「シーズン後半は思った成績が残せず、全然ダメでした。その理由は2つあって、1つは北海道(夏の3試合)の洋芝でアイアンの感覚が狂い、それが最後まで修正できなかったこと。もう1つはシーズン後半まで体力が持たなかったことです」(青木瀬令奈)
さかのぼること3年前、コロナ禍の影響で13試合の開催となった20年を6試合の予選落ちとベスト10入り1回という成績で終えた青木は、心機一転21年を戦った。すると6月の「サントリーレディス」で見事2勝目を挙げ、さらには賞金ランク21位とキャリアハイの成績でシーズンを終了。
そして22年は徐々に調子を上げ、中盤戦では予選落ちわずか1回、ベスト10入りは優勝含む3回と大健闘。ここからエンジン全開で行くかと思いきや、失速することになる。
「最終戦の2日後からトレーニングを始めました。狙いは飛距離アップと安定性の向上、1年間戦える体力作りです」
技術が足りないという言葉が青木の口から出たことは驚きだが、飛距離アップは以前からたびたび青木が口にするところ。やはり飛距離?
「確かにそれはありますが、決して飛距離だけが目的ではありません。飛距離を追い求めるとゴルフが崩れる可能性もあるので、あくまでも"副産物"として考えています」
「もう1勝」に向けた青木の13年目は始まったばかりだ。
トレーニングを始めるにあたって、まず青木が取り組んだことは、自分のスウィングを"洗い直す"ことだった。
「足裏にかかる体重を測定する機器を使い、"縦・横・回転"(※)のうち、自分がどのタイプかを調べました。私は"横"だと思っていたのですが、実は"縦"の動きが多かったんです」
縦の動きとは足裏で踏んで蹴ることで地面からの反力を得る動き。これまで青木は飛ばしたいとき、左右へ体を揺さぶることで速度を上げていたが、飛ばそうとするほど持ち味の"安定性"を自ら捨てていたことに気付いたという。
「横方向の移動が多いとダウンスウィングで上体が詰まってクラブの行き場がなくなり、上体を起こすように『合わせる』動きが出ます。踏むことができれば、その反動で左サイドに手元が通るスペースが生まれ、上体を浮かさなくともアジャストできるんです」
スピードをロスすることなく再現性も高められることがわかった青木は、こうして踏んで蹴る力を高めるトレーニングをするようになった。
「最近気付いたのは、体を強くすることでスウィングにも良い影響があるということ。脚を鍛えることで踏む力が増すのはもちろん、軸もブレにくくなってきたんです」
大きく改造したというより、"出力"が上がったことで自然と向上した青木のスウィング。
開幕の準備は万端だ。
※"縦・横・回転"のタイプの違いとは?
縦タイプ:踏んで蹴って出力
いわゆる“床反力”で飛ばすタイプ。積極的に左足を使っていくスウィングと相性が良く、青木はこれに該当。左足1本立ちで振りやすい人に向くが、あくまでも“ 縦の力が優位”というだけで、回転や横の力も必要だ
横タイプ:体重移動で加速
テークバックで右、切り返しで左へ踏み出すことで加速するタイプ。テークバックで左ひざを右ひざに寄せるように上げていき、切り返しで左へ一気に踏み込むことでスピードを上げる。右足1本立ちが振りやすい人向け
回転タイプ:体の回転で振る
テークバックで右かかと方面に荷重していき、切り返しで左つま先からかかと方面にウェイトシフトして飛ばすタイプ。左右の片足立ちより両足をくっつけて振るのが一番振りやすい人に向いた出力パターンといわれる
PHOTO/Takanori Miki THANKS/サザンリンクスGC
週刊ゴルフダイジェスト2月21日号「青木瀬令奈29歳 ツアー1曲げない私が飛ばしに目覚めた」より