国内女子ツアーが開幕! 上田桃子は惜しくも優勝を逃したが、2位と好スタートを切った。それに先立ち宮崎で1カ月間行われた「チーム辻村」合宿。上田桃子、吉田優利を中心としたチームはこの合宿で何を習得したのか? チーム監督の辻村明志コーチによると「基本的なことです」。その中身を潜入ルポしてみた。
画像: 合宿では、後方で十字を作り、レベルスウィングができているかをチェック。肩は水平か、軸は垂直かをチェックする辻村明志コーチ

合宿では、後方で十字を作り、レベルスウィングができているかをチェック。肩は水平か、軸は垂直かをチェックする辻村明志コーチ

宮崎合宿の目的は「体と技術の"バランス"を整える」こと

今年で3年目を迎える「チーム辻村」宮崎合宿。まるまる1カ月行われたが、温暖な宮崎を選んだのは徹底的にラウンドをこなすためかと思いきや、辻村明志は、

「ラウンドは他のプロに比べれば圧倒的に少ないはずです。最後の1週間は回りましたが、練習場で徹底的に基本を練習しました。それを確認するためにたまにハーフを回る、の繰り返しでしたね」 

では、辻村がいう基本とは何か? 

それは「体と技術」のバランスを整えることだという。

「これはゴルフに限ったことではありませんが、アスリートに求められるのは体と技術のバランス、それも高いレベルでのバランスです。体だけが強くてもダメですし、技術だけでもダメなんです。このバランスを整えるのが、この合宿の最大の目的でした」

練習場では1日500球から600球、午後ハーフのときでも300球は打たせていた、と辻村は語る。

だが、打ち込むというイメージではなく、ほとんどがハーフショットやスリークォーターなどのコントロールショットだ。

「選手によってそれぞれ課題はありますが、基本的には『体の正面でインパクトを迎える』『クラブの入口と出口を確認』『ダウンスウィングでの右ひじのポジション』『インパクト時の手の高さ』といったところです。これらを安定させることで再現性を高め、ミート率を上げるわけです」 

辻村はこの基本を「帰るべきホーム」と呼ぶ。

シーズン中、疲労が蓄積したり、不調に陥ったとき、立ち戻ることができる“基本”があることが重要だという。 

こうした日々の練習に加え、午前中にはフィジカルトレーニングも組み入れられていた。また、辻村と上田桃子が「最後の師匠」と呼ぶ、故・荒川博氏の縁で懇意にしている王貞治氏との関係で、ソフトバンクホークスのキャンプを訪れたり、城島健司特別アドバイザーからさまざまなアドバイスももらっている。辻村は、

「体と技術のみならず、メンタルも含めて心技体のバランスを整えた充実した合宿になりました。

「イメージ通りの球を打つには体から手元が離れないことが大事」(上田桃子)

「今年のテーマは、大事な場面で自分のイメージ通りのボールを打つことです」と上田桃子。 

昨季は富士フイルム・スタジオアリスでツアー通算16勝目を挙げた上田。

若手選手が台頭するなか、今年37歳を迎える。その活躍ぶりは特筆すべきことだが、それよりもすごいのが、年間1勝“しか”できなかったことに悔しさを感じていることだ。上田は、

「何度か優勝争いをしましたが、ここぞの場面で致命的なミスが出てしまったのが昨季の反省でもあり、今年の大きな課題です。技術的なこともありますが、経験がミスにつながっているとも感じています。

プロ生活が長い分、当然ミスの経験も"こうならないように打ちたい"という思いが無意識下で強くなってしまうのです。そこで今年は大事な場面で、"こういうふうに振りたい"という考え方に変えました。この合宿では、そうしたイメージのスウィングを体に刻み込みました」

ドローヒッターだけにインパクトで手元が浮きやすく、フォローで右わきが開くのが上田のスウィングの特徴だと辻村。それが若手にも負けない飛距離につながっているのだが、辻村は、

「たとえば左サイドが嫌な場面だと“もしかすると”という思いが頭に浮かび、思い通りのスウィングができないんです。体が止まってヘッドが出てこない、といったミスにつながるわけです。そこで今年は曲がったとしても、自分のイメージ通りに振り切ろう、と考えているんです」 

上田と辻村との合宿での合言葉は「最終日をいい形で終えよう」だ。

試合になると気合いや力が入るのは仕方がないが、試合後、もしくはミスショットの後、“ニュートラルに戻す”意識や練習を合宿に取り入れたという。

具体的には『左右の手がケンカしない』『クラブを体の正面で操る』『インパクトで手元の高さは変えず体の近くを通す』『フィニッシュで体を傾けない』『最後に気持ち良く振り抜く』……などだ。

37歳になる上田桃子の今年の目標はメジャー優勝&複数回優勝だ。

イメージ通りに球を打つための2つのドリル

画像: スウィングプレーンが確認できる器具を使い、ボールを打つ上田桃子。シャフトを寝かさないように(写真右)右ひじのポジションを意識しながら、クラブを下ろす

スウィングプレーンが確認できる器具を使い、ボールを打つ上田桃子。シャフトを寝かさないように(写真右)右ひじのポジションを意識しながら、クラブを下ろす

上田桃子が合宿で行っていたドリルを紹介する。ひとつめはアライメントスティックを飛球ラインに置き、スウィングプレーンが確認できる器具を飛球線後方にセット。これでボールを打つ。

インサイドからクラブが寝て下りてくると、手元が浮いて、フックが強くなりやすいので、それを矯正するドリルだ。ダウンスウィングで、シャフトを寝かさないことで手元の浮きや体の傾きが修正されていくという。

優勝争いをしていても最終日に失速することがあった上田桃子。豊富な経験がマイナスに働いたと自己分析もしているが、大事な場面で出力を上がる(力感が増す)ことでインサイドアウトが強まり、体から手元が浮いてしまっていたのだ。

上田桃子は手元がダウンで右腰、フォローで左腰にくるように意識して振っているという。

出力が上がりやすい上田にはベストなドリルなのだ。

画像: クッションの面を意識することがポイント。手元が浮かないで、手元が体に巻き付いて振り抜けるようになるという

クッションの面を意識することがポイント。手元が浮かないで、手元が体に巻き付いて振り抜けるようになるという

ふたつめのドリルは、上田桃子の定番メニューとなっている、両腕にクッションのような器具を挟んで球を打つ練習。

これもスウィング中、体から手元が離れない、浮かないことを意識するためのドリルだ。

両腕に、この器具を挟んでクラブを振ることで、体と手元の距離を保ち、右わきの開きを防ぎ、さらに体の傾きまで防いでくれるという。
「フォローで右わきが開かないようにして、手元が体に巻き付くようなイメージで振っています」
と上田。

これも、出力が抑えられるドリルだという。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月14日増刊号「上田桃子&吉田優利が開幕に向けて取り組んだこと」より

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