ツアー通算18勝を誇る職人プロ、藤田寛之は昨季のシニアツアーで2勝を挙げ、賞金ランク2位となった。その結果、シニアの海外メジャー出場権を獲得。夢だった海外メジャーのチャンスをつかんだ、藤田に話を聞いた。
画像: 昨年6月、スターツシニアでシニアツアー初優勝したことが大きな転機になったという藤田。表彰式で師匠の芹澤信雄と優勝カップを掲げた(写真提供/日本プロゴルフ協会)

昨年6月、スターツシニアでシニアツアー初優勝したことが大きな転機になったという藤田。表彰式で師匠の芹澤信雄と優勝カップを掲げた(写真提供/日本プロゴルフ協会)

GD 昨季はレギュラー17試合、シニア9試合と両ツアーに出場するという、忙しいシーズンでした。どんなシーズンでしたか?

藤田 昨季は選択を迫られたシーズンでした。50歳になった時点でレギュラーとシニア、両ツアーには出ていましたが、自分のスタンスはあくまでレギュラーが主体でした。ですから昨季もレギュラーでのシード復活を目標にしていました。

ですが、6月のスターツシニアで優勝(シニア初優勝)したことが大きな転機になったんです。誰に教えてもらったのか、記憶はあいまいですが、海外メジャーへの道が見えてきたんです。

GD シニアの賞金ランキング上位の権利で海外メジャーの出場権(2位以内なら3試合に出られる)が獲得できるわけですね。

藤田 そうです。50歳になったときPGA(日本プロゴルフ協会)に海外メジャーの推薦状をお願いしていたくらいで、ずっと行きたいと思っていたんです。スターツの優勝で海外メジャーの可能性が出てきたのですが、1勝だけでは賞金ランク3位以内(当時の目標)は難しいですから、シニアで賞金ランクを上げる決断をしたんです。

シーズン中に目標を変えたのは初めてでしたし、まったくの想定外でした。

GD スターツシニアでは、師匠の芹澤信雄選手も出場していました。それもよかったのですか?

藤田 師匠と一緒に試合に出られるのは嬉しいです。自分のゴルフを見てもらえますし、20年くらい師匠と共に歩んできたから同じステージでやれることは幸せです。

GD 何かアドバイスをもらったのですか?

藤田 ここ2~3年、ショットの調子が上がらず、いろいろ悩んでいました。

スターツで師匠にアドバイスをもらったら、イメージ通りのフェードが打てるようになったんです。シーズン中も師匠に見てもらっていたのですが、なかなか調子は上がりませんでした。

でもこの試合のときだけ、いい方向に動いたんです。いま思うと師匠の言葉がなければ、優勝も海外メジャーもなかったですね。

GD スターツシニアは2014年以来、8年ぶりの優勝でした。周りの反応はどうでしたか?

藤田 みんな喜んでくれましたね。予想以上の反響ですごかったです。自分自信も嬉しかったし、この勝利の価値は大きかったです。

優勝カップを師匠と一緒に持たせてもらって嬉しかったですし、師匠への恩返しにもなったのかなって思います。

GD スターツシニアの優勝後、10月初旬までシニアツアーに専念されました。その間、レギュラーでは8月のセガサミーカップとKBCオーガスタ、9月のANAオープンを欠場しています(藤田は3試合とも歴代優勝者)。まさに苦渋の選択でしょうか?

藤田 かなり悩みました。師匠にも相談しましたが、「最終的には本人が決めること」とはっきり言われました。海外メジャーは夢でしたからこのチャンスを逃すわけにはいかない、そう思って8・9月はシニアツアーに出場しました。

GD シニア3戦目、マルハンカップ太平洋クラブシニアでは、逆転で2勝目を挙げました。狙い通りでしたか?

藤田 正直にいえば、思いがけない優勝でした。私自身、そんなにいい状態ではなかったですから。前週のファンケルクラシックも30位でしたし。

ただマルハンカップは太平洋C御殿場Cの開催で、チームセリザワでもお世話になっていたし、師匠のアカデミーがありますから、ここで優勝できたのは嬉しかったです。マルハンで勝って海外メジャー(全英シニア、全米シニア、全米プロシニアの3試合)に行けると思いました。

画像: ヤマハゴルフジュニアのレッスンを任されている藤田。将来はレッスン事業の拡大を目指している(写真提供/ヤマハ)

ヤマハゴルフジュニアのレッスンを任されている藤田。将来はレッスン事業の拡大を目指している(写真提供/ヤマハ)

GD 8年ぶりの優勝からすぐに2勝目。そのモチベーションは、どこからくるのでしょうか?

藤田 ボクはよくF1にたとえるんですが、自分が乗っているマシンは30年前のものです。パーツを替えたりしてメンテナンスはしていますが、最新のマシンと勝負すれば、ストレートであっさり抜かれます。

テクニックを駆使してコーナリングで差を縮めることはできますが、またストレートで離されるだけです。でも、諦めない心や挑戦し続ける姿に何かを感じてもらえることもあります。

周回遅れになっても「頑張れ!」と応援してくれるファンがいるんです。だからこそ、手は抜けないし、一生懸命頑張りたいんです。

それがプロとしてのプライドなのかなって思います。ギャラリーの声援は本当に力になります。 レギュラーは若手の活躍が目覚ましいですから正直、辛いことばかりです。

ドライバーで70~80Y離されますからね。シニアのほうがめちゃめちゃ楽しいです。でも最終戦はレギュラーのカシオワールドに出場しました。

シニアの試合もありましたが、P・マークセンが連勝していて賞金ランク1位を目指すのは厳しい状況でした。それならレギュラーのシード獲得の可能性に賭けたんです。

結果は68位でしたが、レギュラーツアーへのこだわりでもありました。 昨季は海外メジャーに目標をシフトしましたが、レギュラーのシードを諦めたわけではありません。

今季は海外メジャーを第一優先にシニアツアーに出場する形となりますが、レギュラーは8試合推薦がもらえます。そのチャンスも視野に入れながら戦っていくつもりです。ABEMA(男子下部ツアー)にも出られるなら出たいと思っています。

GD 藤田プロが思い描く、未来像はどんなものですか?

藤田 男子はシニアツアーがありますから選手でいることはできます。出られる試合があるというのは、恵まれていますね。今はずっと選手でいたい、という思いが強いです。

将来的には会社(BKコーポレーション)として取り組んでいるレッスン事業の拡大を目指したいです。今はヤマハゴルフのジュニアレッスンを任されていて、静岡ローカルで「BKゴルフラジオ」という番組もやっています。会社としての成長は、これから楽しみなところです。 

個人的にはトーナメント中継の解説やコース改造などもしてみたいです。海外のゴルフ場にはプレーヤーが改造したコースが多いですし、藤田デザインのコースができたら最高かなって思います。

今までボクは選手としてもらってばかりでしたが、今度は残すとか与える側として力を尽くしたいんです。ボクにはゴルフしかありません。そのゴルフで何かの役に立てればいいなって思います。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月14日号「藤田寛之インタビュー」より

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