コロナ禍でなかなか日本に来られないジレンマを抱えつつ韓国で過ごしていたという虎さんことチェ・ホソンが、ゲンちゃんこと時松隆光と久々のご対面。”あの時期”のつらい話をしみじみと振り返った。
画像: "あっち向いてほい"のように、フィニッシュでターゲットに背を向けてしまうほどの変則スウィングが話題になった韓国のチェ・ホソン

"あっち向いてほい"のように、フィニッシュでターゲットに背を向けてしまうほどの変則スウィングが話題になった韓国のチェ・ホソン

時松 しばらく会わない間に虎さんの日本語、上達しましたね(笑)。

虎 ありがとうございます(笑)。実は日本を離れていた2年半の間、奥さん(ファン・ジンアさん)と一緒に日本語を勉強しました。

奥さんは前から日本語を勉強していたので、私より上手。家のなかで、日本語で会話したり、なるべく日本語を使うようにしていたんです。

時松 僕が2020年1月に選手会会長になった直後にコロナ禍です。一体どうなるのかまったく見通しがつきませんでした。JGTOのツアースケジュールを見ても、17試合が中止。あの年(20年)は結局5試合しか試合がありませんでしたから。

選手会会長として、日本人選手だけでなく、外国人選手の相談にも乗ったりして、正直大変でした。試合そのものがなかったので、シード権うんぬんよりも選手の生活をどうするかといった相談が多かったですね。

虎 2019年12月に韓国に戻り、20年初めにはコロナ禍が日本や韓国で始まったでしょう。3月には日韓関係が悪化して、観光ビザも中断されて、一般の旅行者も往来ができなくなりました。

コロナのため、プロゴルファーも以前のような往来ができなくなりました。

私も2020年から22年8月までの約2年半、日本には戻れませんでした。その間、コリアンツアーに出場しましたが、いつ頃日本に戻れるのかを考えて落ち着きませんでしたよ。

幸い韓国では、無観客ですが男子ツアーが10試合以上開かれ、それに出場しながら、日本ツアーからの連絡を待っていたんです。

プロは技術も大事ですが、ファンがいないと発展しないと思っています。その意味ではギャラリーのいない試合はつらかったです。

時松 僕らも日本人選手だけでなく、韓国選手や豪州の選手とオンラインで話し合いました。

たとえば、 キム・キョンテ選手の場合には21年開幕戦の東建ホームメイトカップのときに初日ラウンド後に陽性と判明して、試合を棄権、2週間の隔離生活を余儀なくされた後、韓国に帰国しました。

当時は韓国も規制が厳しく、隔離施設で2週間の強制収容生活を送ったそうです。結局、日本で2週間、韓国で2週間、合計1カ月の隔離生活ですからね。外国人選手にとっては致命的です。選手会会長としては胸が痛かったです。

結局キョンテさんは日本のシステムが改善されない限り、日本には戻らないと決断しました。キョンテさんは日本にもファンが多く、彼自身も日本を愛していましたから、いま考えても残念です。

僕自身も2021年2月のシンガポールでの大会にエントリーしていたのですが、結局、入国できませんでした。

画像: 昨年7月セガサミーで日本ツアーに"復帰"したチェ・ホソン。予選では久しぶりに再会した時松とのラウンドを楽しんだ

昨年7月セガサミーで日本ツアーに"復帰"したチェ・ホソン。予選では久しぶりに再会した時松とのラウンドを楽しんだ

虎 実は私も2021年夏、家族でコロナ(デルタ株)にかかりました。奥さんと息子2人の家族4人です。

近くの山に散歩に行くときにも気をつけてマスクをしたり、うがいに注意したりしたのですが。結局、息子たち(16歳と17 歳)も2週間、隔離施設に行かされたりして、苦労しました。

私自身も日本に行ってプレーしたかったのですが、そういう状況では(試合出場用の)ビザは発給されませんでした。日本でも隔離されて、 一度韓国に戻ったときにも隔離されるので、結局往復するだけでも1カ月は無駄に過ごすことになります。

隔離生活を経験した人にしかわからないと思いますが、1日24時間、1週間も2週間も小さな部屋に閉じ込められたら、狂ってしまいますよ。それに私自身、呼吸器機能が少し弱いので、たとえ1週間でも部屋のなかに閉じ込められるのは無理でした。

時松 本当にそうですね。選手のなかからもつらい隔離生活を訴える人もいましたから。コロナでどれくらいの選手たちが犠牲を強いられたかを考えると本当に胸が痛いです。

虎 ですから、昨年(22年)8月、奥さんと一緒に2年8カ月ぶりに北海道のセガサミーに出場できることがわかったときには飛び上がって喜びました。

ソウルから新千歳空港に到着したときには入国手続き後、 真っすぐ空港内の寿司屋に飛び込んで、久しぶりに日本の寿司を食べました。

翌日、試合会場に行きましたが、あまりにもニューフェース(新人)が多くて、知らない選手ばかり。自分のことを覚えてくれているファンや友人がいないのではと心配しましたが、クラブハウス前で「虎さん!」と声をかけてもらったときには涙が出そうになりました。

時松 虎さんは人気者だから大丈夫です。セガサミーでは、予選ラウンド一緒でした。スウィングも含めて「やっぱり虎さんだ!」と思いました(笑)。(つづく)

TEXT / Masaki Tachikawa PHOTO /Hiroyuki Okazawa

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より

This article is a sponsored article by
''.