実は昨年12月のザ・マッチ(チャリティイベント)や、PNC選手権(PGAツアーチャンピオンズ最終戦の親子チーム戦)といった非公式戦では『ツアーB X』をすでに投入していたが、2023年PGAツアーも新しいボールで挑むことになる。
『ツアーB XS』と『ツアーB X』の違いだが、簡単に言ってしまうと『XS』がスピン性能重視に対し、『X』は飛距離追求タイプだ。かつて未曾有の飛距離を誇り、ツアー82勝を積み上げるタイガーも、もう47歳。さすがに体力の衰えは否めないのか。
米ゴルフダイジェスト誌のSNSで、ボールチェンジの真相について詳しく答えている。『X』に切り替えるに至った最大の理由は、やはりさらなる飛びを求めたことだった。
「一番の大きな違いはボールスピードですね。ボールスピードが上がり、飛距離が伸びました。『XS』のほうが(グリーン周りで)スピンは効きますが、『X』はアプローチで高い(短い)番手で打てます。
コース状況やシチュエーションによっても変わってきますが、私のゲームと道具が進化していくにあたり、重要なのは『常に自分の使用している道具がフィットしているかどうか』です。ブリヂストンの道具では、状況によって違うレバーを引く(違うボールを使用する)ことができます。
グリーン周りやコントロール重視であれば『XS』、飛距離を求めるのであれば『X』があります」(タイガー)
タイガーといえどもロングドライブは大きな魅力だった。とはいえ、『XS』に不満があったわけではないという。
「飛距離はとても重要な要素です。PNC(選手権)のデータを見てもらえばわかると思いますが、飛距離面ではトップレベルにいたはずです。『X』には低スピン効果がありますが、それはすべてのショットでより真っすぐ飛ぶという効果でもあります。
つまり、飛距離が伸び、よりフェアウェイから打てるのではないかと思っています。
『XS』はブリヂストンと一緒に開発したボールであり、一番よいボールだと考えていますが、ときに飛距離が必要な状況においては、ブリヂストンには今回の『X』のようなオプションがあるのはとても素晴らしいことです」(タイガー)
タイガーといえば、「スピン量はいくらでも増やしてくれ。減らすことは自身でできる」と言い続け、グリーン周りやパッティングでの「クラブからボールが離れる際に初速がありすぎること」に懸念を示していたはず。その考えに最近、変化が生じたのだろうか。
「私はバラタボールで育ったのは皆さんご存じの通りです。私は今まで常に高スピンボールを求めていました。ここ数年で感じたのは、状況が変わればボールやパフォーマンスの要求も変わるということです。
ブリヂストンが『X』『XS』で可能にしたのは、ツアーコンディションで戦えるレベルの2つのスピンボールを開発したことです。ですので、その週のコンディションによってスピンなのか飛距離なのかを選べるということです」(タイガー)
『X』への完全シフトではなく、『XS』との併用策をとるというタイガー。具体的にはどう使い分けるのか。
「たぶん状況次第となってくるのではないかと考えています。リビエラ(ジェネシス招待の舞台、リビエラCC)は『X』をテストするのにとてもよい試合です。このコースで何度もスピンタイプのボールでプレーしてきたので、飛距離タイプのボールをテストするのは、違う景色が見られて楽しいと思います。
飛距離を要求されるコースでは『X』を使用し、ボールコントロールやスピンを高次元で要求されるコースでは『XS』以上のボールは存在しません」(タイガー)
タイガーが『XS』から『X』にチェンジした背景を、プロゴルファー・中村修は次のように考察する。
「7色の弾道を操るようにプレーしたタイガーには、ボールの持つスピン量は絶対的に必要不可欠な要素。しかし、右足のケガの影響で地面を踏み込むことが困難な状況では、足への負担の少ないスウィングをせざるを得ない。『XS』に比べてスピン量の少ない『X』を選ぶことは、弾道もマネジメントもシンプルになるし、飛距離を補う意味でも当然の選択ではないでしょうか。
『X』はスピン量が少ないといっても、ショートゲームではほとんど遜色ないスピン量を確保しているし、大きな違いがあるとすれば打感と弾道の高さ。『空中に窓をイメージしたウィンドウの中を通す』というタイガーのイメージですが、そのウィンドウの高さを調整する必要はあるでしょう。打感も含めてしっかりと準備してきているはずです」
さらに、次のボールについてもタイガーが言及した。
「現在、ブリヂストンと次の『ツアーB』シリーズの話をしており、両方のボールを試合で使用した経験を、次の商品に活かせるのではないかと考えており、非常に楽しみです」
本人だけでなく、世界中のアマチュアゴルファーのプレーを向上させるボールを期待したい。