から指導しているのは、八王子のゴルフスクールのヘッドコーチ、坂詰和久コーチ。
「坂詰和久コーチは以前、プロキャディとして活動していて片山晋呉の専属キャディも務めました。また佐伯三貴のキャディ兼コーチとしてもツアーを転戦。そのため、プロのスウィングをたくさん見てきており、その経験が指導にも生かされています。TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)の資格を持っているので、数値から導き出される効率のいい指導ができる。言葉遣いだけでなく、本当に優しい性格なので、ジュニアに無理やり教えるのではなく、ゴルフを楽しみながら指導できるのが、強い選手を育てた一因だと思います」
中学1年から馬場さんを指導する坂詰和久コーチ。手足の長い馬場さんの特徴を生かしながら、一貫してフェースをねじらないことを徹底し、「飛んで、曲がらない」体全体を使ったダイナミックなスウィングを進化させている。
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※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号より(PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Takanori Miki、Hiroaki Arihara、Yasuo Masuda)