●マレット型は速いグリーンで威力を発揮する
現在、世界のコースのグリーンは進化して、状態は昔よりずっと速くなっています。芝そのものも品種改良され、サンドグリーンで水はけもよくなり、芝刈り機も改良されて、いわば”ツルツル”状態のグリーンが出現しています。
僕が所属する鳴尾GCの、ブレーキがかかるどころか、押し戻されるような昔の高麗グリーンも姿を消しました。この速いグリーンで威力を発揮するのが、いわゆるマレット型だと思います。速い、状態のいいグリーンではいかにラインに乗せるか、これが優先されるようになります。つまり、距離感よりもライン重視。いかに真っすぐ転がすか、です。
フェースが開いたり閉じたりしにくいマレットは"ライン重視のパター"なんです。ジュニアでも逆ハンドに握っている子も見ますが、これはライン重視であるがゆえ。子どもでもこの感覚は悟るのですね。僕自身は「2ボール」を長く使っていますが、これもマレット型といえると思います。(水巻善典、プロゴルファー)
●ブレード型の”キャメロン”に買い替え
以前は、マレット型を使用していましたが、いざという時に後尾が尻もちをつく形でダフることが多々あったので、ブレード型のスコッティキャメロンに買い替えました。そうしたら、ダフることがなくなり、ロングパットも結構な確率で入るようになりました。(70代男性、愛知県)
●マレットは安心感がある
ゴルフ歴30年。ブレードもマレットも使ったことがありますし、持っていますが、ここ10年はほぼマレットです。ブレードは、その日の調子・感覚に左右される気がして……。ブレードだと、自分の感覚が悪いときに”真っすぐ”がわからなくなるんです。マレットはオートマチックに振れるので”大事故”がない。安心感があるんです。(50代男性、東京都)
●構えたときのイメージが大事
どうしても手を使いたくて、ブレード型一辺倒。でもスコアが停滞していて特にパットが安定しないのが悩みなので、思い切ってチェンジしてみる手もあると考えています。でも、やっぱり構えたときのイメージが大事。慣れたものを手放す勇気がなかなかなく、ショップでマレット型を試打するものの踏ん切りがつかずにいます。(40代男性、千葉県)
●マレット型かブレード型かにはこだわらないが、眉目秀麗な形が好き
きれいだなと思うのはL字のIMG。かつてはジャンボ尾崎、最近ではフィル・ミケルソンが使っていましたね。シャープで、達人の侍が持つ名刀に見えます。まあ、美的に許せるのは初期のピンかな。機能美があったように思います。(70代男性、東京都)
●四角いマレット型のほうが……
ピン型もマレット型もこれまでさまざまなパターを使ってきましたが、僕の感覚では、四角い「スパイダー」なども含めたマレット型のほうが、ボールに当たり負けしないと思います。パットではテークバックは普通に上げられたとしても、問題は戻す時。
つまり、インパクトからフォローまでスムーズに振れるかどうかなんです。マレットはパターのヘッドに重さがあるせいか、戻しやすいんですね。だからボールに推進力があるというか、ボールが走る気がします。これはグリップに重さを配分している、いわゆるカウンターバランスのせいかもしれません。手ブレが起きにくく、その分、ストロークが波打たずスムーズなんです。
仲間に寺西明というパット名人がいるのですが、グリップに鉛を相当貼ってから、手ブレがなくなったといってました。ツアーでも、一時、石川遼がL字を使って話題になったくらいで、近年は、マレットが主流なのもこの理由によるものではないでしょうか。(髙橋勝成、プロゴルファー)
●「2ボール」を引っ張り出して使ってる
何だかんだいってもマレットが方向性を合わせやすいと思いますね。構えたらボールの後ろが長いんだから、目標に向けられる。セットアップしたとき、アマチュアの多くがだいたい右を向くんですよ。
ブレードやL字型はヘッドが薄いから右に向いてもそれがよくわからない、判じがたいんです。でも、後ろが長いマレットなら「右へ向いてるな」とチェックできます。僕はまた「2ボール」を引っ張り出して使っています。ボールが3個並べば、方向がとりやすいのは自明の理ですよ。(60代男性、神奈川県)
●ブレード派で、ピンの「アンサー」を使っています
蟬川泰果プロが使っているものですね。私は持ちやすい三角のグリップに替えたこともあってかヘッドが軽く感じ、操作性抜群です。シンプルな見た目もいいんです。シンプルな黒いヘッドにセンターの白いラインで構えたときに集中でき、イメージが出る。
大きなヘッドのパターで、特にカラフルなものだと、構えたときになぜかダフる感じがしてしまい、いいイメージが湧いてこないんです。(20代女性、東京都)
●ライン上へ押し出せばいいマレット型パターが増えた
現在、ツアーで若い世代は基本的にはマレットを使っているようです。キャッシュインだ、L字だ、IMGが名器だというのは、藤田寛之、谷原秀人の世代くらいまでではないでしょうか。
もともとパターはアイアンの延長線上にありました。2番アイアンと併用していたこともあるくらいです。それはロフトが必要だったから。その昔「スタイミールール※」というのがあって、パットでライン上にあるボールを飛び越えていかなければならず、そのためにはロフトが少なからず必要だったからです。それにグリーンの芝も今のように短くはなく、芝の抵抗もあるので、ロフトがなければボールの推進力が得られなかった。
ところが最近では芝は均等に刈られ、各段に速くなり、ロフトがなくても推進力は出せます。そうなると、アドレスでどっしり構えて、ライン上へ押し出せばいいマレット型パターが多く使われるようになったのは、当然の摂理といえるでしょう。ゴルフ自体がシンプルになったと言えるので、今の世代がマレット中心になったのも必然でしょうね。(タケ小山、テレビ解説者・プロゴルファー)
※スタイミールール:マッチプレーにおいてグリーン上でカップと自分のボールの間に対戦相手のボールがあっても、そのままの状態でパットしなければならなかった。飛び越していくか、迂回していくか、戦略として駆け引きも行われた。1952年に廃止
週刊ゴルフダイジェスト2023年2月28日号「山を動かす~あなたのパターはブレード? マレット?」より