サウジ開催の欧州女子ツアーに出場し、初日首位発進したリディア・コー。昨年の最終戦でシーズン3勝目を飾り、史上最長ブランクとなる5年6カ月ぶりの世界ランク1位に返り咲いた。約1年前、『もう一度、世界一を目指す』と語り、本当に有言実行してしまった世界最強女子が、世界一になれた秘密を明かす。
画像: この3年でコーチが変わり、スウィングも変化。「今のスウィングはアマチュア時代に近いもので、より自分が自然と感じられるスウィングです」というリディア・コー

この3年でコーチが変わり、スウィングも変化。「今のスウィングはアマチュア時代に近いもので、より自分が自然と感じられるスウィングです」というリディア・コー

GD 昨シーズン、年間3勝を挙げて、世界ランキング1位に返り咲きました。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも輝き、ベアトロフィ(年間最少平均ストローク)も受賞しました。今の気持ちは?

コー 自分でもちょっと驚いています。途中、本当に世界一になれるかどうか疑わしい時期もありました。ですから、世界ランク1位という数字は意識しないで、常にベストを尽くすことだけに集中していました。

優勝した3試合以外でも安定したプレーをしていればランクは上がるはずだと。優勝やランキング以外にも、再びプレーヤー・オブ・ザ・イヤーになったことなど、思い出に残るシーズンでしたね。

GD 最初に世界一になったのは17歳の時でした。当時と今回の世界一は違いますか?

コー そうですね。あの時は、フロリダの試合(2015年2015年1月31日コーツゴルフ選手権、2位タイ)の後だったと思います。あの試合は最後の数ホールを上手くプレーできずに負けてしまって、むしろがっくりしていたんです。

まだ子供だったこともあって、世界一のありがたさをまったく理解できてなくて、『1位なんだ。あっ、そう』という感じでした。しばらく世界一の座にいた後、パク・インビが1位になって、その後の台湾の試合で私が勝って、また1位になった。2度目に世界一になった時には、少しその価値がわかるようになっていました。当時は自分に『世界一になったんだから』とプレッシャーをかけていましたね。

自分のランキングや位置をキープしなければ、と思っていました。今は以前に比べてツアー全体のレベルが上がっていますし、練習もたくさんしていますよ。

GD ツアーのレベルはそれほど上がりましたか?

コー もし私が17歳当時と同じことを続けていたら、結果は今とまったく違っていたと思います。より遠くに、真っすぐ飛ばす選手が増えて、コース難度もますます上がって、優勝することが容易ではなくなっています。その証拠に、昔に比べて今は年間に複数回優勝する選手が少なくなっています。

年間に5試合、6試合、7試合と勝つ選手がいない。この違いは大きいですね。LPGAはとてもいい場所で、ネリー(・コルダ)やコ・ジンヨンとプレーする際には彼女たちからいろいろなことを学んでいます。学べる選手からは誰からでも学びますし、それが私のモチベーションにつながっています。

GD 自分にプレッシャーをかけていた頃の世界一と今の世界一はどう違うのでしょうか?

コー 以前は、世界一になるということは、常に優勝争いをして何勝もすることだと考えていましたが、今は年間を通じて安定したプレーを続けることが世界一になる意味だと思っています。今は、いいゴルフができて世界一になれたこの瞬間を楽しみたいと思っています。

GD 世界一になるために何をしましたか?

コー ここ2年くらい、コーチのショーン・フォーリーと一緒に、自分の中にあった疑問や不明点を解消していきました。

今はショーンと離れて、テッド(・オー)と組むようになりました。ショーンもテッドも、安定したプレーができるように課題を単純化してくれて、調子を崩した時には基本に立ち返ることで調子を取り戻すことができるようになりました。

GD この3年間、スウィングを変えましたか?

コー 変わったとは思います。アマチュアの頃はずっと同じスウィングでしたが、その後に何人かのコーチがいたので、世界一になった2015年頃には変わっていました。今のスウィングはアマチュア時代に近いもので、より自分が自然と感じられるスウィングです。

GD 現在のスウィングは、子供の頃のスウィングに戻したということですか?

コー はい。アマチュア時代はフェードでしたが、プロになってドローに変えました。それで優勝もして、世界一にもなった。当時はそれが私の強さでもありました。

でも今はアマチュア時代のように、自分の脳がニュートラルと感じるスウィングを心がけています。10年前、いえ5年前と比べても、今は20ヤードほど飛んでいますし、テッドと行ったスウィング改造は自然にできました。

2015年、16年頃は、飛距離を出そうとインサイドアッパーに振ってドローを打っていましたが、今はスクエアに振っています。

GD メンタルトレーニングはどんなことを行いましたか?

コー 昨年の最終戦の初日の後、フィアンセがオーディオブック(聴く書籍)をくれたんです。

その本は、現在を理解して感謝することを諭す内容でした。ときどきネガティブな考えが頭に浮かびますが、それにとらわれてはいけない、と。『そんなこともあるよね』と受け流して、今やらなければならないことをやって、次にどうなるかトライしなさい、という内容でした。

GD でも、実際にトーナメントで実行するのは難しいのではありませんか?

コー もちろん難しいです。緊張するなと言うのは簡単ですが、実際に緊張しないのは本当に難しい。試合の緊張する場面で打てないショットって、練習で打っていないから打てないんです。

いつもより飛ばそうとしたり、練習でやったことのないトリックショットを打とうとしたり。今でも試合中に緊張はしますが、“今”に集中して、打たなければいけないショットを打つ。目の前のショットに集中して、その他のことは意識の後ろ側に置いておくんです。(後編へ続く)

取材・撮影/田辺安啓

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号「リディア・コー独占インタビュー」より

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