O編 わきゅうは、馬場咲希さんが中学1年のときから教えてるんだよね?
坂詰 はい。ただ、話を聞いたら、小学校5年のとき、うちのスクールに入会希望で来たことがあるみたいなんです。でも、その頃ボクは小学生を教えていなかったので、スタッフが断ったらしいんですよ。だから、お父さんに初めてお会いしたとき、「5年生のとき、先生に門前払いされたんですよ」って挨拶されちゃいました。ボクは知らなかったんですけどね。あはは。
O編 じゃあ、馬場さん、もしかしたら他のコーチのところに行ってたかもしれないんだね。
坂詰 あぁ、そうですね。
O編 今は小学生も教えてるの?
坂詰 知り合いに頼まれて2人だけ。でも、本音を言うと、小学生は教えたくないんです。
O編 どうして?
坂詰 子供の頃は、いろいろなスポーツをやってもらいたいんですよ。知ってます? 米国のオリンピック委員会が出場選手全員にアンケートを取ったら、選手たちは10歳までに平均で3.11種目、10~14歳で2.99種目を、本格的にやっていたんだそうです。
O編 平均ってことは、もっと多くの種目をやっていた選手もいるってことか。
坂詰 そういうことです。それで20歳くらいから、最終的な種目を絞っていくそうなんです。19年に全米オープンを制したゲーリー・ウッドランドなんかも、大学まではバスケットの選手で、ゴルフを始めたのは大学時代かららしいですよ。
O編 ジョーダン・スピースも、中学時代はバスケットボールと野球(投手)をやっていたみたいだね。
坂詰 日本の場合、小さいころから英才教育をしたほうが強くなると思ってる親が多いでしょ。でも、体ができていないうちから、ゴルフだけに絞って無理をさせたら、ケガは怖いし、他の可能性を潰しちゃうじゃないですか。
O編 それより、いろいろな競技をやって、バランスよく、いろいろな感覚を鍛えていったほうがいいと?
坂詰 はい。運動神経は、ないよりあったほうが絶対にいいと思うんです。でも、それを磨くのって大人になってからじゃ間に合わない。だから、なんでもいいからたくさん経験してもらいたいんですよ。
日本人って真面目で、親が真剣になりすぎちゃう。でも、やり方がわからないから、とりあえずたくさん球を打たせるでしょ。それが本当によくない。ホント、ゴルフばかりでゴルフしかない生活なんて、いいことないんですよ。
O編 ありがちだねぇ。ジュニアなのに、腰痛とか、ひじ痛とか抱えている子、結構いるもんね。
わ それ、ものすごく多いんです。だから馬場ちゃんにも、中1の頃は、あまり球を打たせなかったんです。普段たくさん球を打っているのはわかっていましたから、うちに来たときは「帰ったらこういう練習をしといてね」って、普段の練習のテーマを与える感じでやってました。
大人だって、いろいろな運動をしたほうがいい
O編 いろいろなスポーツをやってもらいたいって言ってたけど、どんな競技がおすすめなの?
坂詰 陸上なんていいですよね。跳んだり跳ねたり、走ったりすると、瞬発力も磨かれるし、バランスもよくなるから。馬場ちゃんも、中学時代は陸上やってたんです。
O編 よく、テニスとか卓球みたいに、面で球を操る競技がいいなんて言われるけど?
坂詰 もちろん、それもいいですね。とにかく、いろいろ経験しておくことが大切だと思います。
O編 大人もいろいろやったほうがいいのかな?
坂詰 時間があるなら、絶対にやったほうがいいですよ。他のスポーツをやってると、その動きや経験をゴルフに応用できたりしますしね。
O編 他のスポーツ経験がゴルフに生きることって結構あるよね。
坂詰 それと、全身を使うようになるという効果もあると思います。
O編 どういうこと?
坂詰 ゴルフって球が止まってるから、ゴルフだけやってると、当てにいく動きになって、全身を使えなくなっちゃう人も多いんです。でも、跳んだり、跳ねたり、走ったりするスポーツって全身を使うじゃないですか。
O編 確かに、動いてる球を打つ競技なんかは、嫌でも全身を使うよね。
坂詰 飛距離を出すためにも、体とクラブに一体感を出すためにも、全身を使ってスウィングすることはとても大切。そういう意味でも、いろいろなスポーツをやってもらいたいなぁと思うんです。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月14日号「ひょっこり わきゅう。第3回」より