吉田は、昨季37試合に出場し、トップ10が19試合。だが、そんな成績以上に2度のプレーオフも含む5回の2位は、その実力からすれば「勝てなかった」という印象が強い。
吉田が掲げた目標は「年間3勝とメジャー優勝」。
この合宿をその準備と位置づけている吉田。そんな彼女が意識しているのが“第二のアドレス”と考えているハーフウェイバックまでの動き(始動)だ。吉田は、
「少しインサイドに引くクセがあるのでそれを真っすぐにし、手元が右腰の高さまで正確に上がることを意識しています。ポジションだけでなく、リズムやタイミングも含め、ここがきちんとハマれば、ショットの成功率は高くなると考えているからです。
私が目指すのは、クセのないスウィング。シンプルになればなるほど、スウィングの再現性は高まります。そのためにもテークバックが重要なんです」
“第二のアドレス”が決まれば、あとは勝手にいいトップが作られ、気持ちのいい切り返しにつながるというのだ。辻村は、
「いい位置にクラブが上がれば、あとは体を回すだけです。優利と目指すのは、スウィング中にこうしようと考える余地のない、究極のシンプルスウィングです」
チーム辻村の練習はバラエティに富んでいる。あらゆるモノを使い、選手の状況に合わせ、辻村自身がドリルを次々と考案している。吉田のインサイドに引くクセを直すのにも2本のクラブをつなげて持たせたり、ホテルのカードキーをヘッド後方に置いたドリルも効果的だという。
再現性を高めるための超ユニークな2つのドリル
2本のクラブをつなぎ合わせて、グリップエンドをターゲットに向ける練習法。ハーフウェイバックでグリップエンド部分がターゲット方向に向くことで真っすぐクラブが上げらていることを確認できる。
体の軸の傾きや前傾姿勢が維持できていないと真っすぐ引くことができないこともわかるという。
「テークバックでいいところにクラブが上がりさえすれば、スウィングが90%以上の確率で成功します」と吉田。このドリルに関して「ボールを打つよりも大事! アマチュアにもおすすめです」という。
カードをボールの斜め後ろに置いて打つ。
「スウィングは円軌道ですが、インパクト付近ではヘッドを低く長く、そして真っすぐ動かせるかがカギ」
と辻村。辻村の足の下でヘッドを通過させるドリルも吉田はよくやるという。
これらのドリルによって始動の意識が変わり、スウィングも変わるのだ.。
「いろいろなドリルを教えてもらえるのがとても新鮮です。このドリルには、どんな目的や意味があるのか、自分自身でしっかり考えることにもつながっています。細胞が成長できるのは22歳から24歳までだそうです。そういう意味でも今は必死です(笑)。私のなかでは“成長”が不可欠なんです。これはスウィングだけでなく、肉体的にも精神的にも、また人間的にもです。今年の合宿はいつもより必死でした」
と吉田。将来的に米女子ツアーを視野に入れている吉田は、午前中に筋トレをみっちり行っていた。
「優利は誰よりも必死でやっていましたね。肉体改造とまではいかなくても、この合宿でひと回り大きくなったんじゃないですか」
と辻村は語った。
開幕戦で2位と優勝争いを繰り広げた上田桃子に続き、今季の吉田の活躍にも注目が集まりそうだ。
TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa
THANKS/光成ゴルフアリーナ
※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月14日増刊号「上田桃子&吉田優利が開幕に向けて取り組んだこと」より