「VENTUS TR BLACK」(ベンタスTRブラック)はPGAのトッププロの意見を元につくられた「VENTUS」シリーズで最もハードな「VENTUS BLACK」をブラッシュアップしたモデルになります。
フレックスは50、60、70g台にSとX、80グラム台はXのみで展開されています。今回は50g台のSとX(5S、5X)と50g台のSとX(6S、6X)を試してみました。
まずは5Sから。ワッグルしたときから「TR」シリーズの設計通り、手元剛性の高さを感じられます。打ってみるとシャフト全体の剛性も高く、フィーリングもしっかりとしたシャフトですね。重量は59.5gと重めで振動数は263cpmです。手元側の剛性が高いことで中間部との剛性差が生じていて、意外にも先端側に多少の動きを感じられるため、振りにくさは感じません。
飛距離が出るシャフトという感じはありませんが、しっかりインパクトしても弾道にブレがないため、気持ちよく叩いていけるので結果として飛距離は出るイメージですね。5Xはさらに手元剛性がアップしますので、トップからしっかりと切り返しができないプレーヤーにはさらに硬くハードに感じるでしょう。重量は60グラムでシャフト振動数は269cpmと、いかにも「ツアー用のシャフト」といった硬さですので、切り返しが強めで軽く硬いシャフトのほうがタイミングが合うという方には、余分な動きがないため気持ちよく振っていけると思います。
6Sは69.5gと重さがあることで硬さの中にもしっとりとしたフィーリングを感じられますね。シャフト振動数は263cpmとツアーシャフトのSフレックスといった数値ですが、まったく歯が立たないような硬さではなく、シャフト重量を生かした切り返しをイメージすればタイミングもとりやすく気持ちよく振っていけます。当然、先端部分の剛性が高いため、ハードヒットしても先端部分に頼りなさはまったくなく、インパクトのエネルギーロスもないので中弾道のロースピンボールが打てます。
プロ用のモデルですから、切り返し時にバット部分にしっかりとテンションをかけることができなければ弾道も低くなり飛距離も出る感じはしませんが、テンションをかけることができれば、手元側と中間部の剛性差で先端部分に適度なしなりを感じられてボールのつかまりも悪くないでしょう。打点ブレが気になるヘッドスピードのあるヒッタータイプの方は良い結果が出るかもしれません。6X
は私のパワーで使いこなせるスペックではないものの、興味本位でどのような感じか打ってみましたが、意外にも結果がよかったスペックです。シャフト重量は70グラムでシャフト振動数は283cpmとSフレックスよりも一気に数値はアップしますが練習場で振っている感じでは数値ほどの差を感じにくく、SもXも同様の硬さくらいに感じました。
私のスウィングスピード(ヘッドスピード42~43m/s)では適正なシャフトのしなりを感じられませんが、本来のターゲットの方が打てば明らかに違いは感じられるでしょう。
意外にも結果が良かった要因としては、シャフトの硬さを生かしてしっかりインパクトすることだけをイメージしたこと。とにかく弾道の再現性が高く、ブレも少なく左右のばらつきがほとんどなく非常に安定していました。
飛距離的には飛んでるイメージはなかったものの抜群の安定感が印象的でした。テストヘッドが「ピンG430 MAX」と重心が深めで、ロフトが10.5度だったのも要因だと思います。
ヘッド設計によってフィーリングにも弾道にも違いが出そうですね。私のように意外な結果が出るかもしれませんので弾道安定性を求めている方は試してみても良いでしょう。
「VENTUS TR BLACK」は装着ヘッドによって印象は大きく変わるシャフトですのでスペック選びは先入観なくヘッドマッチングを考えて打ってみて決めるのが良いでしょう。USPGAツアーのシャフト基準を体感できるギアマニアにはたまらないシャフトです。
「VENTUS TR」シリーズのシャフトを全部試しましたが、シャフトの特性的にやさしい順番をつけるとしたら「BLUE>RED>BLACK」となります。「BLUE」よりも「RED」のほうがハードなのは意外でしたが、USPGAツアーの選手が使っているのも納得です。