昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は「コアを動かす基本の練習」というテーマだ。
画像: 馬場咲希が中学時代からずっと続けているドリルがある、と坂詰和久コーチ(写真/田中宏幸)

馬場咲希が中学時代からずっと続けているドリルがある、と坂詰和久コーチ(写真/田中宏幸)

O編 前回の続きなんだけど、選手は、ショットの調子が悪くなったとき、自分である程度直せるようになっておくことが大切だってことだったよね。

坂詰 コーチはいつも一緒にいられませんからね。選手は、自分が悪くなるパターンと、その直し方を知っておく必要があるわけです。自分で悪くなっていることに気づいて自分である程度修正できれば、スランプにもなりにくいし、不調ながらもゲームを作ることができますからね。ボクが教えるときにはそのあたりを意識しています。

O編 ちなみに、馬場さんの悪くなるパターンって、どんな感じなの?

坂詰 馬場ちゃんの場合は、悪くなると、ダウンで体が浮いて、フェースが開いて当たるようになりますね。

O編 球が右に出る感じ?

坂詰 ええ。右プッシュとかスライスが出始めたら危険信号です。

O編 その球が出始めたら、体が浮き始めたってことか。

坂詰 そういうことです。ただ、馬場ちゃんのいいところは、そういうときに、手先で球をつかまえにいかないんです。右のミスが一定して出るので直しやすいんですよ。

O編 普通は、つかまらないと無意識に手を使ってつかまえちゃうよね。でも、それをやるとミスの原因(体が浮いていること)に気づきにくいし、右のミスも左のミスも出ちゃう。

坂詰 そうなると、大きなケガになりやすいし、直すのに時間がかかっちゃうんですが、馬場ちゃんにはそれがないんです。

O編 で、体が浮き始めたときには、どうやって直してるの?

坂詰 低いライナーを打ちなさいって言ってあります。そうしたら、自然に体の浮きが抑えられるので。

O編 それは試合中でも? ほら、低いライナーでは対応しにくい状況もたくさんあるでしょ?

坂詰 あぁ、試合中だったら、基本の練習を思い出して、体の浮き上がりを抑えなさいって。

O編 基本の練習って?

坂詰 うちの選手には、みんなやってもらってる練習です。トップの状態から、手首の角度を一切変えず、体のローテーションだけでゆっくりダウンスウィングして、インパクトまでの軌道を2~3回なぞり、それから球を打つんです。

体が浮き上がってるときって、ダウンで手首の角度がほどけてるんです。だから、手首の角度を変えずに打つ動きができれば、自然に体は浮かなくなるというわけです。

O編 なるほど。馬場さん、その練習はいつ頃からやってるの?

坂詰 中学生のときからずーっとです。この前も、馬場ちゃん、その練習をしながら「私、こればっかりやってますよね」って言ってました。

コアを意識してコアで動かす

O編 その練習は、どんなことを意識しながらやるの? 

坂詰 いちばん大切なのは、手首の角度を変えずに、体の回旋だけでダウンスウィングすることですが、そのとき、手先でクラブを動かすのではなく、体のコア(中心、核)を意識して、コアで動かすようにします。

そのうえで、バックスウィングで右の臀筋(お尻)にしっかり乗るとか、前傾を保って左に踏み込むとか、重心のシフトを感じ取るとか、そのときにやりたい動きを確認しながらやるんです。そうすると、嫌でもゆっくりにしか動けなくなります。

O編 なるほど。で、その練習は一般ゴルファーにもおすすめ?

坂詰 そりゃあ、絶対いいですよ。これで打てるようになったら、手打ちなんて完全に直ります。ただ、苦しいですよ?

O編 苦しいって?

坂詰 手先を使わず、コアを使って、重心が浮かないようにゆっくりスウィングすると単純に苦しいんです。さらに、ダウンスウィングで手首をリリースしたら果てしなくダフるし、手首の角度をキープしていても、体が浮いたらトップするので上手く当たらない。意識の高い人じゃないと、くじけちゃうかもしれないですね。

O編 精神的にも苦しいってことだね。

坂詰 でも、世界のトッププロのほとんどは、この動きで球を打っているんです。この練習は、それを体感できるし、この動きができたら、間違いなく飛距離も出ます。ですから、一度はチャレンジしてみてもいいんじゃないでしょうか。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月28日号「ひょっこり わきゅう。第5回」より

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