昨季、プロ生活10年目にしてメルセデスランク39位(603ポイント)に入った岸部桃子は、プロとして初めてレギュラーツアーのシード権を獲得。賞金総額は3300万円を超え、20-21シーズンは660万円だったことを考えれば飛躍的な成長を遂げたといえる。
岸部にいったい何が起きたのだろう?
「21年のステップ・アップ・ツアー、ツインフィールズレディースでの(ステップ)2勝目が大きかったです。
コースが難しく、セッティングも厳しい試合で、茂木宏美さんがコースセットをしたのですが、『この試合で勝てればレギュラーでも通用する』と茂木さんも言っていて、それが自信につながりました。
昨季の好調を自分なりに分析してみると、グリーンを狙うショットが安定していたのかなと思います。もともと飛ぶタイプではないのでセカンドは4、5、6UTになるのですが、その精度がよかったというか、ミスが少なかったです。
また昨季は私のなかでは最も試合数の多いシーズンでしたから、月曜にトレーニング日を設けたんです。これもよかったと実感しています。連戦が続くと疲れが溜まりますし、体にズレやゆがみが出てしまうんです。でも月曜のトレーニングで体がリセットできたので、次の試合でもショットが安定していました」
昨季の岸部はQTランク22位の資格で試合に出場。当然、リランキングの対象選手であったが、前半戦の明治安田生命レディスで7位T、富士フイルム・スタジオアリスで6位Tに入っている。
「前半戦でいい成績が残せたのでリランキングは大丈夫と考え、そこからシード獲得へと目標を変えました。
中盤戦くらいで『もう安心だね』なんて周りの選手からは言われましたけど、最終的には伊藤園レディスの2位(120ポイント)が大きかったと思います」
岸部は福島県いわき市の出身だ。ゴルフを始めたのは8歳。富岡高校ではゴルフ部に所属していたが、高校2年のとき、東日本大震災で被災。
この震災がプロを目指すきっかけになったという。
「ゴルフ部は私ひとりでした。それで高2になって千葉にあったETGS(江連忠ゴルフスタジオ)に通い始めたんです。
震災後、ETGSの寮に2カ月避難しました。そこで横田英治コーチや会員の人、スタッフの方々に助けられたんです。それでプロになってみんなに恩返しがしたいと思ったんです」
岸部は高校卒業後、プロテストに一発合格。2012年よりプロ生活をスタートさせ、今季で11年目に突入する。
「10年目で初シードですが、私的には試合に出られないシーズンはなかったので、それほど苦労した感じはありません。あっという間の10年でした。
シードを獲得したことで周りの人たちが喜んでくれたことは本当に嬉しいです」
1月2日からトレーニングをスタートさせた岸部はシーズンに向け、どんな取り組みをしているのか?
「1シーズン戦ってみて感じたのは、ドライビングディスタンスの低さです。平均飛距離は232Y(部門別72位)でしたから、やはり飛距離アップは大きな課題だと考えています。
とにかく素振りをしてヘッドスピードを上げることをテーマにしています。
あと、自分のスタッツで注目したのはリカバリー率です。リカバリー率が63%(部門別32位)と悪いんです。上位選手はみんなリカバリー率が高く、パーで耐えられるゴルフができないと試合の流れも作っていけない、と感じました。
自分的にはアプローチは得意だと思っていましたが、横田コーチと相談しながらアプローチをもう一度見直し、鍛え直すつもりです」
フィジカル的な課題はどうか?
「昨季は後半戦で腰痛が出てしまったんです。痛みもあって思うような練習もできなかったので、フィジカルの強化は大きな課題です。私、実は体がめちゃめちゃ硬いんです。だから筋力アップとかではなく、柔軟性を意識したトレーニングに力を入れています」
今季の目標はズバリ?
「伊藤園レディスの2位はやっぱり悔しいです。だから今季の目標は、レギュラーツアー初優勝です!」
岸部は昨年末、福島県いわき市のスポーツ振興基金に100万円を寄付している。まずは故郷への恩返しを実現させた岸部。今季はシード選手としてさらなる恩返しを考えているのかもしれない。
ゆっくりだが、着々と自分の道を切り開く、岸部の活躍に注目しよう。
【岸部桃子のQ&A】
●好きな食べ物/お肉、ケーキ
●嫌いな食べ物/しらこ
●好きな飲み物/カフェラテ
●好きなアーティスト/ONE OK ROCK
●好きな俳優/吉沢 亮
●好きな芸人/千鳥
●好きなファッション/シンプルなパンツスタイル
●好きなブランド/BEAUTY &YOUTH
●好きな動画サイト/平成フラミンゴにハマってます
●勝負飯/焼肉
●人生でいちばん高い買い物/クルマ
●旅行に行くなら/箱根(温泉に入りたい!)
撮影/千川修
※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月14日号「岸部桃子~"桃李成蹊"」より