GD ハワイから日本に戻られたばかりだそうですね(インタビューは1月上旬)。いよいよ23年シーズン、本格始動ですね。
大堀 そうですね。去年の3月に結婚して神戸に拠点を移しているので、神戸で始動です。
GD 去年の3月に結婚して、その年にABEMAツアーの賞金王とは……。何か心境の変化があったんでしょうか? 結婚したから妻のために頑張らないと、とか。
大堀 それがとくにないんです。気負いもなくて。奥さんもめっちゃ仕事頑張ってる人なんですよ。エステの運営などをする経営者です。
GD あ、それで大堀プロは肌ツヤがいつもいいんですか(笑)。
大堀 ツヤがいいってよく言われるんですけど、施術とかは受けてないですよ。ただ、日焼け止めは必ず塗るようアドバイスされてて、塗ってます(笑)。美容のことだけじゃない私生活のサポートはすごくあって、それは去年変わったところでした。
GD 22年シーズン、技術面で変わった点、良かった点は?
大堀 もともとショットは良かったんです。それが9月のレギュラーツアー「シンハン ドンへオープン」のとき、岩田寛さんにパターを教えてもらって。そこで寛さんがいい方向に導いてくれた。入る、入らんは別にして自信を持って打てるようになったのが大きかったですね。その後すぐABEMAツアーの「PGMチャレンジ」で優勝できました。
GD なぜ岩田プロに指導を請うたのですか?
大堀 親しくさせていただいている小平(智)さんの兄貴分が寛さんで親近感がありました。それで、8月の「セガサミーカップ」で予選落ちしてホテルでテレビを見ていたら、寛さんが優勝したんですけど、パターがすごく入っていて。「どんな感じなんですか?」って聞きに行ったら、すごく教えてくれて……。
GD 聞きに行くの、勇気が要りませんでしたか?
大堀 ちょっと話したことはあったので「練習ラウンドしてください」とお願いしました。そしたらその練ランのとき、寛さんのほうから「練習グリーンでパターやろうか」って言ってくれたんです。そしたら、めっちゃ雨が降り出しちゃって。そんななか2時間も練習に付き合ってくれたんです。
GD 雨のなか2時間も!
大堀 それでパットのスタンスをガラッと変えたんです。パターを吊るようにして、わきをしめるようにしました。寛さんいわく「自然体に構えろ」って。最初構えたときは自然体なんですが、それが打つまでにモジモジして自然体から離れちゃうんです。それをモジモジ前に戻すイメージでした。とはいえ、右ひじの位置も変えたし、違和感ありまくり(笑)。
実はシンハンに出ていたときも違和感はあったけど「変えるのが怖い」とか、そういう思いはなかった。僕はABEMAが主戦場で残り5試合。「優勝するしかない」という立場でした。そんななか運よくレギュラーツアーのシンハンに推薦で出させてもらった。「変えるのが怖い」じゃなくて「何か変えるしかない」と思っていました。幸い、シーズン当初からショットは安定していたので、パットを変えられる自信につながったのかもしれません。
最初は違和感ありまくりだったパットも徐々にいいフィーリングになっていきました。ただ、その感覚が「つかめた」と思ったら遠のいての繰り返し。それでも続けていたら、ABEMAの最終戦「ディライトワークスJGTOファイナル」ではフィーリングがすごく良くて。優勝できました。1勝目のPGMチャレンジでは違和感がありながらの優勝だったので、全然違いました。
GD 小誌(週刊ゴルフダイジェスト)で連載している佐藤信人プロが大堀プロから「もうゴルフをしないんですか」と聞かれて答えに窮したと話していました。大堀プロがイップスから不調に陥っているのではと思い、安易に答えられないと思ったそうです。
大堀 そうなんですか。確かに悩んでいた時期ではありましたけど、そんな深刻なつもりはなかったです(笑)。ただただ、佐藤さんのファンなんで。まずプロ目線の解説が大好きだし、小学生のころ佐藤さんのプレーをめっちゃ見ていたんですよ。それで、またプレーが見たいなーと思って。佐藤さんを悩ませちゃいましたかね、すみません(笑)。
GD イップスではなく、ケガでの不調があったんでしたね。
大堀 レギュラーツアーのシードを持っていた18年から右足首が悪くて。そこをかばうから全身のバランスが壊れるんですよね。練習もできないからストレスもたまってメンタルも崩れ、悪循環でした。結果、シードを失い、20年の冬に思い切って手術しました。今は大丈夫です。ゴルフは始めたころから今までずっと好きなんですけど、19年だけはダメでしたね。楽しいとは思えなかったです。
GD 転機になった出来事は?
大堀 アメリカに行ったことですね。21年の3月のホンダクラシックで小平さんのキャディをさせてもらいました。コースでロープの中にいて自分がプレーしないというのが新鮮で、ほかの選手のプレーもよく見られました。
選手のときはそこまで余裕がないんですけど、第三者みたいな新しい視点が得られたんです。第三者だからこそ見えることってあって「あのビジェイ・シンが逆ハンドでアプローチしている」とか。自分が選手だったら気づかなかったと思います。だから、苦しいとき、視点を変えてみるのもアリだなと。そんな経験をさせてくれた小平さんにも感謝です。
GD ケガの苦しみを乗り越えての賞金王はまた格別な思いがあったのでは?
大堀 いえいえ、下部ツアーですしまだまだ。23年こそ勝負の年だと思っています。今、31歳ですけど、まだまだやれるというのは小平さんや寛さんといういい見本がいます。寛さんは42歳で賞金ランク6位ですよ。すごくないですか。
GD いい先輩に恵まれていますね。
大堀 小平さんも寛さんもめっちゃゴルフに熱い二人なんで、学ぶことは多いです。ゴルフするときは熱く集中、プライベートはガラッと切り替える。そんな姿勢もいいなって。
GD 先輩も熱いですが、イキのいい若手もどんどん出てきていますね。男子もですが、女子も。関西勢にも勢いがある。
大堀 ああ(川﨑)春花ちゃんは大阪学院高の後輩です。あとは、山下美夢有ちゃん、西村優菜ちゃんとかも関西ですね。あと神戸出身の「フルエッティ」(古江彩佳)は、今日も寒いけど、絶対どこかで練習してますね。彼女はとにかく練習する。男子では蟬川泰果が関西ですね。
あとABEMAには大阪学院高の後輩がけっこういるんで、その子らのためにも僕が頑張らんと。小平さんや寛さんが見せてくれたようなことを今度は僕が見せていく番なんですよね。
GD 23年の目標をお願いします。
大堀 シードがどうのこうのじゃなくて、2勝します。調整も順調ですし、春からエンジン全開でいきます。すでにショットは手応えがあるので、それを1年間安定させる。それは自分の武器なので。逆に課題はショートゲーム。ここ3年レギュラーツアーを主戦場にしていなかったので、そこは落ちていると思う。試合を重ねながら自信をつけていきたいです。
GD 私生活での目標なんてありますか? 家族関係などは……。
大堀 あはは、それは特にないです。僕は4人きょうだいの末っ子なんですけど、マネジメントは姉がやってくれています。ケンカ? しないですよ。子どものころからケンカした記憶があんまりないです。そういえば反抗期もなかった気が……。家庭は至って普通の母子家庭です。きょうだいで助け合ってきた感じで、仲は今も良くて絆も強い気がします。
GD 素敵な奥さんも加わって、いいですね。家族へのメッセージはありますか。
大堀 ……どうしよっかな、特にないです(笑)。
GD でも、インタビューを通じて先輩や家族への感謝の気持ちがひしひしと伝わってきましたが。
大堀 あっ、それ。そう書いてもらっていいですか(笑)。
GD 承りましたー(笑)。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日号「次なるステージへ 大堀裕次郎」より