ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。先日のフェニックスオープンで連覇を果たしたスコッティ・シェフラーのゴルフに注目していると語る。
画像: 「初めてディフェンディングチャンピオンとして臨んだフェニックスオープン。安定してゴルフで優勝はスゴいです」by佐藤信人(Photo/Blue Sky Photos)

「初めてディフェンディングチャンピオンとして臨んだフェニックスオープン。安定してゴルフで優勝はスゴいです」by佐藤信人(Photo/Blue Sky Photos)

WMフェニックスオープンを安定した戦いで制したスコッティ・シェフラー。解説を担当していたボクは、その戦いぶりを見て改めて「スゴイなぁ」と思いました。

本大会は、セントリーに続き今シーズンから採用された〝格上げ”大会。賞金が2.5倍、ノルマもあって世界ランク上位20人のうち18人が出場。大会を通じて80万人ともいわれるギャラリーを集め、さらにフェニックスでのスーパーボウル開催が8年ぶりに重なり街そのものが熱狂に包まれました。

昨年、フェニックスで初優勝を飾ったシェフラーは、アーノルド・パーマー招待、WGCマッチプレー、そしてマスターズと約1カ月の間に実に4勝。その後はけして調子が悪かったわけではありませんが、優勝できずにシーズンを終えました。そして今回、プロゴルフ人生のなかで初めて、ディフェンディングチャンピオンとして大会を迎えました。

大会前、ボクは「ここから先、シェフラーはキツいだろうな」と思っていました。前年覇者は、自身も過剰に意識しがちだし、ときにメディアから意地悪な質問もぶつけられるもの。

また大会前、世界ランク1位はR・マキロイで、2位がシェフラー、そして3位がJ・ラーム。マキロイは今季初の米国本土参戦で声援も多く、またラームは2週間前のアメックスで優勝して絶好調での大会入り。シェフラーにとっては、いわば両横綱に挑むといった形で、ここで予選落ちでもしたら「やっぱり昨年はまぐれだったのか……」といった雑音と負のスパイラルに引き込まれる可能性もありました。

ところがふたを開けてみれば、見事な連覇達成。強風のなか、4日間でボギーがわずかに2つという安定ぶりを見せました。

優勝を決めたのは16番パー3、優勝を争ったN・テイラー、ラームのなかで最初に打ったパーパット。デリケートな上からのラインでしたが、彼らしく「ただスピードを考え、いいパットを打つだけ」と考えたボールは、ど真ん中からカップに吸い込まれました

シェフラーは敬虔(けいけん)なキリスト教徒です。キャディはかつてB・ワトソンを担いだテッド・スコット。彼とは同じバイブルスタディで知り合いました。奥さんも同じ信仰を持っているのでしょう。

昨年のマスターズをトップで迎えた最終日の朝、シェフラーは不安と興奮で感情をコントロールできず、幼児のように泣きじゃくったといいます。そのとき、彼の奥さんがかけた言葉は「あなたはできることを一生懸命やればいい。結果は神様が決めること」。

コーチのスミスは「彼は昔からどんな大舞台でものまれない。物事を大げさにとらえることがない」と言いますボクは昔読んだリチャード・カールソンの『小さなことにくよくよするな』という本を思い出しました。

 聖書を読むことや教会通いも繰り返し地道に続けてきた、そんな信仰心の強さから生まれる〝芯〟のようなもの。今回のフェニックスの勝ち方にも表れていた気がします。マスターズ連覇も夢物語ではありません。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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