GD 22年はステップ・アップ・ツアーで5勝など記録尽くし。ズバリ、何が良かったんでしょう?
櫻井 パッティングです。6月頃から調子が上向いてきて、そこから結果が出るようになりました。
GD 何か変えたんですか?
櫻井 練習量を圧倒的に増やしました。5月に初めてのレギュラーツアー「ほけんの窓口レディース」に出たんですけど予選落ち。そのとき感じたのが練習量の差でした。それまでステップで戦っていて、試合後は割と早めに練習を切り上げていたんですが、レギュラーの選手は日が暮れるまでやっている。それでまず「あ、練習量が足りないな」と。
あとは意識も変えました。重視したのは球の転がりです。ボールに線を引いてそれが一直線になるように、です。2ヤードくらいの距離を、順回転を心がけてひたすら、ひたすら打ちました。堀川未来夢さんのYouTubeで見たパットの練習器具「パッティングレール」も私にはピッタリはまりました。それまでは、その日のラウンドの悪かったところを少し調整する感じで、その場しのぎのようなところがあったんです。だからもっと長期的な課題に向けた練習、を意識しました。
GD 櫻井プロはショット、特にドライバーでの飛ばしのイメージがありました。
櫻井 はい、それが実はステップ初優勝の少し前、フェアウェイが狭めのコースでショットが曲がることがたびたびあり、ショットへの恐怖が芽生えてしまって……。
GD 「振れない」時期があったとは。
櫻井 完全にスウィングが縮こまっていました。そこで「とにかく思い切り振る」を意識して臨んだのがステップ初優勝の「ECCレディス」(6月1日~)。その意識は今も変わらず持ち続けています。
GD 意識以外で「振り切る」ためにできることは?
櫻井 私はショットの前の片足素振りがルーティンです。左足1本に体重を乗せたフォローの位置からスタートして、一気に全体重を右足に乗せ、フィニッシュまで振りちぎります。トップからフィニッシュまで風を切り裂く音が鳴るくらい、思い切り振り抜くんです。
GD 独特のルーティンですよね。
櫻井 同期のプロに真似されたりして、いじられてます(笑)。
GD 同期といえば、メジャーチャンプの川﨑春花プロやレギュラー1勝の尾関彩美悠プロもいます。
櫻井 みんなすごいんです。お互いが刺激になっているのは確かです。川﨑春花ちゃんも言っていたそうですが、プロテストがすごーく大変で。高校生で合格した6人は同志の感覚というか絆というか……あると思います。
GD プロテストはやっぱりつらかった?
櫻井 メンタルがやられます。私は「自分が通らなきゃ誰が通るんだ」ぐらいに思っていたんですけど、それでもいろんなことに敏感になってしまって。自分はもちろんですが、コーチや親など周りも大変だと思います。でも、私自身は準備万全で臨めました。
GD 具体的には?
櫻井 高校生のころ、ゴルフで気づいたことをメモしたゴルフノートを作っていて、それがオリジナルのゴルフの教科書になってました。こういうときはこうして打つとか、全部書いてあるんですよ。わからなくなったらそれを見返す。プロテストの前は、その内容を抜粋してジャンルごとにまとめて、画用紙に書いて復習しました。技術的な練習はもちろんしっかりしましたし、自分のしやすいミスやその対策なども整理済みで、そういう意味で準備万全、でした。
GD そのノート、今でも読み返すことはありますか?
櫻井 とってありますけど、読み返すことはないですね。内容は頭に入れちゃったんで。
GD さすが! そもそもゴルフは何歳から?
櫻井 6歳からです。そのほかピアノや空手もやっていたんですがダメで(笑)。私、運動神経が鈍いんです。この間(同期の)佐藤心結ちゃんと川﨑春花ちゃんとゴルフボール投げをしたんですけど、心結ちゃんは70ヤードぐらい飛ばして、春花ちゃんもそれなりなんですけど、私が投げたらすぐそこの地面に突き刺さる勢いで。ドンくさかったです。
GD 23年シーズンは川﨑プロ、佐藤プロとも同じレギュラーツアーの舞台に立つことになります。
櫻井 レギュラーで戦うにあたっての課題はアプローチだと思っています。フワッと上げるロブショットが苦手で、今、必死に練習しています。
GD 開幕までのスケジュールは?
櫻井 昨日(2月上旬)までインドネシアに行っていました。ティーチングの方やほかのトップアマチュアの方などとラウンドしながらひたすら練習。トップアマチュアの方からは低い球の打ち方を教えてもらいました。別の方にも同じく低い球の打ち方を教わりましたが、打ち方は違う。どちらのやり方でも上手く打てたので、状況によって使い分けられるなと。
いろんな人の話を聞くのは苦にならないです。ショットとスウィングについては(園田謙介)コーチにしか指導を受けたくないと思っているんですけど、バリエーションという意味ではいろんな人に聞くのもアリかなと。お仕事でご一緒したプロにもどんどん聞いちゃいます。それは、コーチに全幅の信頼を置いているという安心感があるからかもしれないですね。
GD 櫻井プロってメンタルが強めなイメージがあります。
櫻井 メンタルが強いというか感情の起伏があまりないんです。平常心を保てる……というか。川﨑春花ちゃんとかとはまた違ったタイプ。彼女はガッツがあって燃えているでしょ。私はちょっと違うかも。
普段もあんまり怒らなくて、喜ぶときも「ワーッ」とかならないんです。親とのケンカもあんまりない。反抗期はもうたぶん終わって、最近、親に優しさと思いやりが出てきました(笑)。
GD 昨年の賞金でご両親にプレゼントとか?
櫻井 してないです(笑)。でも、家族みんなでおいしいものを食べに行ったりはしました。
GD 自分へのプレゼントは?
櫻井 それが私、物欲がなくてブランド品とかも興味がないんです。
GD でも、今後はスポンサー関係など、お呼ばれも増えて服や靴もたくさん必要になるのでは?
櫻井 必要なものを必要なだけ買います。
GD ゴルフをしていないときの櫻井プロってどんな感じですか? 趣味はありますか?
櫻井 ポケモンが好きです(笑)。やっと「スイッチ」(人気のゲーム機)が買えたので、ポケモンのゲームをしたり、アニメのポケモンを見たり。全国のポケモンセンターにもけっこう行きました。子どものころのポケモン熱が今再来、みたいな(笑)。兄の影響ですね。
GD 確かお兄さんが二人いらっしゃるんですね?
櫻井 4つ上と1つ上の兄です。仲はいいですよ。1つ上の兄は大学のゴルフ部なんですけど、私の活躍を楽しみにしてくれています。そもそも、私のこと大好きみたいなんです(笑)。兄だけじゃなくて兄の友達も試合の応援に来てくれたりしてうれしいです。
GD 応援が力になるタイプ?
櫻井 そうですね。あとは環境。私がまだステップ1勝のとき、川﨑春花ちゃんが(日本女子プロ)選手権で勝って、その後、尾関彩美悠ちゃんも勝って。この間まで同じ舞台で戦っていた同期だから「えっ!」となって。「私もやれるかも」というチカラが湧いてきたんです。
でも、レギュラーの試合には出られないから、私はステップという舞台で全力を尽くそうと。9月~10月は賞金の高い試合が集中するので「そこで勝つ!」と思いを新たにしたら、山陽新聞レディースで優勝。勢いがついたのか、その後、3勝できました。偶然というわけではなくてその時期に照準を合わせていました。
GD 23 年はどんなシーズンにしたいですか?
櫻井 まずレギュラーツアー初優勝。あとは最終戦のリコーカップとUSLPGA競技のTOTOには出たいです。TOTOは特に。
GD アメリカ志向ということ?
櫻井 将来は行きたいです。行きます。そのためにもTOTOの舞台にまずは立ちたいんです。プロになったばかりのころはアメリカとか世界とかに特に興味はなかったんですが、22年8月にインドネシアで開催されたシモーネアジアパシフィックカップという大会に参加しました。
リディア・コーさんとかキム・ヒョージュさんとか渋野日向子さんなどいろんなトッププロの方が参加していたんですが、すごくキラキラしているというかオーラがある。それでいてフレンドリーで優しい。ギャラリーの雰囲気もすごく良くて。わー、こんな世界もあるんだって。
もちろん選手の技術もすごかった。まず、球がヤバい(笑)。技術的にハイレベルなことや雰囲気も含めて初体験だったので「私も!」と思いました。そのためには、とにかく実力。まずは1勝、それがメジャーならなおいいですね。開幕までに準備万全にします!
GD 今季「櫻井心那のここを見て」という部分は?
櫻井 わー、難しいな。でも、片足素振りかな。ショットの前に必ずやっているんで、「片足で全力の素振りをしているプロがいるな」って思ったら、それが櫻井心那なんで、よろしくお願いします(笑)!
撮影/有原裕晶
※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日「次のステージへ 櫻井心那」